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想像以上にハードモードな幼少期だったようだ。
名前の身の上話しを聞いた時、世界が違う。そう思っちまった。またもそこで顔を出すわずかな罪悪感。
だが仕方ねぇ。
俺は一般的で平和な子供時代を送ってきた。
両親がいて、色々あったが壁を共に乗り越えられる仲間にも出会えた。
俺は、幸せ者なんだろう。
恵まれているんだろう。
ベッドで眠る少年の寝顔をチラリと横目で見る。
もうすぐ夜明けだ。
カーテンの向こうの世界は徐々に明るさを取り戻してきている。
その光が一筋、名前の顔に伸びた。
「…」
あどけない寝顔だった。
年相応の。
以前会った時、太陽の下ではなく、夜が似合うような少年だと思ったことを思い出した。
だがこうして見ていると、それでも…太陽の下に嫌でも引き摺り出してやりてぇと思ってしまう。
「…ん…、」
眩しさからか、名前が身を捩らせた。
そしてうっすらとその長いまつ毛に縁取られた目を開いた。
しかし次の瞬間には両目を見開いて飛び起きた。
「…ってこ、こどこ?!っ!、…いってぇー!!」
「朝からうっせーな。静かにしろぉ」
うるせぇといいつつ、その慌てた様子が昨日の命を削り合うようなファイトを繰り広げていた少年とは思えず、何故か少しホッとした。
「え?何ここ?どこ?俺んちはどこ行った?」
「ったく。てめぇがあの後すぐ寝ちまったから、家が結局わかんなかったんだろぉが」
「えぇ?」
「その辺に捨てて行くわけにも普通の病院も連れて行けねぇから、うちに連れてきた」
「えぇ!」
さっきからポカンとしたり驚いて慌てふためいたり、こんな顔もできるのかと思わず口角が上がった。
何か珍しく庇護欲とでもいうのだろうか、世話を焼いてやりたい気にもなって飯ぐらい食わせてやるかと思った。
「なんか食ってけ」
「い、いや!ちげぇだろ!か、帰る!」
「あぁ?」
名前は痛む腹を庇いながらベッドから抜け出ようとしていた。
「おい。怪我人のくせにじっとしてやがれ」
「何言ってんだよ!こんなこともしあの人、…俺を飼ってる人に知れたらヤベェんだよ!」
名前は俺が脱がせてその辺の椅子の背にかけておいた自分のパーカーを引っ掴むと慌てて玄関を探し出した。
「ったく…監視されてる様子はなかった。ちょっと落ち着け」
「うわっ」
名前の肩をぐっと上から押して、椅子に無理やり座らせる。
昨日の疲れと傷が痛むせいだろう。そのまま大人しくなった。しかしもう目つきは昨日のように鋭くなっていた。
「…情で落とそうって魂胆?」
騙されるのがそんなに怖いか。
信じるのが…怖いよな、そりゃ。
俺は冷蔵庫を開けて朝食になりそうなもんを適当に見繕いながら返事をした。
「けっ、悪りぃが俺はその辺のヒーローと違ってそこまでお人好しじゃねぇんでな。そんな回りくどいことせず実力行使の方が性に合ってんだよ」
本心だ。
だが、今は、この時だけは…コイツがあの地下の薄暗い闘技場に行かなくて済むなら。
それならただ、ここにいてくれたらいいと思った。
「…俺はあの人に聞かれたらお前のことチクるぜ。悪りぃけど」
「そうしろ。嘘でもついてバレたらお前がヤベェんだろ」
「…んだよそれ。お前も大概お人好しじゃねぇか」
「俺はそんなやつぶっ飛ばすだけの実力があるんでな。全く問題ねぇ」
たぶん口の中は切ってて痛えだろと思って、冷たいままじゃがいものスープを出してやった。
「って、んなにこれ?」
「昨日の残りもんだわ」
「ふーん…」
名前は警戒してんのかスプーンでスープの表面をつついたりしている。
「…何やってんだよ」
「これなんての?食ったことねぇからわかんねぇ」
「じゃがいものスープ」
すると名前ががばっと顔を上げて俺を見た。
「じゃがいもがどうやってスープになんだよ!じゃがいもってあれだろ、ハンバーガーと一緒に出てくるやつだろ?」
それだけで何となくコイツの今までの生活とか、食ってるもんが何となくわかってしまいそうだった。
「ありゃじゃがいもって野菜を揚げてあんだよ。こっちは形がなくなるまで煮込んでスープにすんだ」
名前が「…へー」とかわかったのかわからねぇ返事をした後、スプーンの先に少しだけスープを掬って恐る恐る口に運んだ。
「…ん、んー?…んん?!うめぇ!」
名前がまた見たことのない表情を見せた。
あぁ、コイツちゃんと笑えんのか。
何故かホッとしてる俺がいて、むず痒い気持ちになる。
これはきっと懐かなかった猫が懐いてきたような気持ちなんだろう。
今度は、何かもっとあったけぇもん食わしてやりてぇなんて馬鹿なこと考えた。
名前の身の上話しを聞いた時、世界が違う。そう思っちまった。またもそこで顔を出すわずかな罪悪感。
だが仕方ねぇ。
俺は一般的で平和な子供時代を送ってきた。
両親がいて、色々あったが壁を共に乗り越えられる仲間にも出会えた。
俺は、幸せ者なんだろう。
恵まれているんだろう。
ベッドで眠る少年の寝顔をチラリと横目で見る。
もうすぐ夜明けだ。
カーテンの向こうの世界は徐々に明るさを取り戻してきている。
その光が一筋、名前の顔に伸びた。
「…」
あどけない寝顔だった。
年相応の。
以前会った時、太陽の下ではなく、夜が似合うような少年だと思ったことを思い出した。
だがこうして見ていると、それでも…太陽の下に嫌でも引き摺り出してやりてぇと思ってしまう。
「…ん…、」
眩しさからか、名前が身を捩らせた。
そしてうっすらとその長いまつ毛に縁取られた目を開いた。
しかし次の瞬間には両目を見開いて飛び起きた。
「…ってこ、こどこ?!っ!、…いってぇー!!」
「朝からうっせーな。静かにしろぉ」
うるせぇといいつつ、その慌てた様子が昨日の命を削り合うようなファイトを繰り広げていた少年とは思えず、何故か少しホッとした。
「え?何ここ?どこ?俺んちはどこ行った?」
「ったく。てめぇがあの後すぐ寝ちまったから、家が結局わかんなかったんだろぉが」
「えぇ?」
「その辺に捨てて行くわけにも普通の病院も連れて行けねぇから、うちに連れてきた」
「えぇ!」
さっきからポカンとしたり驚いて慌てふためいたり、こんな顔もできるのかと思わず口角が上がった。
何か珍しく庇護欲とでもいうのだろうか、世話を焼いてやりたい気にもなって飯ぐらい食わせてやるかと思った。
「なんか食ってけ」
「い、いや!ちげぇだろ!か、帰る!」
「あぁ?」
名前は痛む腹を庇いながらベッドから抜け出ようとしていた。
「おい。怪我人のくせにじっとしてやがれ」
「何言ってんだよ!こんなこともしあの人、…俺を飼ってる人に知れたらヤベェんだよ!」
名前は俺が脱がせてその辺の椅子の背にかけておいた自分のパーカーを引っ掴むと慌てて玄関を探し出した。
「ったく…監視されてる様子はなかった。ちょっと落ち着け」
「うわっ」
名前の肩をぐっと上から押して、椅子に無理やり座らせる。
昨日の疲れと傷が痛むせいだろう。そのまま大人しくなった。しかしもう目つきは昨日のように鋭くなっていた。
「…情で落とそうって魂胆?」
騙されるのがそんなに怖いか。
信じるのが…怖いよな、そりゃ。
俺は冷蔵庫を開けて朝食になりそうなもんを適当に見繕いながら返事をした。
「けっ、悪りぃが俺はその辺のヒーローと違ってそこまでお人好しじゃねぇんでな。そんな回りくどいことせず実力行使の方が性に合ってんだよ」
本心だ。
だが、今は、この時だけは…コイツがあの地下の薄暗い闘技場に行かなくて済むなら。
それならただ、ここにいてくれたらいいと思った。
「…俺はあの人に聞かれたらお前のことチクるぜ。悪りぃけど」
「そうしろ。嘘でもついてバレたらお前がヤベェんだろ」
「…んだよそれ。お前も大概お人好しじゃねぇか」
「俺はそんなやつぶっ飛ばすだけの実力があるんでな。全く問題ねぇ」
たぶん口の中は切ってて痛えだろと思って、冷たいままじゃがいものスープを出してやった。
「って、んなにこれ?」
「昨日の残りもんだわ」
「ふーん…」
名前は警戒してんのかスプーンでスープの表面をつついたりしている。
「…何やってんだよ」
「これなんての?食ったことねぇからわかんねぇ」
「じゃがいものスープ」
すると名前ががばっと顔を上げて俺を見た。
「じゃがいもがどうやってスープになんだよ!じゃがいもってあれだろ、ハンバーガーと一緒に出てくるやつだろ?」
それだけで何となくコイツの今までの生活とか、食ってるもんが何となくわかってしまいそうだった。
「ありゃじゃがいもって野菜を揚げてあんだよ。こっちは形がなくなるまで煮込んでスープにすんだ」
名前が「…へー」とかわかったのかわからねぇ返事をした後、スプーンの先に少しだけスープを掬って恐る恐る口に運んだ。
「…ん、んー?…んん?!うめぇ!」
名前がまた見たことのない表情を見せた。
あぁ、コイツちゃんと笑えんのか。
何故かホッとしてる俺がいて、むず痒い気持ちになる。
これはきっと懐かなかった猫が懐いてきたような気持ちなんだろう。
今度は、何かもっとあったけぇもん食わしてやりてぇなんて馬鹿なこと考えた。