番外編
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俺は咄嗟に指先までしっかり伸ばした両手を体の横に添えて謝る姿勢をとった。
隣にいる耳郎も「ちょ、やばいよ上鳴!」と小声で俺の名前を呼んだと同時にピシッと姿勢を正した気配がした。
俺はすぐに謝罪を口にした。
「す、すんません!部屋間違えましったぁぁ!!」
「と、友達の家だと思って、あ、あれ?引っ越したのかな?とにかくごめんなさい!」
近くまでたまたま任務帰りに耳郎と遭遇して、この辺爆豪の家だよな!って話になった。
そういやアイツ今日誕生日じゃない?!その一言で2人で家行ってみるかって、妙にテンション上がったまではよかった。
どでかいエントランスを通る時は以前遊びに来た時教えてもらった番号打って通過。部屋の前まで行ってインターホン鳴らしても誰も出なくて、やっぱ忙しいから誕生日とはいえ任務だよなって話して帰ろうと思って、何となくドアノブ捻ったら開いちまった。
2人でアイツ居留守使ってやがったな!って意気揚々と玄関を潜った。
そしたら目の前には爆豪とは似ても似つかない年下の男の子がいて、耳郎とやっちまったって悟った。
そんで冒頭に至るわけなんだけど。
その少年はポカンとした表情のまま呟いた。
「…すっげ、チャージズマとイヤホンジャックだ」
え?俺のこと知ってんの?俺って結構有名人??いやいや喜んでる場合じゃないか。俺と耳郎はとにかく早くその場をさりたくて早口で当たり障りのない返答をする。
「え?あれ?知ってくれてんのー?う、うれしいなぁ」
「あの、ごめんなさい。もう行きますんで!」
本来なら彼に何かヒーローらしいサービスをしてあげたかったけど、不法侵入をしてしまった手前一刻も早くこの場から立ち退きたい。うん。そうするっきゃない。
俺たちは玄関の戸を再びぐぐろうとした。すると少年が慌てて少し先程よりも大きな声で言った。
「あ、部屋間違ってないっすよ。勝己に会いにきたんじゃねぇの?」
「え?」
少年のまさかの発言に俺と耳郎はその足を止めた。
「チャージズマとイヤホンジャックは同級生だって、勝己から聞いたことある」
「あ、そ、そうそう!そうなんだよ!ってか、ん、んん??」
あれ?もしかして爆豪の親戚の子とか?
横にいる耳郎からも安堵の息を吐く音が聞こえて、ギリギリ不法侵入にならずに済みそうだとお互い顔を見合わせて笑った。今度は落ち着いて少年に向き直ると質問した。
「えっと、爆豪のやつは任務、だよな?」
「うん。夕方には帰ってくるって言ってた。上がって待っててよ」
「あ、いいよいいよ!突然きちゃったし、勝手に上がったら爆豪怒るだろうし…」
耳郎が両手を前に振って丁重に断ろうとして、俺もそれに賛同したが、察しのいい少年の一言に思わず再び動かそうとした足は止まる。
「でも、今日勝己の誕生日だから来てくれたんだろ?」
「あ、や、まぁそうなんだけど…勢いで来ちゃったから手ぶらだしなぁ」
その時少年がハッとした顔をして俺たちに詰め寄った。
何だ何だと思ってる間に目の前まできた少年は言った。
「じゃあさ!俺の手伝いしてくんね?」
そう言って強引に俺と耳郎の腕を引っ張る。
おおおおお。結構力強いな。
慌てて靴を脱いだから俺たち2人の靴は玄関に音を立てて転がった。
有無を言わさず連れて行かれた先はキッチン。
すんげぇ事になってた。
何か液体がシンクにはぶち撒かれ、汚れたボールやら調理器具が散乱、野菜のかけらがあちこち飛び散って、それからこれは…けっ、血痕?!
「あ、血は魚切った時のやつだから」
「あ、あぁそう。ど、どったのこれ?」
俺の考えていることを察した少年はあっけらかんと答えた。
とても爆豪の家とは思えない惨状に言葉をなくした。そんな俺に構わず少年は話し始めた。
「勝己が料理いつもしてくれんだけどさ、誕生日くらい作ってやりたくて」
「あ、それがもしかして誕生日プレゼントってこと?」
耳郎の質問に少年はコクコクと頷いた。
「俺何も買ってやれないし、でもいつも世話になってるから料理くらいって思ったんだけど、1人だと全然できねぇ」
俺たちはここまで聞けば少年の願いを察した。つまり爆豪への手料理を手伝ってやればいいわけだ!俺たちも爆豪の誕生日プレゼントに貢献できるわけだし一石二鳥だぜ!
「それに、友達も祝ってくれたら勝己もっと喜ぶだろ?」
その言葉と、さっきまで無表情ばかりだった少年の無垢な微笑みにノックアウト。耳郎と俺の気持ちはシンクロした。
この少年と共に、爆豪の誕生日を全力で祝おうぜって。
そうして始めた共同作業は順調だった。
材料は沢山あったから俺と少年…名前の2人で耳郎の指示に従って野菜を切ったり、煮たり、味付けをしていく。
包丁の持ち方が危うい名前にどきどきしながら2人で見守る。
料理は何とか完成しそうだと言うところでやっぱり誕生日には酒だよな!って3人で買い物に出かけた。
「名前は爆豪の従兄弟かなんか?兄弟はいねぇって聞いてたから」
俺はずっと気になっていたことを歩きながら聞いた。
「ううん。赤の他人。身寄りがないから居候させてもらってんの。今はほとんど高校の寮にいんだけど、勝己の誕生日だからこの週末は頑張って帰ってきた」
「え?!あ、あの爆豪が?!」
耳郎が思わず叫んだけど超同感。
そんな柄じゃねぇだろアイツ。
いやもちろん冷たいやつとは思ってねぇよ?
でもお情けとか同情とか似合わねぇ。
そもそも他人に深入りしねぇタイプだと思ってた。
どんな経緯があったかは知らねぇけど、名前は随分と爆豪を慕っているようだったから、まぁうまくやってんだろうなってなんか安心した。
耳郎もあの爆豪と暮らせるなんて名前しかいないんじゃない?って笑ってた。
それから名前はヒーローになるために、この春ヒーロー科のある高校入学したばっかだってことも知った。
シールドの個性かぁ!こいつぁ楽しみだな!
俺たちはすっかり名前と仲良くなっていた。
色々買い込んでまた爆豪の家に舞い戻る。
そろそろ爆豪も帰ってくるだろう。
玄関の前まで来て、名前がポケットから鍵を取り出すのを待っていると、ドタドタと足音が中から聞こえた。
え?と思ってる間にドアが勢いよく開いて、中から爆豪が珍しく焦った顔して出てきて、それが今日色々あった中で1番驚いた。
「ってめぇどこ行ってた?!つーかなんでお前らが一緒にいんだ?!こいつ勝手に連れ回すんじゃねぇ!!この誘拐犯が!!」
「いや!冗談でもヒーローに向かって誘拐犯とかマジでやめて!」
焦った顔から一変。すげぇ剣幕で罵られた。
うんうん。相変わらずだなー。
でも、なんて言うか…なんだろうなこの違和感。
次の瞬間には爆豪は名前の方へギロリと視線を移してまた怒鳴ってた。
「おい!どっか行くなら連絡入れとけっつったろ!!」
「ごめん忘れてた。でもヒーローが一緒なら問題ないだろ?」
爆豪の怒鳴り声もなんのそのって感じで、名前は涼しい顔して返事をしてた。
その反応に爆豪の声はさらにでかくなる。
「こいつらで安心なんかできねぇんだよ!!」
「いやいやこれでもプロなんですけどー?!」
過保護だなー!これ本当にあの爆豪か?!
名前って爆豪にとって特別なんだな。
なんつーか、ただの居候って感じ、な、だけではないって言うか…。
怒鳴り立てる爆豪に耳郎がまあまぁと仲裁に入る。
これまでの経緯を説明してなんとか爆豪を宥める。
「名前めっちゃいいやつじゃん。アンタのために苦手な料理頑張って、誕生日に家で待っててくれるなんてさ!だからあんまり怒らないでよ」
そう言われて爆豪は照れたんだか怒ってんだか、よくわかんねぇ顔して黙って部屋の中に引っ込んでった。
耳まで赤くなってたからたぶん、嬉しいんだと思った。
何となくその反応で俺も耳郎も2人の関係を察した。
名前が健気に爆豪を慕うのも、爆豪が名前に過保護になるのも…2人は特別な関係なのだ。
そもそも、そうじゃなきゃあの爆豪が家に自分以外の人間を置いておくはずがなかった。
俺たちは顔を見合わせて笑って、素直じゃない友人の誕生日を祝うべく部屋に入った。
祝いの席が始まれば、酒を飲みながら手料理を口にする爆豪は既に満更でもなさそうだった。
そんな爆豪を見て名前も嬉しそうだった。
「どう?勝己?うまい?」
「ん。うめぇ」
2人のやり取りを見てて思った。
こんな爆豪見たら皆んなびっくりすんだろうなぁ。って。
見せてやりてえな。
爆豪って誰よりも先に危険に突っ込んでって、俺たちにも絶対その逞しい背中しか見せねぇし、絶対敵には背中見せねぇし、そんな奴がさ、ヒーローじゃなくてただの1人の人間になって安らげる瞬間があるんだぜって、A組の皆んなには知ってほしい。
あ、酒飲みすぎたかな?何か爆豪と名前見てたら目頭が熱くなってきた。
おお、そうだ。
「俺勉強は苦手だからさぁ、今度緑谷とか飯田とかに声かけてやるよ!」
「はぁぁぁあ?!」
俺の提案にすかさず爆豪は異議を唱えるべく吠えついてきた。一方で名前はぱっと表情を明るくした。
「緑谷と飯田って…デクとインゲニウム?まじで?いいの?」
「よくねぇわ!俺がいんだろ?!俺に聞け!!」
がなる爆豪を落ち着かせるべく俺と耳郎はすかさず名前と爆豪の間に入る。
「爆豪だって毎回は無理だろ?爆豪が忙しいときは成績優秀組にも名前の勉強サポートしてもらおうぜ!もう俺らすっかり健気な名前の応援する気満々よ!!」
「あたしも役に立てそうなことあれば言ってよ!」
「まじで?すっげー!」
「おい!勝手に話進めてんじゃねぇ!!」
とかなんとかいいながら、名前のためになるのならその通りにしちゃうんだろお前はよ。
「名前!がんばれよ!」
「あたしたち名前がプロの世界に来るの待ってるから!」
あまり表情の変わらないこの少年の目を輝かせることの出来る夢も、
爆豪と名前が飾らず偽らず心から笑えるこの居場所も、守ってやりてぇな。いや、皆んなで守ってみせるぜ。
だって俺たちヒーローだし、友達だろ?
隣にいる耳郎も「ちょ、やばいよ上鳴!」と小声で俺の名前を呼んだと同時にピシッと姿勢を正した気配がした。
俺はすぐに謝罪を口にした。
「す、すんません!部屋間違えましったぁぁ!!」
「と、友達の家だと思って、あ、あれ?引っ越したのかな?とにかくごめんなさい!」
近くまでたまたま任務帰りに耳郎と遭遇して、この辺爆豪の家だよな!って話になった。
そういやアイツ今日誕生日じゃない?!その一言で2人で家行ってみるかって、妙にテンション上がったまではよかった。
どでかいエントランスを通る時は以前遊びに来た時教えてもらった番号打って通過。部屋の前まで行ってインターホン鳴らしても誰も出なくて、やっぱ忙しいから誕生日とはいえ任務だよなって話して帰ろうと思って、何となくドアノブ捻ったら開いちまった。
2人でアイツ居留守使ってやがったな!って意気揚々と玄関を潜った。
そしたら目の前には爆豪とは似ても似つかない年下の男の子がいて、耳郎とやっちまったって悟った。
そんで冒頭に至るわけなんだけど。
その少年はポカンとした表情のまま呟いた。
「…すっげ、チャージズマとイヤホンジャックだ」
え?俺のこと知ってんの?俺って結構有名人??いやいや喜んでる場合じゃないか。俺と耳郎はとにかく早くその場をさりたくて早口で当たり障りのない返答をする。
「え?あれ?知ってくれてんのー?う、うれしいなぁ」
「あの、ごめんなさい。もう行きますんで!」
本来なら彼に何かヒーローらしいサービスをしてあげたかったけど、不法侵入をしてしまった手前一刻も早くこの場から立ち退きたい。うん。そうするっきゃない。
俺たちは玄関の戸を再びぐぐろうとした。すると少年が慌てて少し先程よりも大きな声で言った。
「あ、部屋間違ってないっすよ。勝己に会いにきたんじゃねぇの?」
「え?」
少年のまさかの発言に俺と耳郎はその足を止めた。
「チャージズマとイヤホンジャックは同級生だって、勝己から聞いたことある」
「あ、そ、そうそう!そうなんだよ!ってか、ん、んん??」
あれ?もしかして爆豪の親戚の子とか?
横にいる耳郎からも安堵の息を吐く音が聞こえて、ギリギリ不法侵入にならずに済みそうだとお互い顔を見合わせて笑った。今度は落ち着いて少年に向き直ると質問した。
「えっと、爆豪のやつは任務、だよな?」
「うん。夕方には帰ってくるって言ってた。上がって待っててよ」
「あ、いいよいいよ!突然きちゃったし、勝手に上がったら爆豪怒るだろうし…」
耳郎が両手を前に振って丁重に断ろうとして、俺もそれに賛同したが、察しのいい少年の一言に思わず再び動かそうとした足は止まる。
「でも、今日勝己の誕生日だから来てくれたんだろ?」
「あ、や、まぁそうなんだけど…勢いで来ちゃったから手ぶらだしなぁ」
その時少年がハッとした顔をして俺たちに詰め寄った。
何だ何だと思ってる間に目の前まできた少年は言った。
「じゃあさ!俺の手伝いしてくんね?」
そう言って強引に俺と耳郎の腕を引っ張る。
おおおおお。結構力強いな。
慌てて靴を脱いだから俺たち2人の靴は玄関に音を立てて転がった。
有無を言わさず連れて行かれた先はキッチン。
すんげぇ事になってた。
何か液体がシンクにはぶち撒かれ、汚れたボールやら調理器具が散乱、野菜のかけらがあちこち飛び散って、それからこれは…けっ、血痕?!
「あ、血は魚切った時のやつだから」
「あ、あぁそう。ど、どったのこれ?」
俺の考えていることを察した少年はあっけらかんと答えた。
とても爆豪の家とは思えない惨状に言葉をなくした。そんな俺に構わず少年は話し始めた。
「勝己が料理いつもしてくれんだけどさ、誕生日くらい作ってやりたくて」
「あ、それがもしかして誕生日プレゼントってこと?」
耳郎の質問に少年はコクコクと頷いた。
「俺何も買ってやれないし、でもいつも世話になってるから料理くらいって思ったんだけど、1人だと全然できねぇ」
俺たちはここまで聞けば少年の願いを察した。つまり爆豪への手料理を手伝ってやればいいわけだ!俺たちも爆豪の誕生日プレゼントに貢献できるわけだし一石二鳥だぜ!
「それに、友達も祝ってくれたら勝己もっと喜ぶだろ?」
その言葉と、さっきまで無表情ばかりだった少年の無垢な微笑みにノックアウト。耳郎と俺の気持ちはシンクロした。
この少年と共に、爆豪の誕生日を全力で祝おうぜって。
そうして始めた共同作業は順調だった。
材料は沢山あったから俺と少年…名前の2人で耳郎の指示に従って野菜を切ったり、煮たり、味付けをしていく。
包丁の持ち方が危うい名前にどきどきしながら2人で見守る。
料理は何とか完成しそうだと言うところでやっぱり誕生日には酒だよな!って3人で買い物に出かけた。
「名前は爆豪の従兄弟かなんか?兄弟はいねぇって聞いてたから」
俺はずっと気になっていたことを歩きながら聞いた。
「ううん。赤の他人。身寄りがないから居候させてもらってんの。今はほとんど高校の寮にいんだけど、勝己の誕生日だからこの週末は頑張って帰ってきた」
「え?!あ、あの爆豪が?!」
耳郎が思わず叫んだけど超同感。
そんな柄じゃねぇだろアイツ。
いやもちろん冷たいやつとは思ってねぇよ?
でもお情けとか同情とか似合わねぇ。
そもそも他人に深入りしねぇタイプだと思ってた。
どんな経緯があったかは知らねぇけど、名前は随分と爆豪を慕っているようだったから、まぁうまくやってんだろうなってなんか安心した。
耳郎もあの爆豪と暮らせるなんて名前しかいないんじゃない?って笑ってた。
それから名前はヒーローになるために、この春ヒーロー科のある高校入学したばっかだってことも知った。
シールドの個性かぁ!こいつぁ楽しみだな!
俺たちはすっかり名前と仲良くなっていた。
色々買い込んでまた爆豪の家に舞い戻る。
そろそろ爆豪も帰ってくるだろう。
玄関の前まで来て、名前がポケットから鍵を取り出すのを待っていると、ドタドタと足音が中から聞こえた。
え?と思ってる間にドアが勢いよく開いて、中から爆豪が珍しく焦った顔して出てきて、それが今日色々あった中で1番驚いた。
「ってめぇどこ行ってた?!つーかなんでお前らが一緒にいんだ?!こいつ勝手に連れ回すんじゃねぇ!!この誘拐犯が!!」
「いや!冗談でもヒーローに向かって誘拐犯とかマジでやめて!」
焦った顔から一変。すげぇ剣幕で罵られた。
うんうん。相変わらずだなー。
でも、なんて言うか…なんだろうなこの違和感。
次の瞬間には爆豪は名前の方へギロリと視線を移してまた怒鳴ってた。
「おい!どっか行くなら連絡入れとけっつったろ!!」
「ごめん忘れてた。でもヒーローが一緒なら問題ないだろ?」
爆豪の怒鳴り声もなんのそのって感じで、名前は涼しい顔して返事をしてた。
その反応に爆豪の声はさらにでかくなる。
「こいつらで安心なんかできねぇんだよ!!」
「いやいやこれでもプロなんですけどー?!」
過保護だなー!これ本当にあの爆豪か?!
名前って爆豪にとって特別なんだな。
なんつーか、ただの居候って感じ、な、だけではないって言うか…。
怒鳴り立てる爆豪に耳郎がまあまぁと仲裁に入る。
これまでの経緯を説明してなんとか爆豪を宥める。
「名前めっちゃいいやつじゃん。アンタのために苦手な料理頑張って、誕生日に家で待っててくれるなんてさ!だからあんまり怒らないでよ」
そう言われて爆豪は照れたんだか怒ってんだか、よくわかんねぇ顔して黙って部屋の中に引っ込んでった。
耳まで赤くなってたからたぶん、嬉しいんだと思った。
何となくその反応で俺も耳郎も2人の関係を察した。
名前が健気に爆豪を慕うのも、爆豪が名前に過保護になるのも…2人は特別な関係なのだ。
そもそも、そうじゃなきゃあの爆豪が家に自分以外の人間を置いておくはずがなかった。
俺たちは顔を見合わせて笑って、素直じゃない友人の誕生日を祝うべく部屋に入った。
祝いの席が始まれば、酒を飲みながら手料理を口にする爆豪は既に満更でもなさそうだった。
そんな爆豪を見て名前も嬉しそうだった。
「どう?勝己?うまい?」
「ん。うめぇ」
2人のやり取りを見てて思った。
こんな爆豪見たら皆んなびっくりすんだろうなぁ。って。
見せてやりてえな。
爆豪って誰よりも先に危険に突っ込んでって、俺たちにも絶対その逞しい背中しか見せねぇし、絶対敵には背中見せねぇし、そんな奴がさ、ヒーローじゃなくてただの1人の人間になって安らげる瞬間があるんだぜって、A組の皆んなには知ってほしい。
あ、酒飲みすぎたかな?何か爆豪と名前見てたら目頭が熱くなってきた。
おお、そうだ。
「俺勉強は苦手だからさぁ、今度緑谷とか飯田とかに声かけてやるよ!」
「はぁぁぁあ?!」
俺の提案にすかさず爆豪は異議を唱えるべく吠えついてきた。一方で名前はぱっと表情を明るくした。
「緑谷と飯田って…デクとインゲニウム?まじで?いいの?」
「よくねぇわ!俺がいんだろ?!俺に聞け!!」
がなる爆豪を落ち着かせるべく俺と耳郎はすかさず名前と爆豪の間に入る。
「爆豪だって毎回は無理だろ?爆豪が忙しいときは成績優秀組にも名前の勉強サポートしてもらおうぜ!もう俺らすっかり健気な名前の応援する気満々よ!!」
「あたしも役に立てそうなことあれば言ってよ!」
「まじで?すっげー!」
「おい!勝手に話進めてんじゃねぇ!!」
とかなんとかいいながら、名前のためになるのならその通りにしちゃうんだろお前はよ。
「名前!がんばれよ!」
「あたしたち名前がプロの世界に来るの待ってるから!」
あまり表情の変わらないこの少年の目を輝かせることの出来る夢も、
爆豪と名前が飾らず偽らず心から笑えるこの居場所も、守ってやりてぇな。いや、皆んなで守ってみせるぜ。
だって俺たちヒーローだし、友達だろ?
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