2round
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俺は名前を乱暴にベッドへと突き飛ばした。
「うわっ、…めっちゃイライラしてんねー」
発信機を頼りに闘技場に乱入し、轟達と共に名前を救出した。
現場に駆けつけた時には名前は犯される寸前。
目の前が真っ赤に染まって、手当たり次第爆発させた。
轟に後処理を押し付けて、何か言ってる名前を無視して肩に担ぐと家に戻った。
なんで、何でコイツは自ら進んで危険に飛び込む。
勢いよく背中からマットレスに沈み込んだ名前は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐにいつもの飄々とした様子で話し出した。
いつもみたく、ヘラヘラ笑ってやがる。
俺はコイツの…このいつもペースを崩さない性格にいつも救われてきた。
お前がいつも通りでいてくれるってのは、俺がいつも通りでいられるってことだからだ。
だが、今日は違う。
「てめぇはなんでそう…」
「えぇ?」
名前が聞き返したのと同時にベッドに乗り上がった。
下を見れば名前がこちらをまっすぐに見ている。名前は組み敷かれてもいつも通り笑ってやがる。それが、今日はこんなに俺の胸を掻き乱す。
「お前は…何もわかってねぇんだ」
「…何を?勝己は俺に何をわかってほしいんだよ?」
それは察しのいい名前らしい質問の仕方だった。
俺でもよくわからねぇこの鬱々として、焦燥にも似た気持ちを…。
そうだ、俺はお前にわからせてぇんだ。
だが口で言わなきゃそんなこともわかんねぇのかって想いもあって、俺の口からは次の言葉が出ることはなかった。
それでも黙ってる俺を名前は静かに見つめて、俺が何か言うのを待っていた。
「…勝己」
名前を呼ばれたのをどこか遠くで聞いているようだった。
「…言ってくれなきゃ、わかんねぇこともあるだろ」
段々と不安そうな表情になるお前を見ていて、何で、って気持ちになる。
不安だったのは…お前がどこか遠くにいっちまうんじゃねぇかって、いっちまったらって、いつも怯えてるのは俺の方なのにって。
物怖じせず、危険なことにも動じないお前は頼もしいようで…俺には危うく見えた。
またいつあの真っ暗で、血生臭い、お前のその瞳を冷たくさせる世界に引きずり込まれちまうんじゃねぇかって…怖ぇんだ。
「てめぇは…何も、何もわかろうとしちゃいねぇ…!」
言葉を発することを拒絶していた自分の喉が震えて絞り出されたのは、驚くほど情けない声だった。
「こんなこと…わかんねぇのかよ?!大事なやつ危険な目に遭わせたくねぇって、そんなこと…!言わなきゃわかんねぇのかよ?!」
言い出したら色んな感情も一緒に流れ出てきた。
切羽詰まったように喚く俺を名前が驚いた表情で見上げている。
フラフラとしてどこか掴みどころのない名前は、野良猫みたいで…。
そんなお前が俺にだけ擦り寄ってくるのが心地よくて仕方ない反面、気まぐれにどこかいっちまうんじゃねぇかと思った。
小さな、小さな不安は降り積もってお前をこのまま家に閉じ込めておけたらなんて思うようになった。
裏社会で小さい頃から生きてきた名前は日の当たるこの世界のことには疎かった。だからこのまま…この部屋の外の世界なんか知らずに、俺の帰りだけを待って、永遠に…。
もちろんそれが間違ってるなんてことわかりきってる。そもそも名前に、真っ当な人生も悪くねえって、思ってもらうためにその手をとったんだ。
矛盾した俺の感情が、いつもどこかで頭の中をぐるぐると巡っていた。
日を追うごとに膨らむ矛盾に気づかないふりをしていたのに、今回お前を意図せず敵 退治に巻き込んだことで爆発した。
「お前が、…俺の知らねえところに行っちまうんじゃねぇかって、それが…」
名前は驚いた表情から真剣な表情になって俺の話を静かに聞いていた。
「それが、俺は死ぬほど嫌だ…」
こんなに、愛してんだ。
「…わかるよ。勝己」
名前が返事をしたが、それでも俺は抑えきれなくなった感情が止まらなかった。
「ってめぇに何がわかるって…!」
「わかるよ。俺も、勝己のこといつもそう思ってる」
俺の声を遮って、名前は笑った。
いつものような飄々とした笑顔じゃなくて、どこか切なそうに微笑んで名前がそう言うものだから俺は思わず黙った。
「だけど、気付かなかったんだ。勝己も俺みたいに不安だったなんて知らなかったんだ…ごめん」
「な…」
名前の両腕が俺の背中に回された。
「勝己は強ぇけど、万が一でも死んじまったらどうしようとか、もう会えなくなったらどうしようとか…家で1人の時はいつも思うよ」
それを聞いた瞬間、ずくりと心臓が音を立てて痛んだ。
「だから、よくわかんだその気持ち。怖いし、不安なんだ。突然理不尽な暴力が俺の大事なもの奪っていっちまうんじゃねぇかって…」
寂しそうに揺れる名前の瞳を見て目の奥が痛んだ。
「だから…わかんねぇなんて言うなよ。痛いほどわかるから。ごめん…ごめん気づいてやれなくて」
俺の視界はぼやけて、気付けば涙が頬を伝っていた。
お前のことを、俺以外にも他に代わりのいる野良猫みたいだなんて、愛されてる自信がないとか、そんなこと思ってたわけじゃねぇ。
そこまで捻くれちゃいねぇ。
でも、お前がボロボロになって戦っていたあの姿が頭から離れねぇ。
冷たくなって、息もしてるのかしてないのかわからねぇほど傷つけられたあの姿が忘れられない。
もう誰にも傷つけさせない。
俺が守る。
俺が守るから。
だから、どこにも行かないでくれ。
誰よりも強いヒーローであろうと思った。
なのに、そんな想いがこんなにも俺を弱くする。
俺は何も言えない代わりに名前を抱きしめた。
背中に回されていた腕に力が入って、それがひどく安心した。
そのまま2人で何も言わずに抱きしめ合った。
ポツリと名前が耳元で言った。
「俺も、ヒーローに憧れてたんだ」
それは、初耳だった。
驚きを出来るだけ隠して、黙って名前の次の言葉を待った。
「子供の頃なんてさ、皆んなヒーローに一度は憧れるもんだろ?」
少し照れくさそうに名前が笑う声が耳元でする。
「そんな憧れもさ、あんな生活してたらいつの間にか無くなっちまった」
暴力と支配。
血と錆の匂い。
希望のない、理不尽で、出口の見えない世界。
名前はそんな世界で生きてきた。
「でもさ…」
名前はどこか言いにくそうに言い淀んだ。
俺は体を起こしてその顔を見た。
迷いのある表情を浮かばせて、名前も体を起こした。
ベッドの上に向かい合って座る。
「でもさ、俺…やっぱり守られてばっかりは落ち着かねぇよ」
ぽつりぽつりと紡がれるその一言一言を拾う。
それは名前がこれまで捨ててきてしまった大切なものを一つ一つ、丁寧に掬い上げているようだった。
「俺の個性シールドだぜ?勝己。なぁ、俺さ…」
絶望の中で捨ててしまったであろうその小さな光を。
「俺、ヒーローになりてぇ」
だから一時の感情でそう言ってるわけじゃねぇのはわかった。
「ガキの頃の夢を叶えたいとかじゃねぇんだ。…でも今の俺の夢を叶えるにはそうしたいんだよ」
ヒーローになる。
簡単に言ってしまえばそれまでだが、それに伴う苦悩や危険を考えれば反対したかった。
だが、ずっと昔に捨ててしまった大切なものをお前がもう一度取り返したいと思ってくれたのが、嬉しかった。
「勝己がみんなを救う。…その背中を守れるヒーローになりてぇ」
お前の気持ちをここで尊重できないのなら、俺はあの日、お前と一緒に暮らそうと言える資格はなかったはずだ。
これからも。
勝己がみんなのヒーローなら、俺がそのヒーローを守れば世界平和だろ?
なんて、お前が屈託なく笑うから。
つられてガキみたいに笑って、その唇に口付けた。
2round fin
「うわっ、…めっちゃイライラしてんねー」
発信機を頼りに闘技場に乱入し、轟達と共に名前を救出した。
現場に駆けつけた時には名前は犯される寸前。
目の前が真っ赤に染まって、手当たり次第爆発させた。
轟に後処理を押し付けて、何か言ってる名前を無視して肩に担ぐと家に戻った。
なんで、何でコイツは自ら進んで危険に飛び込む。
勢いよく背中からマットレスに沈み込んだ名前は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐにいつもの飄々とした様子で話し出した。
いつもみたく、ヘラヘラ笑ってやがる。
俺はコイツの…このいつもペースを崩さない性格にいつも救われてきた。
お前がいつも通りでいてくれるってのは、俺がいつも通りでいられるってことだからだ。
だが、今日は違う。
「てめぇはなんでそう…」
「えぇ?」
名前が聞き返したのと同時にベッドに乗り上がった。
下を見れば名前がこちらをまっすぐに見ている。名前は組み敷かれてもいつも通り笑ってやがる。それが、今日はこんなに俺の胸を掻き乱す。
「お前は…何もわかってねぇんだ」
「…何を?勝己は俺に何をわかってほしいんだよ?」
それは察しのいい名前らしい質問の仕方だった。
俺でもよくわからねぇこの鬱々として、焦燥にも似た気持ちを…。
そうだ、俺はお前にわからせてぇんだ。
だが口で言わなきゃそんなこともわかんねぇのかって想いもあって、俺の口からは次の言葉が出ることはなかった。
それでも黙ってる俺を名前は静かに見つめて、俺が何か言うのを待っていた。
「…勝己」
名前を呼ばれたのをどこか遠くで聞いているようだった。
「…言ってくれなきゃ、わかんねぇこともあるだろ」
段々と不安そうな表情になるお前を見ていて、何で、って気持ちになる。
不安だったのは…お前がどこか遠くにいっちまうんじゃねぇかって、いっちまったらって、いつも怯えてるのは俺の方なのにって。
物怖じせず、危険なことにも動じないお前は頼もしいようで…俺には危うく見えた。
またいつあの真っ暗で、血生臭い、お前のその瞳を冷たくさせる世界に引きずり込まれちまうんじゃねぇかって…怖ぇんだ。
「てめぇは…何も、何もわかろうとしちゃいねぇ…!」
言葉を発することを拒絶していた自分の喉が震えて絞り出されたのは、驚くほど情けない声だった。
「こんなこと…わかんねぇのかよ?!大事なやつ危険な目に遭わせたくねぇって、そんなこと…!言わなきゃわかんねぇのかよ?!」
言い出したら色んな感情も一緒に流れ出てきた。
切羽詰まったように喚く俺を名前が驚いた表情で見上げている。
フラフラとしてどこか掴みどころのない名前は、野良猫みたいで…。
そんなお前が俺にだけ擦り寄ってくるのが心地よくて仕方ない反面、気まぐれにどこかいっちまうんじゃねぇかと思った。
小さな、小さな不安は降り積もってお前をこのまま家に閉じ込めておけたらなんて思うようになった。
裏社会で小さい頃から生きてきた名前は日の当たるこの世界のことには疎かった。だからこのまま…この部屋の外の世界なんか知らずに、俺の帰りだけを待って、永遠に…。
もちろんそれが間違ってるなんてことわかりきってる。そもそも名前に、真っ当な人生も悪くねえって、思ってもらうためにその手をとったんだ。
矛盾した俺の感情が、いつもどこかで頭の中をぐるぐると巡っていた。
日を追うごとに膨らむ矛盾に気づかないふりをしていたのに、今回お前を意図せず
「お前が、…俺の知らねえところに行っちまうんじゃねぇかって、それが…」
名前は驚いた表情から真剣な表情になって俺の話を静かに聞いていた。
「それが、俺は死ぬほど嫌だ…」
こんなに、愛してんだ。
「…わかるよ。勝己」
名前が返事をしたが、それでも俺は抑えきれなくなった感情が止まらなかった。
「ってめぇに何がわかるって…!」
「わかるよ。俺も、勝己のこといつもそう思ってる」
俺の声を遮って、名前は笑った。
いつものような飄々とした笑顔じゃなくて、どこか切なそうに微笑んで名前がそう言うものだから俺は思わず黙った。
「だけど、気付かなかったんだ。勝己も俺みたいに不安だったなんて知らなかったんだ…ごめん」
「な…」
名前の両腕が俺の背中に回された。
「勝己は強ぇけど、万が一でも死んじまったらどうしようとか、もう会えなくなったらどうしようとか…家で1人の時はいつも思うよ」
それを聞いた瞬間、ずくりと心臓が音を立てて痛んだ。
「だから、よくわかんだその気持ち。怖いし、不安なんだ。突然理不尽な暴力が俺の大事なもの奪っていっちまうんじゃねぇかって…」
寂しそうに揺れる名前の瞳を見て目の奥が痛んだ。
「だから…わかんねぇなんて言うなよ。痛いほどわかるから。ごめん…ごめん気づいてやれなくて」
俺の視界はぼやけて、気付けば涙が頬を伝っていた。
お前のことを、俺以外にも他に代わりのいる野良猫みたいだなんて、愛されてる自信がないとか、そんなこと思ってたわけじゃねぇ。
そこまで捻くれちゃいねぇ。
でも、お前がボロボロになって戦っていたあの姿が頭から離れねぇ。
冷たくなって、息もしてるのかしてないのかわからねぇほど傷つけられたあの姿が忘れられない。
もう誰にも傷つけさせない。
俺が守る。
俺が守るから。
だから、どこにも行かないでくれ。
誰よりも強いヒーローであろうと思った。
なのに、そんな想いがこんなにも俺を弱くする。
俺は何も言えない代わりに名前を抱きしめた。
背中に回されていた腕に力が入って、それがひどく安心した。
そのまま2人で何も言わずに抱きしめ合った。
ポツリと名前が耳元で言った。
「俺も、ヒーローに憧れてたんだ」
それは、初耳だった。
驚きを出来るだけ隠して、黙って名前の次の言葉を待った。
「子供の頃なんてさ、皆んなヒーローに一度は憧れるもんだろ?」
少し照れくさそうに名前が笑う声が耳元でする。
「そんな憧れもさ、あんな生活してたらいつの間にか無くなっちまった」
暴力と支配。
血と錆の匂い。
希望のない、理不尽で、出口の見えない世界。
名前はそんな世界で生きてきた。
「でもさ…」
名前はどこか言いにくそうに言い淀んだ。
俺は体を起こしてその顔を見た。
迷いのある表情を浮かばせて、名前も体を起こした。
ベッドの上に向かい合って座る。
「でもさ、俺…やっぱり守られてばっかりは落ち着かねぇよ」
ぽつりぽつりと紡がれるその一言一言を拾う。
それは名前がこれまで捨ててきてしまった大切なものを一つ一つ、丁寧に掬い上げているようだった。
「俺の個性シールドだぜ?勝己。なぁ、俺さ…」
絶望の中で捨ててしまったであろうその小さな光を。
「俺、ヒーローになりてぇ」
だから一時の感情でそう言ってるわけじゃねぇのはわかった。
「ガキの頃の夢を叶えたいとかじゃねぇんだ。…でも今の俺の夢を叶えるにはそうしたいんだよ」
ヒーローになる。
簡単に言ってしまえばそれまでだが、それに伴う苦悩や危険を考えれば反対したかった。
だが、ずっと昔に捨ててしまった大切なものをお前がもう一度取り返したいと思ってくれたのが、嬉しかった。
「勝己がみんなを救う。…その背中を守れるヒーローになりてぇ」
お前の気持ちをここで尊重できないのなら、俺はあの日、お前と一緒に暮らそうと言える資格はなかったはずだ。
これからも。
勝己がみんなのヒーローなら、俺がそのヒーローを守れば世界平和だろ?
なんて、お前が屈託なく笑うから。
つられてガキみたいに笑って、その唇に口付けた。
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