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鼻を摘みたくなるような錆と鉄の匂い。
耳を塞ぎたくなるような群衆の怒声と歓喜の声。
目を瞑りたくなるような血の海。
こんな環境、慣れたものだった。
だけど勝己と出会ってからは、これが異常で、陰惨で、悲しいと…多少は感じるようになった。
どうやら前の対戦では死者が出たようだ。
「名前次出番か?稼がせてくれよ?お前に賭けてんだ。烏丸さん捕まって、お前もどっかトンズラしたんだと思ってたがついてるぜ」
どんっ。と横から大柄の男がぶつかってきた。
俺がファイターやってた時、烏丸さんから金もらって色々動いてた奴。
俺が個性使ってたことも知ってる。
「…んー?だって行くとこないっしょ。烏丸さんいないと前の闘技場じゃ金もらえねぇし。女のとこにもずっとはいれなくなってきてさ」
この闘技場に調査に来た時、こいつがここにいたからあっさり中に入ることができた。
「あの頃は個性隠して儲けたよなぁ。俺もまた稼がせてくれよ」
「おぅ。その代わり俺に有利になりそうな情報くれよなー。次の対戦相手とかさー」
ヘラリと笑ってその男を見上げる。
「悪りぃけど相手も初参戦の奴だからどんな奴かわかんねぇ。本当だぜ?お前に勝ってもらわないと俺も困るからな。知ってたら教えるぜ」
「んだよー」
リングにデッキブラシを持った奴が上がってきた。
俺はそいつが雑な手つきで淡々とリングの清掃をしていくのを黙ってみていた。
「ところでよ」
「んー?」
男は屈んで俺に顔を近づけてくる。
「何かお前、色っぽくなったな。前から顔の整った奴だとは思ってたが…ホントは女のとこじゃなくて男に飼われてたんじゃねぇのか?」
「…」
うざっ。
下衆でイラつく発言だが、意外にも真理をついていてそれが余計ムカつく。
「あー、そういうのってわかっちゃうもんなの?まぁなー。いい暮らしさせてくれんならどこでもいいと思ってさ」
平常心を装って答える。
「なんでそこにずっといねぇんだ」
「…俺に飽きたんじゃね?」
こんなの、ただの空想の話だ。架空の話。
だから、言ってて自分で傷つくなんて変だ。
「その気になったら俺んとこにもこいよ」
男は俺の腰を妙な手つきで撫で上げると、それだけ言って離れて行った。
「…っはぁー」
ありったけのため息は群衆のざわめく声で掻き消される。
勝己の怒った顔が目に浮かんだ。
“テメェはヒーローじゃねぇんだ!!!”
そしてなぜかその言葉を思い返していた。
わかってる。
わかってるよ。
勝己。
俺は、ただの小賢しい裏社会の元ファイターだ。
それ以外の肩書きなんか持ったことない。
だから、ヒーローなんかじゃないって嫌でもわかってるから。
今回だけだ。
勝己見てると、小さい頃のあの気持ちを思い出すんだ。
だから、こんなことするのこれが最後だから。
耳を塞ぎたくなるような群衆の怒声と歓喜の声。
目を瞑りたくなるような血の海。
こんな環境、慣れたものだった。
だけど勝己と出会ってからは、これが異常で、陰惨で、悲しいと…多少は感じるようになった。
どうやら前の対戦では死者が出たようだ。
「名前次出番か?稼がせてくれよ?お前に賭けてんだ。烏丸さん捕まって、お前もどっかトンズラしたんだと思ってたがついてるぜ」
どんっ。と横から大柄の男がぶつかってきた。
俺がファイターやってた時、烏丸さんから金もらって色々動いてた奴。
俺が個性使ってたことも知ってる。
「…んー?だって行くとこないっしょ。烏丸さんいないと前の闘技場じゃ金もらえねぇし。女のとこにもずっとはいれなくなってきてさ」
この闘技場に調査に来た時、こいつがここにいたからあっさり中に入ることができた。
「あの頃は個性隠して儲けたよなぁ。俺もまた稼がせてくれよ」
「おぅ。その代わり俺に有利になりそうな情報くれよなー。次の対戦相手とかさー」
ヘラリと笑ってその男を見上げる。
「悪りぃけど相手も初参戦の奴だからどんな奴かわかんねぇ。本当だぜ?お前に勝ってもらわないと俺も困るからな。知ってたら教えるぜ」
「んだよー」
リングにデッキブラシを持った奴が上がってきた。
俺はそいつが雑な手つきで淡々とリングの清掃をしていくのを黙ってみていた。
「ところでよ」
「んー?」
男は屈んで俺に顔を近づけてくる。
「何かお前、色っぽくなったな。前から顔の整った奴だとは思ってたが…ホントは女のとこじゃなくて男に飼われてたんじゃねぇのか?」
「…」
うざっ。
下衆でイラつく発言だが、意外にも真理をついていてそれが余計ムカつく。
「あー、そういうのってわかっちゃうもんなの?まぁなー。いい暮らしさせてくれんならどこでもいいと思ってさ」
平常心を装って答える。
「なんでそこにずっといねぇんだ」
「…俺に飽きたんじゃね?」
こんなの、ただの空想の話だ。架空の話。
だから、言ってて自分で傷つくなんて変だ。
「その気になったら俺んとこにもこいよ」
男は俺の腰を妙な手つきで撫で上げると、それだけ言って離れて行った。
「…っはぁー」
ありったけのため息は群衆のざわめく声で掻き消される。
勝己の怒った顔が目に浮かんだ。
“テメェはヒーローじゃねぇんだ!!!”
そしてなぜかその言葉を思い返していた。
わかってる。
わかってるよ。
勝己。
俺は、ただの小賢しい裏社会の元ファイターだ。
それ以外の肩書きなんか持ったことない。
だから、ヒーローなんかじゃないって嫌でもわかってるから。
今回だけだ。
勝己見てると、小さい頃のあの気持ちを思い出すんだ。
だから、こんなことするのこれが最後だから。