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昼は名前を驚かせようとホテルのブュッフェに連れてきた。
和食、洋食、中華、フランス、イタリアン…どれも一流のシェフが手がけた料理が並んでいる。
「う、わあー。すっげ!何これ全部食べれんの?!」
「おう。好きなもん食え」
「すげー!え、何から食ったらいいんだ?」
「なんでもいいんだよ」
ここのホテルのオーナーは金目当ての敵 に襲われそうになっているところを助けたことがある。
何か役に立てることがあれば連絡をくれと、以前わざわざプライベートの電話番号を教えてくれていた。
かけるつもりはなかったし、恩を利用するようで気が引けたが、たまたまTVでここのビュッフェが特集されていた。
それを見た名前が「見たことない料理ばっかりだなー。…でも何か美味そうだな!」と、言ったのだ。
もともと食に無頓着だった名前の食指が動くことはあまりなかったので、これは連れていくべきだと思った。
カッコつけたくて「じゃあ連れてってやる」なんてその場で言ってしまって、後で後悔した。
スマートに予約をとりつけようと電話したら半年先まで予約が取れないと言われた。
後ろでは名前が、勝己とデートだな!なんて嬉しそうにしてるのを見たら、プライドは一旦捨てた。使えるものは使わせてもらう。
俺はオーナーに電話をした。
幸い快くオーナーが予約を取り付けてくれ今日を迎えることができた、というわけだ。
「勝己ー!見てー!おじさんがあそこで肉焼いてくれた!」
「おじさん言うんじゃねぇ。シェフだろ」
「いただきまーす!」
全く話を聞かずに肉をナイフで切り分ける名前。
ん?そういやこいつナイフとかフォークの使い方知ってんだな。そんなこと思う俺は失礼だろうか。
ちょっと意外だった。
「ん?…もしかしてこれ?」
「いや、なんでもねぇよ」
「たまにさぁ烏丸さん…いやもう烏丸でいいかー。アイツがたまに高い店とかホテルに俺を連れてくんだよ。食事のマナー悪いとフォークで刺されるからさ。一応覚えたんだ」
「…どっちがマナー悪ぃんだよそれ」
久しぶりに名前を長年苦しめてきた諸悪の根源の名を聞いた。
しかし、ホテル…と聞いて、名前が瀕死の重傷を負うきっかけになった場所もホテルだったことを思い出した。
その部屋で行われたであろうことも…。
そこまで考えて俺は何だか胃がひっくり返りそうな気分の悪さを覚えた。
「?、勝己食べねぇの?大丈夫か?なんか顔色悪くね?」
「…んなことねぇわ」
いや。俺が気分悪くなってる場合じゃねぇだろ。嫌な目に合ったのはコイツだ。何被害者ぶってんだ俺は。
「悪かった…こんな場所連れてきちまって…」
気分を少しでも変えようと冷たい水を一気に煽った。
だが気の利いた言葉が何一つ出てこない自分が腹立たしい。
名前が驚いた、と言うか、傷ついた表情で俺を見ていた。
「…なんでだよ。そんなこと言うなよ。俺が行ってみたいって言ったんじゃねぇか」
「こういう場所…お前にとっては嫌な場所なんじゃねぇの?」
俺は何言ってんだ?名前に八つ当たりしてどおすんだ。
頭ではわかっていても、胸の中はムカムカして口からは結果的に名前を責めているような言葉が出てくる。
違う。
こんなことが言いてぇんじゃねぇ。
名前が視線を落としてナイフとフォークをテーブルに置いた。
この後名前が何を言うのかわからなくて、俺は顔を見れなかった。
「勝己…俺さ、確かに烏丸に連れてかれた場所は全部嫌いだった。いつも食事の席でもアイツ涼しい顔でヘマした部下の指切り落としたり、借金して返済能力なくなったやつ目の前で殺したりしてた」
「…」
想像以上にやばかった。
そんなもん小さい頃から見せられてた名前が、どうして今まで正気を保っていられたのか…。
「こんな場所で言うことじゃないのわかってんだけど聞いてくれ。だから俺、いいもん食っても何にも味しなかった。汚ねぇビルの隅で1人食ってる残飯のがよっぽど味がする気がした」
「…」
俺は名前の苦しみをまだちっともわかっちゃいなかった。
鈍器で頭を殴られたような気持ちだった。
握る手のひらに爪が食い込む。
「でもさ、勝己が初めて食わしてくれた飯がすげーうまかった」
「…は」
俺は咄嗟に顔を上げて名前を見た。
「味がわからないって言っても…勝己なら責めたりしないって思ったらさ、味がしたんだよ。しかもすげー美味くてさ」
俺はそんな事を名前が感じていたなんてちっとも知らなかった。
「勝己と一緒に暮らせるようになってもそれは変わらなかった。一緒に食ってくれる人が勝己ならきっと何でも美味いと思って…そんなこと考えてたらたまたまこのホテルがTVに映ってさ…」
名前はそして気を取り直したようにナイフとフォークをとった。
「どこで食べるかじゃなくて、俺は誰と食べるかを重視してるから」
「…悪ぃ」
「だから!何で謝んだよ」
俺は名前のこととなると簡単に冷静さを失う。
だが一瞬で幸福を感じさせてくれるのも名前だけだ。
「でも一個付け加えると」
「あ?」
「ここもとっても美味しいけど、やっぱり勝己のご飯が1番美味い」
「!…っ、お前は」
俺は両手で顔を覆って、はぁっとクソデカため息を吐いた。
お前は簡単に俺をヒーローでも何でもない、ただの単純な男にしてしまう恐ろしいやつだ。
本当はシールド以外の個性隠し持ってんじゃねぇのか?
「ほら勝己!早く食べようぜ!」
「わぁってるわ!俺はある意味腹いっぱいなんだよ…」
「なんで?!」
名前…お前ってすげーんだな。
なんでそんな境遇だったてぇのに、そんな真っ直ぐに生きられたんだ?
自分が情けなくなってくるぜ。
「酒でも飲むわ」
「あ、俺も」
「馬鹿が!ガキの分は頼まねぇよ!!!」
お前の、名前の前ではかっこいいヒーローでいたいのによ。
和食、洋食、中華、フランス、イタリアン…どれも一流のシェフが手がけた料理が並んでいる。
「う、わあー。すっげ!何これ全部食べれんの?!」
「おう。好きなもん食え」
「すげー!え、何から食ったらいいんだ?」
「なんでもいいんだよ」
ここのホテルのオーナーは金目当ての
何か役に立てることがあれば連絡をくれと、以前わざわざプライベートの電話番号を教えてくれていた。
かけるつもりはなかったし、恩を利用するようで気が引けたが、たまたまTVでここのビュッフェが特集されていた。
それを見た名前が「見たことない料理ばっかりだなー。…でも何か美味そうだな!」と、言ったのだ。
もともと食に無頓着だった名前の食指が動くことはあまりなかったので、これは連れていくべきだと思った。
カッコつけたくて「じゃあ連れてってやる」なんてその場で言ってしまって、後で後悔した。
スマートに予約をとりつけようと電話したら半年先まで予約が取れないと言われた。
後ろでは名前が、勝己とデートだな!なんて嬉しそうにしてるのを見たら、プライドは一旦捨てた。使えるものは使わせてもらう。
俺はオーナーに電話をした。
幸い快くオーナーが予約を取り付けてくれ今日を迎えることができた、というわけだ。
「勝己ー!見てー!おじさんがあそこで肉焼いてくれた!」
「おじさん言うんじゃねぇ。シェフだろ」
「いただきまーす!」
全く話を聞かずに肉をナイフで切り分ける名前。
ん?そういやこいつナイフとかフォークの使い方知ってんだな。そんなこと思う俺は失礼だろうか。
ちょっと意外だった。
「ん?…もしかしてこれ?」
「いや、なんでもねぇよ」
「たまにさぁ烏丸さん…いやもう烏丸でいいかー。アイツがたまに高い店とかホテルに俺を連れてくんだよ。食事のマナー悪いとフォークで刺されるからさ。一応覚えたんだ」
「…どっちがマナー悪ぃんだよそれ」
久しぶりに名前を長年苦しめてきた諸悪の根源の名を聞いた。
しかし、ホテル…と聞いて、名前が瀕死の重傷を負うきっかけになった場所もホテルだったことを思い出した。
その部屋で行われたであろうことも…。
そこまで考えて俺は何だか胃がひっくり返りそうな気分の悪さを覚えた。
「?、勝己食べねぇの?大丈夫か?なんか顔色悪くね?」
「…んなことねぇわ」
いや。俺が気分悪くなってる場合じゃねぇだろ。嫌な目に合ったのはコイツだ。何被害者ぶってんだ俺は。
「悪かった…こんな場所連れてきちまって…」
気分を少しでも変えようと冷たい水を一気に煽った。
だが気の利いた言葉が何一つ出てこない自分が腹立たしい。
名前が驚いた、と言うか、傷ついた表情で俺を見ていた。
「…なんでだよ。そんなこと言うなよ。俺が行ってみたいって言ったんじゃねぇか」
「こういう場所…お前にとっては嫌な場所なんじゃねぇの?」
俺は何言ってんだ?名前に八つ当たりしてどおすんだ。
頭ではわかっていても、胸の中はムカムカして口からは結果的に名前を責めているような言葉が出てくる。
違う。
こんなことが言いてぇんじゃねぇ。
名前が視線を落としてナイフとフォークをテーブルに置いた。
この後名前が何を言うのかわからなくて、俺は顔を見れなかった。
「勝己…俺さ、確かに烏丸に連れてかれた場所は全部嫌いだった。いつも食事の席でもアイツ涼しい顔でヘマした部下の指切り落としたり、借金して返済能力なくなったやつ目の前で殺したりしてた」
「…」
想像以上にやばかった。
そんなもん小さい頃から見せられてた名前が、どうして今まで正気を保っていられたのか…。
「こんな場所で言うことじゃないのわかってんだけど聞いてくれ。だから俺、いいもん食っても何にも味しなかった。汚ねぇビルの隅で1人食ってる残飯のがよっぽど味がする気がした」
「…」
俺は名前の苦しみをまだちっともわかっちゃいなかった。
鈍器で頭を殴られたような気持ちだった。
握る手のひらに爪が食い込む。
「でもさ、勝己が初めて食わしてくれた飯がすげーうまかった」
「…は」
俺は咄嗟に顔を上げて名前を見た。
「味がわからないって言っても…勝己なら責めたりしないって思ったらさ、味がしたんだよ。しかもすげー美味くてさ」
俺はそんな事を名前が感じていたなんてちっとも知らなかった。
「勝己と一緒に暮らせるようになってもそれは変わらなかった。一緒に食ってくれる人が勝己ならきっと何でも美味いと思って…そんなこと考えてたらたまたまこのホテルがTVに映ってさ…」
名前はそして気を取り直したようにナイフとフォークをとった。
「どこで食べるかじゃなくて、俺は誰と食べるかを重視してるから」
「…悪ぃ」
「だから!何で謝んだよ」
俺は名前のこととなると簡単に冷静さを失う。
だが一瞬で幸福を感じさせてくれるのも名前だけだ。
「でも一個付け加えると」
「あ?」
「ここもとっても美味しいけど、やっぱり勝己のご飯が1番美味い」
「!…っ、お前は」
俺は両手で顔を覆って、はぁっとクソデカため息を吐いた。
お前は簡単に俺をヒーローでも何でもない、ただの単純な男にしてしまう恐ろしいやつだ。
本当はシールド以外の個性隠し持ってんじゃねぇのか?
「ほら勝己!早く食べようぜ!」
「わぁってるわ!俺はある意味腹いっぱいなんだよ…」
「なんで?!」
名前…お前ってすげーんだな。
なんでそんな境遇だったてぇのに、そんな真っ直ぐに生きられたんだ?
自分が情けなくなってくるぜ。
「酒でも飲むわ」
「あ、俺も」
「馬鹿が!ガキの分は頼まねぇよ!!!」
お前の、名前の前ではかっこいいヒーローでいたいのによ。