爆豪
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
金髪に赤い瞳。
背丈も同じで、同じ制服に身を包んだ少年が2人並んで歩いていた。
見た目が瓜二つの少年2人は、そのままおそらく日本で1番有名なハイスクールへと足を踏み入れる。
「勝己ー。数学の教科書忘れたー」
「はぁ??馬鹿名前が。B組のやつに借りろ」
瓜二つな2人だったが、勝己と呼ばれた少年は口調と同じく髪型も、吊り上がった目つきなども攻撃的な印象。
名前と呼ばれた少年はおっとりと話し、髪型はサラサラとしたストレートで目はやや垂れ目だった。
「おっす!爆豪兄弟!今日もそっくりだな!」
「アホが!双子なんだからあったりめぇだろ!毎回毎回他に言うことねぇのか!」
「おはよー切島」
「中身はぜんぜん別もんだな!」
その様子を見ていたクラスメイトも切島と同じような感想を抱いて苦笑いしていた。
見た目は双子らしくそっくり。
個性も同じ「爆破」。
個性の威力や身体能力もほぼ同じ。
「中身もそっくりだよ」
「え?」
しかし切島の発言を訂正するため名前が静かに答えた。
「嘘だろ!名前はおっとりしてるし話が通じるけど…」
「あぁ?!誰が話が通じねぇだと?!」
「ほら話が出来る状態じゃねえよ、お前の兄ちゃん」
周りから笑い声が沸いた。
名前はニコリと笑った後続けた。
「ほら、負けず嫌いなところとか」
「お!そうだなぁ。お前ら双子の間でも絶対負けたくねぇって意気込みは伝わってくるぜ!」
切島がアツいコメントを返すものだから勝己は「勝手にやってろ」と自分の席へと1人歩いて行った。
「結局2人はどっちがケンカとか強ぇの?」
そこに上鳴が名前と切島の会話に参加した。
「どっちかな?引き分けが多いんだよね。僕が勝ったと思えば次はすぐ勝己が勝つし…イタチごっこだよ」
「俺は名前を応援するぜ」
「聞こえてんぞ上鳴ぃ‼︎次の演習の授業でボコボコにしてやるから待ってろ‼︎」
その様子をクラスメイトは平和な青春の1ページとしてあたたかく見ていた。
そうして2人ははっきりとした勝敗もつかぬまま、仲間と共に切磋琢磨し、3年間ヒーローとしての道を進んだ。
卒業式の日。
春の穏やかな日。
雪の梢が空を彩る。
「やっとだね」
勝己の隣で名前が桜を見上げて言った。
「ん?あぁ…?」
何が?といった顔で勝己が名前をみる。
「僕たちもう学生じゃなくなるんだよ。明日から個性を使って大勢を守るんだ」
「そうだ、な」
どこか遠くを見ている名前に勝己は何か違和感を感じた。
勝己は思案した。名前は明日からヒーローになれるという希望と、同時に背負う責任に多少感情が不安定になっているのだろうと。
「俺たち2人に勝てる奴なんていねぇよ」
だから、大丈夫だ。
不器用だがそんな気持ちを込めて、勝己は名前に言った。
名前は桜から視線を移して勝己を見た。
「うん。いないだろうね」
名前が笑った。
勝己も口角を上げて応えた。
そして卒業式の次の日を境に、名前は姿を消した。
「爆破予告のあった小学校がさっき本当に爆破された!!!」
爆豪のヒーロー事務所にそんな連絡が入ったのは名前がいなくなって1年した頃だった。
「幸い学校は予告があったため休校中だった!被害者はいない!…ただ、爆心地に似た少年を見たとの目撃情報が…っ」
「…!!」
勝己はずっと探している弟に会いたいと思う気持ちより、別人であってくれと思う気持ちが強かった。
現場に向かえば黒煙と炎が立ち込める陰惨な地獄が広がっていた。
個性が強すぎて近づけるヒーローがおらず、勝己が迷わず単身で突っ込んでいった。
「…っ名前!!!!」
瓦礫の上に座った少年の目は虚だった。
違ってくれ。
お前は… 名前じゃないと、言ってくれ。
「勝己。待ってたよ」
願いも虚しくその声は自分とよく似ていて、産まれてからずっと聞いてきた声だった。
「何で…っ、何でてめぇこんな事を…!!」
酷い気持ちだった。
最愛の弟が無力な子供をターゲットに、こんな最悪で反吐が出そうな事件を起こした。
しかも、これまで予告後に似たような爆破事件があったのは1回や2回ではない。
「何がしてぇんだ!!!お前がなんで敵 になんかなった?!!お前はヒーローだろ?!」
「違うよ」
「!!」
その一言だけで、
これまでの人生が嘘のようだった。
一緒に小さい頃からヒーローの活躍に心躍らせていた。
一緒にオールマイトよりすげぇヒーローになろうと約束した。
双子でも絶対負けないと、誓った。
産まれた時から、産まれる前から、ずっと一緒に生きてきた。
「全部本当は壊したかった。勝己、特にお前のことを」
名前が横に崩れたであろう校舎の瓦礫の山に片手を翳して爆破した。
「お前と競争してもまともに勝敗ついたことなかったろ?何しても同じでそのうち俺とお前、区別がつかなくなった」
「…わけ、わかんねぇよ。お前はお前だろぉが…」
「どっちか消さなきゃって思ったんだ」
勝己は混乱のあまり、口を開いては閉じることしかできなかった。
名前の中にこんな混沌としたものがあるなんて、今まで一瞬だって思ったことはなかった。
「だから待ったんだよ?勝己が卒業して、ヒーローとして個性を使って僕を本気で殺しに来てくれるのを」
ーーー俺を殺すのも、俺が殺すのも、勝己じゃなきゃダメなんだ。
勝己の、これは悪い夢であってほしいと言う願いを踏み躙り、名前の声が爆風と共に耳に届く。
堪らず勝己が叫んだ。
「…俺たちが今まで積み上げてきたものは何だったんだよ!!」
その声を受けて、名前が合図するように掌で爆発を繰り返す。
「そうだよ。その積み上げてきたものを全力でぶつけ合おうよ。止めてみせろよ…ヒーロー?」
世界には爆音しか聞こえなくなった。
それでも勝己は叫んだ。
最後まで、叫んだ。
名前がいないと、俺の夢は意味がないと。
どれくらい死闘を続けたのだろうか。
名前か勝己の作り出した爆発か、わからなくなって、どちらの爆炎で火傷を負ったのか、何もわからなくなったころ。
勝己はやっと名前の腕を掴むことができた。
やっと捕まえた。
もう一度話し合おう。
今までお前がそんな闇を抱えていたなんて知らなかった。
たった1人の双子なのに、気づかなくてごめん。
だから、もう一度俺の横にいてくれ。
そう伝えようと、名前の腕を強く掴む。
「…は、」
爆音と爆風が落ち着いてもまだ土埃が立ち込める中、見えた名前の姿に勝己は言葉を失った。
腹部に大きな風穴が空いている。
掴んだ反対の腕はどこかにいってしまった。
「…俺、お前と双子なんかに産まれたくなかっ…た」
「…名前っ」
勝己は倒れた名前を抱き止める。
あっという間に血溜まりが足元にできて、自分の体温か、名前の体温か、どちらともなく冷たくなっていく。
「勝己の中で、一つの命として…産まれたかった」
「…っ、俺は…‼︎」
「愛してる…」
わからなかった。
勝己には最後までわからなかった。
そうまでして勝敗をつけたかった気持ちも、双子の自分と一緒にヒーローとして生きていけなかった理由も。
ただ一つ、こうなってしまった今でも#柊を誰よりも愛していることしかわからなかった。
「俺も…愛してる」
その言葉と同時に真紅の瞳から光は失われた。
背丈も同じで、同じ制服に身を包んだ少年が2人並んで歩いていた。
見た目が瓜二つの少年2人は、そのままおそらく日本で1番有名なハイスクールへと足を踏み入れる。
「勝己ー。数学の教科書忘れたー」
「はぁ??馬鹿名前が。B組のやつに借りろ」
瓜二つな2人だったが、勝己と呼ばれた少年は口調と同じく髪型も、吊り上がった目つきなども攻撃的な印象。
名前と呼ばれた少年はおっとりと話し、髪型はサラサラとしたストレートで目はやや垂れ目だった。
「おっす!爆豪兄弟!今日もそっくりだな!」
「アホが!双子なんだからあったりめぇだろ!毎回毎回他に言うことねぇのか!」
「おはよー切島」
「中身はぜんぜん別もんだな!」
その様子を見ていたクラスメイトも切島と同じような感想を抱いて苦笑いしていた。
見た目は双子らしくそっくり。
個性も同じ「爆破」。
個性の威力や身体能力もほぼ同じ。
「中身もそっくりだよ」
「え?」
しかし切島の発言を訂正するため名前が静かに答えた。
「嘘だろ!名前はおっとりしてるし話が通じるけど…」
「あぁ?!誰が話が通じねぇだと?!」
「ほら話が出来る状態じゃねえよ、お前の兄ちゃん」
周りから笑い声が沸いた。
名前はニコリと笑った後続けた。
「ほら、負けず嫌いなところとか」
「お!そうだなぁ。お前ら双子の間でも絶対負けたくねぇって意気込みは伝わってくるぜ!」
切島がアツいコメントを返すものだから勝己は「勝手にやってろ」と自分の席へと1人歩いて行った。
「結局2人はどっちがケンカとか強ぇの?」
そこに上鳴が名前と切島の会話に参加した。
「どっちかな?引き分けが多いんだよね。僕が勝ったと思えば次はすぐ勝己が勝つし…イタチごっこだよ」
「俺は名前を応援するぜ」
「聞こえてんぞ上鳴ぃ‼︎次の演習の授業でボコボコにしてやるから待ってろ‼︎」
その様子をクラスメイトは平和な青春の1ページとしてあたたかく見ていた。
そうして2人ははっきりとした勝敗もつかぬまま、仲間と共に切磋琢磨し、3年間ヒーローとしての道を進んだ。
卒業式の日。
春の穏やかな日。
雪の梢が空を彩る。
「やっとだね」
勝己の隣で名前が桜を見上げて言った。
「ん?あぁ…?」
何が?といった顔で勝己が名前をみる。
「僕たちもう学生じゃなくなるんだよ。明日から個性を使って大勢を守るんだ」
「そうだ、な」
どこか遠くを見ている名前に勝己は何か違和感を感じた。
勝己は思案した。名前は明日からヒーローになれるという希望と、同時に背負う責任に多少感情が不安定になっているのだろうと。
「俺たち2人に勝てる奴なんていねぇよ」
だから、大丈夫だ。
不器用だがそんな気持ちを込めて、勝己は名前に言った。
名前は桜から視線を移して勝己を見た。
「うん。いないだろうね」
名前が笑った。
勝己も口角を上げて応えた。
そして卒業式の次の日を境に、名前は姿を消した。
「爆破予告のあった小学校がさっき本当に爆破された!!!」
爆豪のヒーロー事務所にそんな連絡が入ったのは名前がいなくなって1年した頃だった。
「幸い学校は予告があったため休校中だった!被害者はいない!…ただ、爆心地に似た少年を見たとの目撃情報が…っ」
「…!!」
勝己はずっと探している弟に会いたいと思う気持ちより、別人であってくれと思う気持ちが強かった。
現場に向かえば黒煙と炎が立ち込める陰惨な地獄が広がっていた。
個性が強すぎて近づけるヒーローがおらず、勝己が迷わず単身で突っ込んでいった。
「…っ名前!!!!」
瓦礫の上に座った少年の目は虚だった。
違ってくれ。
お前は… 名前じゃないと、言ってくれ。
「勝己。待ってたよ」
願いも虚しくその声は自分とよく似ていて、産まれてからずっと聞いてきた声だった。
「何で…っ、何でてめぇこんな事を…!!」
酷い気持ちだった。
最愛の弟が無力な子供をターゲットに、こんな最悪で反吐が出そうな事件を起こした。
しかも、これまで予告後に似たような爆破事件があったのは1回や2回ではない。
「何がしてぇんだ!!!お前がなんで
「違うよ」
「!!」
その一言だけで、
これまでの人生が嘘のようだった。
一緒に小さい頃からヒーローの活躍に心躍らせていた。
一緒にオールマイトよりすげぇヒーローになろうと約束した。
双子でも絶対負けないと、誓った。
産まれた時から、産まれる前から、ずっと一緒に生きてきた。
「全部本当は壊したかった。勝己、特にお前のことを」
名前が横に崩れたであろう校舎の瓦礫の山に片手を翳して爆破した。
「お前と競争してもまともに勝敗ついたことなかったろ?何しても同じでそのうち俺とお前、区別がつかなくなった」
「…わけ、わかんねぇよ。お前はお前だろぉが…」
「どっちか消さなきゃって思ったんだ」
勝己は混乱のあまり、口を開いては閉じることしかできなかった。
名前の中にこんな混沌としたものがあるなんて、今まで一瞬だって思ったことはなかった。
「だから待ったんだよ?勝己が卒業して、ヒーローとして個性を使って僕を本気で殺しに来てくれるのを」
ーーー俺を殺すのも、俺が殺すのも、勝己じゃなきゃダメなんだ。
勝己の、これは悪い夢であってほしいと言う願いを踏み躙り、名前の声が爆風と共に耳に届く。
堪らず勝己が叫んだ。
「…俺たちが今まで積み上げてきたものは何だったんだよ!!」
その声を受けて、名前が合図するように掌で爆発を繰り返す。
「そうだよ。その積み上げてきたものを全力でぶつけ合おうよ。止めてみせろよ…ヒーロー?」
世界には爆音しか聞こえなくなった。
それでも勝己は叫んだ。
最後まで、叫んだ。
名前がいないと、俺の夢は意味がないと。
どれくらい死闘を続けたのだろうか。
名前か勝己の作り出した爆発か、わからなくなって、どちらの爆炎で火傷を負ったのか、何もわからなくなったころ。
勝己はやっと名前の腕を掴むことができた。
やっと捕まえた。
もう一度話し合おう。
今までお前がそんな闇を抱えていたなんて知らなかった。
たった1人の双子なのに、気づかなくてごめん。
だから、もう一度俺の横にいてくれ。
そう伝えようと、名前の腕を強く掴む。
「…は、」
爆音と爆風が落ち着いてもまだ土埃が立ち込める中、見えた名前の姿に勝己は言葉を失った。
腹部に大きな風穴が空いている。
掴んだ反対の腕はどこかにいってしまった。
「…俺、お前と双子なんかに産まれたくなかっ…た」
「…名前っ」
勝己は倒れた名前を抱き止める。
あっという間に血溜まりが足元にできて、自分の体温か、名前の体温か、どちらともなく冷たくなっていく。
「勝己の中で、一つの命として…産まれたかった」
「…っ、俺は…‼︎」
「愛してる…」
わからなかった。
勝己には最後までわからなかった。
そうまでして勝敗をつけたかった気持ちも、双子の自分と一緒にヒーローとして生きていけなかった理由も。
ただ一つ、こうなってしまった今でも#柊を誰よりも愛していることしかわからなかった。
「俺も…愛してる」
その言葉と同時に真紅の瞳から光は失われた。