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Twitterまとめ

『夕焼けの裏に』



夕陽に紅く燃える空は幻想的で美しく、それでいて力強い。ふと、どんなときも決して膝を折らない強いあなたを思い出した。見る者の心を奪う美しさで戦場を駆けたあなた。ここに、あなたがいたら。きっと夕陽のように優しく輝く笑顔を向けてくれただろう。

振りかえると、夜の闇に沈みゆく空が淡く紫に霞んでいた。黒になるまいと青が抵抗しているのだろうか。黒と青の境。くっきりと赤く浮かび上がる夕焼けとは正反対に、淡く霞んで静かにうっすらと弱々しく。ふと、自分を愛せないのだと静かに独り、涙を流す弱いあなたを思い出した。罰を甘受するかのように無抵抗に傷だらけになるあなた。ここに、あなたがいたら。きっと闇に沈む空のように、淡く憂いをおびた涙も流してくれただろう。

また明けると知れば朝が怖いと怯え、夜の闇に支配されると知れば朝など夢だったのだと諦めて。そんなあなたに、夜は当然に明けるのだと、怖がらないでと布団のように包んでやりたかった。もっと、当たり前に朝がやってくることを教えてやりたかった。あのひとに、それに足るものを残せただろうか。

夕焼けの赤が夜の黒に塗りつぶされていく。目を閉じて、あなたを思い出した。
不思議と「十分だった」と満足そうにはにかむあなた。そう、疑問など無意味なのだ。これが俺たちの『最上』だと信じたのだから。

陽は暮れて、また昇る。あなたの愛した世界の真理。明日もまた、当然のようにあなたのいない朝がくるのだろう。




/夕焼けの裏に
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