『愛の起源』



『愛の起源』という話を知っていますか？ヒトはむかし、４本の手と４本の脚を持ち、頭は２つあったそうです。知能も体力も素晴らしく、とても能力の高い種族だったと言います。
それゆえに神はヒトを恐れ、ヒトもまた神を蔑ろにして反乱を起こそうとしました。神はヒトに神罰の雷を落とし、ヒトを真っ二つに分けました。二度と逆らうことがないように。
それ以降、ヒトは失われた片割れを求め、完全なかたちに戻りたいと思うようになりました。その想いが『愛』と呼ばれているものです。
だから私たちは求めあい、繋がりあおうとするのだと言われています。


私たちはきっと、ひとつの生命だったのでしょうね。ひとつの魂を分け合って、ひとつになりたいと願い、恋焦がれ、求めあい。
あなたとひとつの生命だったなら、それはどんなに良かったでしょうね。私たちが歩んできたように、離ればなれになったり憎しみあったりすることも……

こうしてひとり残されることも、なかったでしょうに。

……ですが、私は思うのです。ひとつの魂がふたつの生命だったからこそ、あなたを愛することができたのだと。
だから、いつかあなたに再会して、再びこの世に生を受けることになったとしても、私はきっと、あなたとひとつの魂を分け合うふたつの生命であることでしょう。そしてまた、あなたに出逢い、恋焦がれ、離ればなれになったり憎しみあったりしながら、あなたを愛することができる幸福を噛み締めるのだと思います。

そのときまで、私は生き続けます。あなたの愛したこの世界で、あなたの愛に抱かれながら……。



/愛の起源 #直高ss