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『寒い日の朝』
「しもばしらだぜ!」
朝の濃い霧の中で、キラキラと笑顔を見せるあなた。足元には、土の下からもそっと生える霜柱。その上を歩く度に、シャク、シャク、と音を立てて崩れていく。
そんなあなたをずっと見ていたかった。日常の小さな現象に無邪気に笑い、はしゃぐあなたを。ほんの小さな幸せに微笑むそんなあなたを。
本当はあの時、関わらないでいてあげるべきだったのではないか。何度もそう思った。上杉景虎としての記憶を封印して、純粋にただの高校生仰木高耶として生きていたあなたを、また夜叉の日々に連れ戻す必要はないのではないか、と。
あのひとが生きていてくれるという事実、この世に存在してくれているという真実だけで、良かったのではないか。だが、葛藤し、迷い戸惑い、後悔し、やっとわかったことがあった。
記憶をなくしたまま浸る生温い日常(幸せ)など、あのひとは望まなかったはずだ。全てを投げ打って封印して、俺と出会って、ゼロからやり直そうとした。記憶がなくとも、俺があなたを見つけるはずだと信じてくれていた。だからこそ、あなたが記憶を取り戻した先に俺たちの「最上のあり方」があると信じた俺のことも、彼は信じてくれていたはずだ。
「直江?」
「え?」
長く考え込んでいたらしい。霜柱をひと通り踏み終えた高耶が直江を覗き込んでいた。
「どうした? 寒いから早く行こうぜ!」
「……はい、そうですね。高耶さん」
冬の街を白く塗りつぶしていた霧も、ようやく晴れてきた。今日はいつもより少し、暖かくなりそうだ。
#直高ss
「しもばしらだぜ!」
朝の濃い霧の中で、キラキラと笑顔を見せるあなた。足元には、土の下からもそっと生える霜柱。その上を歩く度に、シャク、シャク、と音を立てて崩れていく。
そんなあなたをずっと見ていたかった。日常の小さな現象に無邪気に笑い、はしゃぐあなたを。ほんの小さな幸せに微笑むそんなあなたを。
本当はあの時、関わらないでいてあげるべきだったのではないか。何度もそう思った。上杉景虎としての記憶を封印して、純粋にただの高校生仰木高耶として生きていたあなたを、また夜叉の日々に連れ戻す必要はないのではないか、と。
あのひとが生きていてくれるという事実、この世に存在してくれているという真実だけで、良かったのではないか。だが、葛藤し、迷い戸惑い、後悔し、やっとわかったことがあった。
記憶をなくしたまま浸る生温い日常(幸せ)など、あのひとは望まなかったはずだ。全てを投げ打って封印して、俺と出会って、ゼロからやり直そうとした。記憶がなくとも、俺があなたを見つけるはずだと信じてくれていた。だからこそ、あなたが記憶を取り戻した先に俺たちの「最上のあり方」があると信じた俺のことも、彼は信じてくれていたはずだ。
「直江?」
「え?」
長く考え込んでいたらしい。霜柱をひと通り踏み終えた高耶が直江を覗き込んでいた。
「どうした? 寒いから早く行こうぜ!」
「……はい、そうですね。高耶さん」
冬の街を白く塗りつぶしていた霧も、ようやく晴れてきた。今日はいつもより少し、暖かくなりそうだ。
#直高ss