予想外
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「このくらいでいいかな」
寒さ対策用の衣類を一通り揃えたシオンは、船へ一旦戻ることにした。
夕刻過ぎに町外れの酒場に集まる事になっているが、夕刻までは自由行動。
まだ陽は高い。
かさばる荷物を一度置きに戻る余裕はあった。
「それにしても、ロー船長はどこに行ったんだろう」
両手で持つのも一苦労な量を抱え直し、シオンは溜め息をついた。
途中で姿が見えなくなってから今に至るまで、ローは結局どこかへ消えたままだった。
ついてきてくれたのなら、今のような時に手伝ってくれればいいのに。
仮にも船長にそんなことを期待するのは間違っているかもしれない。
そう思いつつも、未練たらしく辺りに件の人物がいないかと探してしまう。
「……いない、か」
「誰がいないって?」
「うぎゃあ!」
いきなり横から声をかけられ、シオンは荷物を落としそうになった。
「何度言ったらその悲鳴の上げ方が治るんだ?」
「病気みたいに言わないで下さい。誰のせいで悲鳴を上げたと思ってるんですか!」
飄々とのたまうローに非難の視線を向けると、ローの手に下がる紙袋に目がいった。
どうやらローも何かを調達してきたらしい。
「シオン、今から船に戻るか?」
「戻りますよ。こんなに荷物抱えてたらどこにも寄れませんからって、え?」
奪い取られるようにローの手に渡った荷物を、シオンは凝視した。
「行くぞ」
短くそれだけ言うと、ローはさっさと歩き出してしまう。
荷物を持ってもらえたのは非常に嬉しかったが、そう思うよりも先に
「ロー船長どうしたんだろう?」
と、不思議に思う気持ちが先に来てしまうのは何故だろうか。
なんて考えていたら、ローの姿がだいぶ小さくなっていた。
「やばっ」
人混みに紛れて見失わないうちに追いつかないと、後で何を言われるかわかったものじゃない。
しかも荷物は今ローが持っている。
その事実を思い出し、シオンは全速力でローの背中を追った。
買ってきた物を整理し終わる頃、ローが部屋を訪ねてきた。
「これに着替えろ」
そう言って投げ渡されたのは、ローが下げていた紙袋だった。
訝しみながらも、シオンは紙袋の中身を取り出す。
「これ……」
出てきた物にシオンは言葉を失った。
「お前用のつなぎがないからな。代わりだ」
ローが口元をニヤリと歪めて言う。
シオンは着ていた上着を脱ぎ、入っていた物を身に着けた。
紙袋の中に入っていたのは、コートだった。
少し色の抑えられたオレンジ色のそれは、ハートの海賊団の船員が着ているつなぎとよく似た色をしていた。
袖を通してみれば、サイズはぴったりで、ちゃんと膝丈まで裾がある。
余計な飾りは一切ないシンプルなデザインだ。
「いかがでしょう?」
と、ローに問えば、
「行くぞ。そろそろ時間だ」
くるりと踵を返し、部屋を出て行ってしまった。
「コメントなしですか?」
ローの反応に不満を感じながらも、わざわざ探してきてくれた事実が嬉しくて自然と笑みが零れる。
「早くしろ」
「うぃ」
急かすローとともに、シオンは仲間と合流する予定の酒場へと足を向けた。
09.7.5 tarot