幼なじみで恋人
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部活終わりの帰り道。
「お待たせ、研磨は?」
「今日は新作ゲームの発売日だからって、先に帰ったぞ」
「そっか」
「よし、じゃあ帰るべ」
「うん」
幼なじみのクロと研磨。
1つ年上のクロに誘われるがままにバレー部のマネージャーとして入ってからは、いつも3人で帰るのが当たり前になっていた。それは、クロとの関係が幼なじみではなく彼氏と彼女になっても変わらない、シオンの大切にしている時間だ。
けれど今日は、いつもなら3人で帰る道を珍しくクロと2人、並んで歩く。
シオンは女子の中でも身長が低め。クロと並べば、40センチ近い身長差になる。
いつもはその間に研磨がいるおかげで気にならないけれど、2人並べば嫌でも身長差に意識がいってしまった。
「クロまた身長伸びた?」
「伸びてねぇよ」
クロはシオンと話す時だけ、猫背になる。身長差があるから、そうしないと声が届かないのだ。
小さい頃はそうでもなかったのだが、中学校、高校と進むにつれて自然とクロが合わせてくれるようになっていた。
「クロって実は優しいよね」
「実はって何よ、実はって。見たまんまでしょうが」
クロの抗議に首をひねれば、クロの人相がいつも以上に悪くなった。
初見の人なら確実に避けて通りそうな表情だ。シオンにとっては割といつものことなので、それすらも華麗にスルーして話を元に戻す。
「これだけ身長差あるのに、クロは自然と私に合わせてくれるでしょ?」
「そうか?」
「そうだよ。だってクロと話してる時に聞き返されたことないし」
「なんだそりゃ」
「背の高い人と話す時ってさ、絶対って言っていいほど聞き返されるんだよね。『ん?』みたいな感じで」
「そういや、よくリエーフとそんなやり取りしてんな」
「リエーフ相手だと特にね。40センチ以上差があるから」
はははと苦笑いがこぼれる。
バレー部でマネージャーをしている以上、身長が高い相手とやりとりするのは当たり前で。でも聞き返されることが多いと、少しずつ話しかけることが億劫になってしまっていた。気づけばマネージャーの仕事上の最低限度の会話になっていて、その事実にまた凹むのだ。
「ま、別に悪気があるわけじゃないからな」
よしよしとクロに頭を撫でられる。それが慰めではなく、励ましであることをシオンはよく知っている。クロは昔から、こうだ。でも、そればかりだと少し寂しい気持ちになってしまうのは、欲張りだろうか。
「ん?難しい顔してどうした?」
「それだけだと寂しいなーって思って」
クロに弄ばれないように直球で想いを口にして足を止め、ずいっと、クロの方に身を乗り出す。
「え、何、今日はやけに積極的じゃない?」
急に距離を詰めても、クロは焦りを見せてはくれない。表面上は。
それが今日は異様に悔しくて、シオンはぐいっとクロの服をつかんで背を伸ばした。
「!!」
唇の柔らかな感触が残っている間にいたずらっぽく笑って見せれば、クロの顔がようやく赤く染まり出す。
「隙あり」
クロが屈まなくても、こっちが背伸びをすれば、その差はちゃんと埋まるのだ。クロがこっちに合わせて背を屈めてくれているから。
「いやいやいやいや。シオン、今のはズルいだろ」
大きな手で顔を覆い、クロはどうやら動揺を必死に押し殺しているらしい。そういう反応を見るのは久しぶりで、なおかつシオンだけの特権のようで少し嬉しい気持ちになる。
付き合っていても、幼なじみとしての距離感の方が強くて、それがもどかしく感じることがある。だからたまには、こういう不意打ちをしても罰は当たらないと思う。
「たまには付き合ってるっぽいことしても良いじゃない?」
クロに一矢報いたような満足感からそう口にしたのだけれど、早々に後悔することになるとは思わなかった。