帰り道の約束
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「ねぇ、赤葦ってさ、ボクトさんのこと好きなの?」
久しぶりに一緒になった帰り道。
シオンは常日頃からの疑問を、彼氏である赤葦に投げてみた。
割りと何かあっても動揺が表に出ない赤葦だけれど、さすがにこの問いかけには驚いたらしい。
まぁそれも、シオンのせいなのだけれど。まさか自分の彼女から、そんな疑問を投げられるとは思っていなかったのだろう。
やや動きを止めた赤葦を横目に見れば、ゆっくりと赤葦がこちらを向いた。
「……尊敬はしてるし、人として好きではあるけど……え、なんで急に?」
「なんで?って、部活以外でもボクトさんとよく一緒にいるから」
「流れでなんとなく居るだけだから。目を離すとたまにとんでもないことになってたりするし」
「へぇー」
だから目を離せないと、そういうことだろうか。
赤葦はボクトさんと一緒にいると生き生きとしているように見える。部活に打ち込んでいる姿は嫌いじゃないのだけれど、帰り道や休み時間まで赤葦の隣にはボクトさんの姿があることが多い。
……彼女である、シオンよりも。
沈黙が降りた時間はそう長くはなかったのだけれど、赤葦は何かを察してくれたようだった。
「……もしかして、拗ねてる?」
「……少し。 試合近いのは分かるけど、たまには私も構ってほしいなーなんて」
ほんの少しだけれど、赤葦の隣に当たり前のようにいられるボクトさんが羨ましい。
「一応、赤葦の彼女なんだけどな」
ふぅっとわざとらしくため息を吐けば、しゅるりと赤葦の手が右手に滑り込んできた。
「一応とか言われるとちょっと哀しいんだけど」
「だって、最近一緒に帰れてないし。お出かけだってなかなか行けないし」
シオンはバレー部のマネージャーでもなんでもない。練習が遅くなる時は、必然的にひとりぽつんと家路に着くのだ。
それは、仕方がないことなのだけれど。それでも、それが続くと寂しく感じてしまうのも仕方ないことだと思う。
「試合が近くて、最近遅くまで練習してたからね」
「知ってる」
梟谷の男子バレー部は強い。全国大会の常連校だからこそ、練習量もきっと半端ないのだろう。
でも、休みがないわけではない。
そのたまの休みも、ボクトさんとの練習に費やされることもあるけれど……。
「でも、次の日曜日はお休みでしょう?」
そう言って、言葉を区切る。
ちらりと伺うように赤葦を見上げれば、ふふっと赤葦が小さく笑ったところだった。
「久しぶりに二人で出掛けようか」
二人でというところにやや力が入っていたのは気のせいだろうか。
でも、今はそんなことはシオンにとっては些細なこと。
「ありがとう!約束だよ?」
赤葦がちゃんとシオンの望んでいたことを汲み取ってくれたことが、純粋に嬉しいから。
でもー
「ボクトさん引き連れてきたら、さすがに怒るからね」
赤葦が「二人で」と言ってくれたから大丈夫だとは思うけれど、ボクトさんに押し負けてしまわないように念を押しておく。
「連れていかないから」
くい気味で否定してきた言葉に吹き出せば、つられたのか赤葦も一緒になって笑い出した。
シオンと赤葦が出掛ける約束をした、その後。
ボクトと赤葦の間でー
「赤葦、日曜何か予定ある?」
「すみません、シオンと出かける約束してるので」
「デートか?いいなぁ」
「連れていきませんからね?」
「まだ何も言ってないだろー?」
「すみません。でも、シオンに釘を刺されているので念のため」
そんな会話が交わされていた。
2026.08.29 tarot