はじまりの時
名前の登録はこちらから↓
本棚全体の夢小説設定※名前を登録してから閲覧したい小説を選んで下さい。
未登録の場合は「坂上 シオン」と表示されます。
今のところ、苗字はほとんど使われておりませんが……。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
家に帰り速攻で旅支度を整えた私は、町の港へと急いだ。
「海賊船、海賊船っと」
港に停泊している船を一隻ずつ見て回る。
目立たないように普通の船舶を装っていたら、見つけられないかもしれない。
危惧を覚えながらも、ベポちゃんのためと気持ちを奮い立たせる。
「ーん?」
海賊船ってもっと目立たないように停泊してるんじゃないかな。
そう思ってしまうくらい呆気なく、目的の船は見つかった。
あのトラファルガー・ローやベポちゃん達の服についていたマークの海賊旗が、
風に煽られてその存在を示していた。
発見っと。
とりあえずここまでは何の問題もなく来ることが出来た。
船から少し離れて様子をうかがえば、船番をしているのであろう船員の姿が見える。
さて、
侵入しますか。
パキポキと腕を鳴らして、私は海賊船への侵入を開始した。
案外呆気なかったな。
船内を巡り歩いた末に辿り着いた一つの部屋で、私は安堵のため息を漏らした。
無理やりにでも仲間に入れてもらうには、出航してしばらく経ってから見つかるのが理想的だ。
ただ容赦なく海に放り出されたり、見つかった時点で命を奪られる可能性はある。大いにある。
それでも
街で頼み込んで仲間にしてもらうなんていう平和的手段では無理だろうと予想はついた。
(なにせ第一印象は最悪で、腕は飛ばされるは「失せろ」って言われるはという始末だ)
可能性があるとすれば、これしかない!
というのが導き出した結論だった。
我ながら浅はかだなと一瞬頭をよぎったが、そこは勢いで押し切った。
為せば成る。
よしっ!
その後無事に見つかることなく出航したものの、
見つかった瞬間に首と胴体が切り離されてしまったのはー余談だったりする。
「だから、仲間にして欲しくてですね」
「ほう。それなら人の部屋に勝手に入り込んでベッドで爆睡してたのはどういうわけか、
教えてもらおうか」
「それはですね……」
「そもそもなんでここにいた?」
「ここが一番見つかりにくいかと思いまして」
倉庫に隠れようかとも思ったのだが、補給のために街に立ち寄ったのだとしたら
一番人の出入りがありそうだと思ってやめた。
それで最も人の出入りが少ないと思われる場所と考えたら、
船長室!
と閃いてしまったのだ。
よくよく考えれば見つかった場所としては最悪だったわけだが。
「ところで」
「あぁ?」
「そろそろ身体を元に戻していただきたいのですが」
そういう今の私は、トラファルガー・ローの手の上に頭がのっている状態だ。
傍から見たらローが生首を手に持っているようにしか映らないだろう。
「次に会ったら首と胴体を切り離すと警告はしたよなぁ?」
「はい」
「しかもお前は今侵入者だ。いつ命を奪られても文句はない。違うか?」
「相違ございません」
ローの言い分は正しい。ここは肯定するしかない。
「で、なんでこの船に忍び込んだ?」
「この海賊団に入りたいなと思いまして」
ベポちゃんとどうしても離れたくないと思ったからーという本心は隠しておくことにする。
「そうか」
ふっと優しげに微笑んだと思ったことをすぐに後悔した。
優しげに微笑んだのではない、怪しげな笑みだったのだ。
なぜならー
あろうことかトラファルガー・ローは人の首を投げやがったのだ!
「ぎぃやあぁぁ!」
視界が目まぐるしく変わる様に、悲鳴を上げる。
こらそこ!
楽しそうにしてんじゃねぇ!
と心の中で悪態をつく。
「あ」
「元に戻りたかったんだろう?」
「はい」
首が着地した場所は自分の胴体だった。
「戻った?」
起き上がって首を回してみる。
異状なし。
「とっととそこを退け。邪魔だ」
「あっはい」
慌てて占領していたベッドから立ち上がり、場所を譲る。
ローは刀を肩に担いだまま、ベッドに腰をおろした。
またいつ厄介な能力を使うかもわからない。大事をとって離れようとすると、ギロリと睨まれた。
「そこに座れ」
床を指して言われ、しぶしぶローの斜め前辺りに移動する。
なんとなく自主的に正座の形をとって座った。
「で、本当の理由は何だ?」
「えーと」
「……ベポのことか?」
図星を指されて言葉に詰まる。
そういえば、街で「ベポちゃんを下さい!」と叫んでしまっていたんだった。
誤魔化すも何もない。最初から全部ばれているのだ。
「ぶっちゃけた話、そうです」
もう、なるようになるしかない。
ローの目をしっかりと見据え、肯定した。
「わざわざそのためだけに、危険を冒してまで船に忍び込んだのか」
くくっとローがのどを鳴らして笑った。
何を言われるのか冷や冷やしながら、ローが笑い終わるのを待つ。
「お前、面白いな」
肘をついてニヤリとしているローの目に、狂気が宿った……ように見えた。
「ちょうど最近退屈してたんだ。それに、俺は度胸のある奴は嫌いじゃない」
実に楽しそうにローは言葉を紡ぐ。
ゆるりとローの視線に見据えられ、私の心臓は激しく波立った。
「お前、名前は?」
唐突な問いに、「へ?」と気の抜けた声が口から洩れた。
「な、ま、え、は?」
「シオン、です」
繰り返し問われ、ようやく理解が追い付く。
目の前にローの顔が迫ってきたせいで、どもってしまった。
心臓に悪いったらない。
さらにローは言葉を続ける。
「シオン、お前をこの船に置いてやるよ」
とてつもなく喜ばしい申し出ではあったが、相も変わらずローの顔が目の前にあった。
だから思わず、
「近い近い近い!」
と叫んで後ずさったのも、仕方のないことだと思う。
その様子を見て、ローは再びのどを鳴らした。
「……これでしばらくは退屈しないですみそうだな」
なんて不穏なことを口走る。
とにもかくにもー
「海賊団に入れてくれるんですよね?」
「あぁ、退屈しのぎにはちょうど良さそうだからな」
ハートの海賊団入り決定!
09.6.11 tarot