夏模様
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「シオン、飲み物持ってきてやったぞ」
飲み物とついでに氷も持てるだけもって、ローは部屋に戻ってきた。
けれど、シオンからの返事はない。
うたた寝でもしているのかと持ってきたものをテーブルに置いてシオンに近づけば、
聞こえてきたのは浅く荒い息づかい。
「シオン」
「……寒い、です」
「寒い?」
肩を揺すって呼びかければ、そんな返答が返ってきた。
てっきり暑さに参っているのかと思っていただけに、 「寒い」という発言に一瞬動きが止まる。
シオンの額に手を当てれば、周りの暑さに負けず劣らず熱を持っていた。
状況的には熱中症あたりかと思ったのだが、寒いということはおそらく違う。
最近は寝苦しくてろくに眠れていなかったのに加えて、
おそらく急激に身体を冷やしたりしたから風邪でも引いたのだろう。
ローは床でぐったりとなっているシオンの身体を持ち上げた。
どうやら本当に寒いらしく、小刻みに身体が震えている。
「暑がったり寒がったり、忙しい奴だなお前は」
ベッドへ寝かせ、無造作に放ってあったタオルケットを シオンに巻き付けながらそう愚痴をこぼす。
タオルケットにくるまってもなお、シオンは身体を震わせていた。
「……まだ寒そうだな」
温かい飲み物でも持ってきてやるかとシオンから手を離して立ち上がろうとすると、
ぐいっと服の裾を引っ張られた。
怪訝に思ってシオンを見やれば、うっすらと目を開けていたシオンと目が合った。
「どうした?」
「……」
言葉は、なかった。
しかし、シオンの手はローの服の裾をつかんだまま。
「……しばらくはここに居てやるよ」
離す気配のない様子を見て、ため息をつきながらローは再びベッドに腰を下ろした。
ほっとしたかのように目を閉じたシオンが眠りについたのは、しばらく経った後。
その間、ローの服の裾はずっと握りしめられていた。
14.8.2 tarot