ヴァレンタイン
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2月14日
いえす。
ヴァレンタインデー。
「そういえばそういうイベントもあったなぁ」
自室のベッドで白熊のデカいぬいぐるみを抱え込み、シオンは1人珍しく心を躍らせていた。
個人的にあげたい相手はもちろんベポちゃんだが、一応ロー船長にもあげるべきだろうか。
どうしようかと、ころころとベッドの上を転がりながら考えを巡らせる。
しかしながら、ベポちゃんはともかくロー船長が甘いものを食べるという印象はない。
「チョコレートとロー船長か」
……想像がつかない。
似合わない物を渡しても機嫌を損ねる可能性が高い。
となると、せっかくなら喜んでもらえるように別のものを考えた方が無難だろう。
「んーどうしたらいいかなぁ……」
ふにふにとぬいぐるみの腹をつつきながら、シオンはため息を零した。
元々ヴァレンタインなんぞとは、縁なしな生活を送ってきた身だ。
いくら悩んだところで妙案が浮かんでくるわけもなく、ただ時間だけが過ぎてゆく。
「……チョコレート、か」
どうせ作るなら自分の分も欲しいなぁと、道をそれたことが頭に浮かぶ。
けれどー
「……チョコレート?」
復唱した単語に、シオンは自分用のチョコという考えを放り出した。
頭からすっぽりと抜け落ちていたことだが、そもそもこの船にチョコレートというものはあるのか?
そんな根本的な部分が危うかったことに気づいてしまったのだ。
もしなかったら作りようがない。
チョコレート菓子を作る云々で悩んでいる場合じゃなかった。
チョコレートそのものがなければ、作った経験に関係なく作れない事態が勃発することになる。
確認しに行った方が懸命、かな。
とりあえずチョコレートの有無を確認しなければ話にならない。
「善は急げっと」
気が変わらないうちに、シオンはぬいぐるみをベッドの上に残して部屋を出た。
チョコレートが無事に確保できた暁には、料理長に協力してもらおう。
調理場へと向かう道すがら、シオンはそんなことを思った。
14.02.13 tarot