暇つぶし
名前の登録はこちらから↓
本棚全体の夢小説設定※名前を登録してから閲覧したい小説を選んで下さい。
未登録の場合は「坂上 シオン」と表示されます。
今のところ、苗字はほとんど使われておりませんが……。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そのままダッシュで逃げ出してしまえばよかったのだけれど、
悲しいかなそんな度胸は持ち合わせていない。
反射的にぴしりと固まり、ぎこちない動きで首だけを後ろに向ける。
「その手に持ってるものは何だ?」
本から視線を上げ、ロー船長から問いが投げかけられる。
「何も持って」
「……ROOM」
「すみませんでした!」
身の危険を感じたシオンは即座にドアを閉め、
気づけばロー船長に、持っていた発掘品を差し出していた。
あぁ、せっかく楽しそうな物品を見つけたというのに。
そう思っても後の祭り。
すでに発掘した品はロー船長の手元に渡ってしまっている。
いや、自分で渡したのだけれども。
「……またよくこんな物を」
渡した発掘品を片手に、ロー船長から溜め息とともにそんな言葉が発せられた。
それはカラフルな写真などではなく、ところどころ日に焼け、かすれた跡が残る1枚の紙きれ。
そこに描かれてるのは、落書きのように走り書きされた今では見慣れたマーク。
ハートの海賊団の海賊旗のシンボルが、その紙には描かれていた。
「お前は本当に」
「すみません、探し出すのが得意なもので」
ロー船長から非難の言葉を浴びる前に、シオンは自らそう切り込んだ。
何と言われようと、見つけてしまったのだから仕方ない。
また怒られるかもしれないなぁと思ったが、意外なことにそれはなかった。
しかもさらに驚愕なことに、ロー船長から先ほどの海賊旗の描かれた紙が手元に戻ってきた。
何てミラクル。
驚きつつロー船長の顔色を窺えば、未だに呆れの表情が浮かんでいた。
のは、気にしないことにして、
ロー船長の気が変わらない内にさっさと受け取った紙をポケットへと滑り込ませる。
特に何も咎められなかったから、いいのだろう。多分。
と、ほっと胸をなで下ろしたところでいきなり何かが飛んできた。
慌ててシオンがそれに手を伸ばせば、ずしりと重たい感触。
「お前を本棚に近づけるとろくなことがないとよく分かった」
無表情で本に目を通しながらも、片手はびしりとシオンに向けられる。
「俺が直々に選んでやったんだ。読めよ?」
そうロー船長に言われて手元に視線を落とせば、
何の嫌がらせかと思うほどに分厚い難解そうな書物が目に入る。
「……えっと、すみません。ちょっと用事が」
こんな本を読破できるのであれば、
元よりこんなところへ暇だからと言って乗り込んで来たりはしない。
「部屋で散々好き勝手やっといて用事があるわけがないよな?」
痛いところを突かれ、シオンはうっと黙り込んだ。
そこへ追い打ちをかけるようにロー船長が言葉を重ねてきた。
「暇つぶしがしたかったんだろ? 手伝ってやるから有り難く受け取れ」
「……」
ロー船長の言うことは世間一般的に正しいような気はする。
がしかし、世の中自分が一番かわいいのも事実。
そこから導き出される答えはー1つ。
脱出あるのみ。
「お邪魔しましたっ!」
こういう時の為に脚力を磨いてきたとばかりに、自分でも驚くほどの速さでシオンは部屋を走り出た。
「シオン!」
と、後ろから怒声が聞こえこともないが、聞かなかったことにして船長室を後にする。
もちろん、脱兎のごとく。
次からはもう大人しくベポちゃんと一緒に睡眠を貪って暇を潰そうと心に決める。
途中ですれ違ったペンギンさんとキャスケットさんの
「あいつはまた何かやらかしたな」
的な視線を受け流し、シオンは何とかロー船長の魔の手から逃れたのだった。
2週間に1話更新企画第8弾。
12.9.15 tarot