暇つぶし
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シオンが「暇だ」と部屋に飛び込んで来たときにはどうなるかと思ったが、
本棚を示せば思いの外早々に静かになった。
再び戻った静寂の中でページをめくるローの視界の片隅で、
シオンが棚から本を選んでいる様子が見て取れる。
最初は本棚の前で何やら迷っていたシオンだったが、しばらくすると気になるものを見つけたらしかった。
これで本当に静かになったと本に視線を落としたローだったが、
ちょっとした違和感を覚えて再度シオンの方に視線を向ける。
違和感の正体はすぐにわかった。
ここから見えるだけでも、シオンのめくっている本には文章が存在していないのだ。
文章の白黒のコントラストの代わりに目に飛び込んできたのは、
等間隔で並ぶ色鮮やかなものーおそらく、写真だ。
「……シオン、お前今何を読んでるんだ?」
「アルバムです」
気になってシオンに問えば、ふつうに想像通りの応えが返ってきた。
「……よくそんなもの見つけたな」
写真なんてものは、海賊に身を投じてからは1度も撮っていない気がする。
おぼろげに記憶にあるのは、せいぜい旗揚げ前のこと。
残っていたことも奇跡だが、見つけたというのも同じくらい奇跡に近いことのように思えた。
「私、人の隠した物を見つけるのって結構得意なんですよ」
「自慢げに言われてもな。得意なことが良いこととは限らないだろうが」
皮肉を込めて言ったが、シオンの耳には届いていないらしい。
「ふふ、ペボちゃんの小さい頃ってかわいい。私の部屋にあるぬいぐるみみたい」
「お前そんなもの持ってたのか」
「ペンギンさんがくれたんです。あまりにも部屋が寂しいからって」
「……へぇ」
呆れながらもシオンが楽しそうにページを捲るのを眺めていれば、
いきなりある写真を見てシオンから悲鳴にも似た声が上がった。
「うわぁ、ペンギンさんもキャスケットさんも若い!可愛い!!
こんな頃からロー船長たちって仲良かったんですか?」
「まぁな。腐れ縁的なところもあるが」
「へーそうなんですか」
「……もういいだろ、とりあえずアルバムをこっちに渡せ」
アルバムを片手にはしゃぐシオンに向けてそう言い放てば、不服そうな顔と出会った。
「嫌です」
「嫌です、じゃねぇ。渡せ」
「……どうしてもですか」
「どうしてもだ」
「……」
「シオン」
「……はい」
反論は受け付けないと暗に含めて強く名前を呼べば、シオンはしぶしぶながらも頷いた。
「ロー船長ってば、融通が利かないんだから」
ぶつぶつと文句を口にしているが、シオンは以外に聞き分けがいい。
その証拠にそれ以上忠告や催促をする必要もなく、アルバムを閉じてみせた。
が、その直後。
「あっ」と何かしら嫌な予感を覚える声が聞こえたかと思うと、
シオンの体が前のめりに倒れていく様が飛び込んできた。
2週間に1話更新企画第3弾。
12.7.6 tarot