囮大作戦
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「久しぶりの島だ~」と、意気揚々と街に繰り出してナツミは上機嫌で買い物をしていた。
さて次はどこに行こうかなと辺りをきょろきょろとしていたらー
にゅっといきなりどこからか腕が現れた。
……この腕、どこかで見たことがある
と思っている間に口を塞がれ、路地裏に引きずり込まれる。
ちらりと見えた入れ墨が、一瞬で該当人物をはじき出した。
「ロー船長。いったい何なんですか?」
口を塞いでいた手をひっぺがし、ナツミは憤りのこもった視線を送る。
「いいから静かにしてろ」
いきなり人を捕まえといてその態度はどうなんだと噛みつこうとしたナツミだったが、
何やら通りが騒がしいことに気づいてそちらへと意識を向ける。
「相手は2億の懸賞金がかかっている。気を抜くな!」
「はっ!」
身を隠している路地裏のすぐそこで展開された会話。
慌ただしく走り回る海軍の制服の人々。それが示唆するものはー
「……2億の懸賞金って、ロー船長のことですよね」
「まぁな」
「ロー船長。私なら1人で大丈夫ですので、さっさとここから出てって下さい」
このままいたら自分の身が危険にされされることは必須だ。
海軍と一戦を交えることにでもなれば、買い物ライフさえ終わりを告げることになる。
「嫌だ」
「私も嫌です。相手の狙いは明らかにロー船長ですので、
人を巻き込まずに囮になって、大事な船員をちゃっちゃか逃がして下さい」
「誰が大事な船員だ」
「私です」
そう即答したら、ロー船長は鼻で笑ってきた。
「むしろお前が囮になれ、ナツミ」
「断固として拒否します。1分も経たずに血祭りに上げられて終わりです」
情けないと言われようが、2億の首と知ってもなお、
追っていく海兵の方たちとまともにやり合えるとは到底思えない。
「1分もあれば、逃げる時間は十分だ」
「鬼ですか!」
「おい、いたぞあそこだ!」
「ちっ見つかったか」
「ロー船長がうだうだと話してるから、
私まで見つかっちゃったじゃないですか! 責任とって下さいよ!」
逃げようにもロー船長にがっしりと捕まっているがために、それは適わない。
どうしようかと思案している間にも、徐々に周りを囲まれていく。
そしてーついにぐるりと半円上に囲まれ、穏便な突破が難しい局面に追い込まれていた。
これはもう成るように成るしかないなと、腹を括ったナツミは海兵の面々に向き直る。
が、何かしら漂っている雰囲気が無駄に緊張していることに妙な違和感を覚えて、
ナツミは首を傾げた。
直後。
武器を構える音がして、一斉に刃がこちらに向けられた。
「トラファルガー・ロー。その娘を放せ」
「……」
「……」
「もう1度言う、大人しくその娘を放せ」
海軍の不思議な要求にナツミは思わずロー船長を仰ぎ見た。
思案顔のロー船長と目があったと思った次の瞬間には、
ナツミの首になぜか刃物が突きつけられていた。
しかも、それはよく見ればナツミがいつも携帯しているもの。
(ちょっ、ローせんちょ)
(いいからちょっと黙ってろ)
小声でそう指示されたら、その通りに口をつぐむしかない。
この先の展開がどうなるかハラハラしながら見ていれば、
再度、海軍側から声があがった。
「その娘を放せ、トラファルガー」
「お前等がおとなしくいかせてくれるってんなら考えてもいいけどな」
「くっ、なんて卑怯な」
(あんなこと言われてますけど)
(言いたいだけ言わせとけ)
どうやら、海兵の方々は何やら勘違いをしているらしい。
ということが、ようやくナツミにもわかってきた。
娘=ナツミ
つまり、今自分は極悪人に捕まっている
哀れな一般市民という位置づけで解釈がされているということらしい。
それならば、やることは一つだ。
「それ以上近づくんじゃねぇぞ」
「助けて下さい!」
「無駄口叩くな。切るぞ」
「ほら、目の前の善良な市民を守れなくて何が海軍ですか。
この極悪人から早く解放して下さい」
海軍の意識を向けようと、ナツミは叫ぶ。
「確かに、市民の1人すら守れなきゃ、海軍の恥以外の何ものでもないかもなァ。
ま、相手が俺なら仕方ないか」
「仕方なくないですよ! ほら、海賊にこんな風に言われたままでいいんですか?」
ただ、ロー船長といつものように掛け合いをしていたら、
だんだんと海兵さんたちの目つきが鋭くなってきた。
何だか、嫌な感じで。
ちょっと不味いだろうかと思っていると、上からため息が降ってきた。
「……ナツミ、喋りすぎだ」
「人質はともかく、トラファルガーは逃がすな! 必ず捕らえろ!」
「人質はともかくってどういうことですか! それでもあなたたちは海軍ですか!」
ナツミがそう切実に叫ぼうと、もはや後の祭り。
士気もとい怒気が高まった海兵たちには届かない。
「かかれ!!」
「無視ですか! 良い度胸にもほどがあるじゃないですか!」
「ナツミ、どうやら人質はもう関係なさそうだな」
「そのようですね」
一斉に向かってくる海兵の姿からは、もう人質など眼中にないように見えた。
けれど、一人だけナツミに向けて手を差しだして助けようとする海兵さんの姿があった。
「おい! こっちだ!」
「おぉ、まともな海兵さんが」
若干の感動を覚えつつ、
ナツミは海兵さんがのばしてきた手を取ってロー船長から離れる。
「大丈夫か」
「はい、何とかー」
大丈夫ですと返そうとしたナツミの目の前で、なぜか海兵さんの姿が崩れ落ちた。
「はい?」
何が起こったか理解するよりも先に、
再び見慣れた入れ墨のはいった腕に捕り元の景色に早変わり。
「誰がこいつに触れて良いと言った?」
ナツミの頭上に低い声が降り注いだ。
目の前には必死でこちらに手をのばしている、手傷を負った海兵さんの姿がある。
「ぐっ、トラファルガー。その娘を」
「はっ、離すのはてめぇだ、ROOM」
「ちょっ、ロー船長」
急に機嫌を悪くしたロー船長を止めるすべはナツミには残されていない。
し、ロー船長の腕の中にいる以上自分に被害はないとわかってはいる。
それでも、自分を助けてくれようとした海兵に
殺気が向けられているのはどうにも気持ちのいいものではない。
「シャンブルズ」
その声で、すべての景色が一変する。
「私の買い物ライフがぁ」というナツミの声は、海兵たちの悲鳴と叫び声で消されてしまった。
「なんで大通りであんな大技をつかっちゃうんですか」
「振り切れたんだ。何の文句があるんだ?」
「それはそうですけど……そもそもあそこでロー船長に捕まらなければ、
私は巻き込まれなくても済んだんじゃないですかね」
「さぁな」
「横暴ですね、相変わらず」
「海賊だからな」
きっぱりと言い切ったロー船長に蹴りを入れたくなったとしても、
咎められることはないはずだ。
実際に蹴るのは今は難しいが、いつか一発蹴りをいれられるようになりたいと切実に思う。
「あっベポちゃんだ」
「……お前も相変わらずマイペースだな」
なんと言われようと、ベポちゃんが前に現れたら飛びつきたくなるのだから仕方がない。
ベポちゃんに飛びつけば、当たり前のように受け止めてくれるのがまたたまらない。
「海軍がいたみたいだけど、大丈夫だった?」
「何とかね」
ロー船長が人を巻き込んだせいで酷い目にあったことは、
本人がいないときに思いっきり愚痴ろうと思います。
「ペンギン、ログは?」
「溜まっている。いつでも出航できるぞ」
「海軍の追っ手が来ないうちにさっさと出たい。船に戻るぞ」
「だってさ、ベポちゃん」
この島への滞在はここまでのようだ。非常に納得できないところは多々あれど、
一応船長なローの決定ならば従う他はない。
ベポちゃんにくっついたまま、ナツミは船に向かった。
ナツミとベポの後ろから、ローとペンギンがゆったりと続く。
「全く、何で毎回面倒ごとが起きるんだろうな」
まるで人事のように言うローに、ペンギンは小さく笑いながら応えた。
「……ローが騒ぎを起こさなければ、もっとゆっくりできたんじゃないのか?」
「あぁ?」
自覚があるのかないのか分からないが、
今回の島の出航が早まる原因を作り出したのは、明らかにロー だろう。
「ナツミが関わると厄介ごとを起こす癖をいい加減に直した方が良い。
さっきは人質として、ナツミは動いただけだろう?
それに、お前ならあれくらいの人数に囲まれたところで能力を使わずに脱出くらいできたはずだ」
「俺の船員に許可もなく触れた輩に、少し灸を据えてやっただけだ。それより、ペンギン」
「ん?」
「それだけ詳しいってことは近くで見てたんだよなぁ?」
「……さぁな」
事実、実はものすごく近くで見ていた。が、加勢しようと動く前に
楽しそうな状況になったので傍観していたら、ローがいきなり暴れ出したのだ。
加勢に加わらなかったのではない、加われなかったのだ。
だから、ペンギン自身には何も非はないーと思われる。
「キャプテン早く、早く!」
「ペンギンさんも急いで下さい。何やら後ろで嫌な砂埃があがってます」
「だそうだ、ロー」
「ちっ、ペンギン後で覚えとけよ」
「気が向いたらな」
前を行く2人にせかされ、
ローとペンギンはそんなやりとりをしながら船に向けて足を速めたのだった。
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「32323」の鏡にて、キリ番リクエストを頂きました、ナツミ様への捧げものです。
ナツミ様、いかがでしたでしょうか。遅くなってしまって本当に本当にすみませんでした。
なかなか書く機会が減っていた中で書いたものですので、
リクエストの内容にしっかり応えられているかかなり怪しいのですが……。
ですが、せっかくリクエストを頂きましたので、無事にナツミ様の元へ届けさせていただければーと思います。
ナツミ様お待たせして本当に申し訳ありませんでした。
どうぞ、懲りずにまた遊びに来ていただけたらと心から祈っております。
こちらはナツミ様のみお持ち帰り可となっております。
ナツミ様、リクエストありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします!!
11.12.11 tarot
12.6.24 修正。