誘いの手
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久しぶりに同業者と出くわし、ハートの海賊団一行は嬉々として戦局に飛び込んでいった。
なつみも一応戦闘員なため、その惨禍に加わっていた。
のだがー
猛烈な痛みに襲われ、なつみはその場に崩れ落ちた。
ただ剣先がかすっただけだというのに、傷口が異常に熱い。
歯を食いしばりながら見上げれば、勝ち誇ったような笑みを浮かべる男と目があった。
その男の持つ剣先から、パタリとなつみの血が滴り落ちる。
そして、血が床に落ちた瞬間ー蒸気が上がった。
唖然としてその状況を眺めていたが、瞬時になぜ自分が動けなくなったのかを悟った。
「毒を使うなんて人、久しぶりに見ましたよ」
「ちょこまか動く奴には最適だろ?」
男の憎たらしいほどの笑顔を、今すぐにでも消し去ってやりたい衝動に駆られた。
けれど悲しいかな、体は欠片も動いてはくれない。
「その、ようで」
たった一言さえも、途切れ途切れにしか紡げない。
「じわじわ苦しむのは辛ぇだろうから、
せめてもの情けで留めをさしてやる。ありがたく思いな」
そう有り難くもないことを吐き出した男の背後に、黒い影が近づく。
気力をかき集め、完全に背後を無防備状態に曝した男を見てなつみは笑った。
「そう、ですね。感謝してますよ」
「はっそりゃ良かった」
「私にすぐ留めをささなかったその軽率さには」
男が倒れる様がスローモーションで映り、
どうやら自分の推測は間違っていなかったことが証明される。
「苦しむのは嫌だろうが、俺は優しくないからな。
せいぜい苦しみが長引かないことを祈っとけ」
先ほどの男よりも物騒なセリフが耳に届く。
が、もはや体は限界を迎えていたようだ。
ただ、完全に意識を失う前に、長刀を持つ人物のシルエットが見えた気がしなくもないが、
如何せん視界が霞んでよく見えなかった。
ぐったりとして意識を飛ばしたなつみを抱え、ローは戦局から抜け出していた。
それを邪魔しようとした輩は片手で凪払い、躊躇なく踏み倒して行く。
だんだんと血の気を失っていくなつみの顔色に、若干の焦りを覚える。
と同時に、敵方に対して沸き上がるのは憤りの感情。
「ペンギン、後は頼んだ。情け容赦なく潰しておけ」
戦局を抜け出す間際に発した言葉は、柄にもなく怒気に溢れていた。
目を覚ませば、そこには綺麗な花畑と静かに流れゆく川がー
広がってはいなかった。
どうやら自分はあの後無事に救出されたらしい。
ぼーっとした頭とぼやける視界で見渡すが、
灯りがベッド横のスタンドライトのみしかないために周りの様子はよく分からなかった。
がしかし、痛みを嫌でも感じるところを見ると、どうやら現実であることは間違いないようだ。
「……熱い、し」
苦労しながら寝返りをうちつつ、そう呟いた時だった。
「起きたのか」
すぐ近くで聞こえる呟きの方に何とか首だけ動かして見れば、
暗がりに浮かび上がるふわふわ帽子。
「……ロー船長?」
息苦しさを感じつつも呼び掛けると、
なつみの額にロー船長のものと思われる手がそっと置かれた。
「また熱が出てきたみたいだな」
「熱?」
額からひんやりとした感触が遠ざかるのを少し寂しく思いながら、
ぼんやりとした思考を何とか働かせようと試みる。
「毒にやられたんだ。覚えてないのか?」
眉をひそめて聞いてくるロー船長に対し、なつみは「そうでしたっけ?」と首を傾げた。
そう言われてみれば、確かにどこぞの輩に
毒仕込みのナイフで斬りつけられたような気がする。うん。
「……敵さん方は?」
「とっくに海の底だ。全く、毎回毎回危うい道歩きやがって。
回収する身にもなってみろ。お前が起きるまで誰が面倒を看ると思ってんだ、なつみ」
「ロー船長、です」
「分かってんならいい。次倒れても回収しねぇからそのつもりでいろよ」
「肝に命じておきます」
いやぁ全くもって揺るぎない事実を告げられたら、次から放置宣言をされても何も言えない。
けど、何だかんだ言っても、結局のところロー船長は優しいのだ。
その証拠にー
「でも、無理はするなよ」
そう言って心配そうな表情を向けてくるのだから。
「うぃ」と小さく頷いてみせたなつみの髪に、ロー船長の大きな手が優しく触れる。
「今回までは許してやる。だから、これ以上俺の手を患わさないようにさっさと治せ」
「今回までは」そう言ってベッドの傍を離れようとしないロー船長を見て、
なつみは布団に顔を隠して笑った。
そして、あやすように優しく触れるロー船長の手に誘われ、 なつみはゆっくりと目を閉じ、
眠気に身を委ねたのだった。
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「23456」という見事な階段でキリ番リクエストを頂きました、なつみ様への捧げものです。
なつみ様、いかがでしたでしょうか。色々な事が重なりまして、
リクエストを頂いてから半年も経ってしまいました……。 本当に申し訳ないです。
さらにご期待にちゃんと応えられているのかが非常に心配です。
ですが、せっかくなので無事になつみ様の元へ納めて頂けたらーと思います。
なつみ様お待たせして本当に申し訳ありませんでした。
こんなものでよろしければ、どうぞお納めください!
こちらはなつみ様のみお持ち帰り可となっております。
なつみ様、これからもどうぞよろしくお願いします!!
10.11.23 tarot