失態
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「何か用ですか?」
と疑問を投げかけてすぐに、ペンギンさんの手に妙な袋が握られていることに気づいた。
シオンの視線の先に気づいたのか、
ペンギンさんは手に持っていた妙な袋を投げて寄越してきた。
着地点はシオンの膝の上。
どすっという重みとともに、何やら非常に固い物体が足にあたった。
「届け物だ」
ロー船長のような不敵な笑みを浮かべるペンギンさんを訝しみながら、
シオンは恐る恐る袋を覗き込んだ。
「あ゛」
中に入っていた物品を見て、シオンは驚愕とした。
「柄は悪いが親切な輩が届けにきてくれた。礼はちゃんとしておいたから安心しろ」
「……ありがとうございました」
袋の中からまごうことなき自分の気に入りの武器を取り出し、胸に抱え込む。
一体どのような礼を返したのかが少し気になったが、
それよりも自分の武器が戻ってきたことの方が大事だ。
それに、知らない方が身の為な気がするので、思考から強制排除する。
「あぁそれから」
武器を抱えたまま動かずにいると、ペンギンさんからさらに言葉が続けられた。
「『しばらくは部屋から出ずに反省しとけ』と、ローから伝達が来てる。
指示通りに部屋で大人しくしてるんだな」
「……はい」
全くどこまでこの人達は優しいのだろうか。
何の追求もせずに、ただ静かにしっかりと支えてくれる。
「ありがとうございます」
「謹慎処分で喜ぶ奴はいないだろう」
「そう言いたかったんですから、それでいいじゃないですか!」
腕組みをして笑うペンギンさんに向けて白熊ぬいぐるみを投げるが、軽々とキャッチされてしまった。
「それだけ元気があれば問題ないな」
そう言ってぬいぐるみを投げ返されたシオンは、慌てながらも何とかそれを抱え込んだ。
「からかう相手がいなくて、ローが不機嫌なんだ。
早く謹慎が解けるようにさっさと治すんだな」
紡がれた意味深な言葉について問いただそうとしたシオンだったが、
すでにペンギンさんは部屋を出るところだった。
言うだけいって早々に引き上げるあたりはペンギンさんらしいというか、
要領がいいというかー何かズルい、うん。
何て自分の考えに1人納得して頷き、ごろりと再びベッドに寝転んだがー
「あぁそれからもう1つ、ローからの伝言だ」
思い出したように振り返ったペンギンさんの言葉で、シオンはがばりと起き上がった。
「……何ですか?」
ちらりとペンギンさんを見上げるが、
帽子を目深にかぶっているせいでその表情を窺い知ることはできない。
軋む体が横になることを訴えても、
その訴えを無視してシオンは姿勢を正しペンギンさんの言葉を待った。
その様子を見てか、ペンギンさんは先ほどいた位置まで戻ってきてー
突然シオンの肩を後ろへ押してきた。
まさかペンギンさんがそんな行動をとるとは露ほども思っていなかったシオンは、
抵抗する間もなくベッドへと体を沈める。
「痛っ」
勢いよく倒れ込んだせいで、潜んでいた痛みが全身を駆け巡り思わず呻く。
けれどそんなことはお構いなしに、そのままペンギンさんが 覆い被さってこようとするものだから、
さすがのシオンも焦って声を上げる。
「ちょっ、ペンギンさ」
近づいてくる影に焦りを募らせるが、痛みで体が動かずどうすることもできない。
思わず目をつむったシオンの耳に、ペンギンさんのものと思われる息がかかった。
「ー無茶しすぎだ、馬鹿……だそうだ」
囁かれた言葉に目を見開けば、意地悪そうな笑みを浮かべたペンギンさんと目が合った。
からかわれたと気づいてすぐに蹴りを放ったが、残念ながら空を切るだけ。
「心配しただろうが、馬鹿。まぁ意訳すればそんな感じだろうな」
「何で馬鹿が意訳でもくっついてるんですか?」
「そのままの意味だからだろう? ま、今はとにかく謹慎が解けるまで大人しくしてろ」
「……うぃ」
言い返せずに渋々頷いたシオンを残して、ペンギンさんは今度こそ本当に部屋を出ていった。
シオンの部屋から出たペンギンは、壁にもたれ掛かる人物を見て苦笑いを浮かべた。
「心配なら中に入ったらどうだ?」
「いや、いい。俺に隠しておきたいらしいしな。それにどうせすぐに眠るだろ。
気丈に振る舞ってたが、かなり身体に限界がきてたみたいだからな」
「……そうだな」
先ほどのシオンの様子を思い出し、ペンギンは静かに同意した。
そしてシオンの部屋を後にしようと扉から一歩離れたが、
その場から動こうとしないローに気づき足を止める。
「……戻らないのか?」
「しばらく、ここにいる。先に戻ってろ」
「素直じゃないな」
「何か言ったか?」
「いいや。ただ、今度は自分が謹慎するはめにならないようにだけは気をつけろよ」
「あぁ」
きっとこのまま、ローは静かに夜を越すのだろう。
ペンギンは、シオンの部屋の扉を守るようにして
立ったまま目を閉じたローの様子に溜め息を1つ零してその場を離れた。
「……早いところシオンには復帰してもらわないとな」
戻る途中、ベポが枕を抱えてシオンの部屋へ向かうのを見て、思わずそう零す。
そして、自室に戻って二人分の毛布を抱えると、再びシオンの部屋へと向かったのだった。
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一週間に1話更新企画第七弾。
11.7.23 tarot