失態
名前の登録はこちらから↓
本棚全体の夢小説設定※名前を登録してから閲覧したい小説を選んで下さい。
未登録の場合は「坂上 シオン」と表示されます。
今のところ、苗字はほとんど使われておりませんが……。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ごめん、遅くなった」
手には適当なお店で購入したお菓子を抱え、シオンはベポちゃんに走り寄った。
ロー船長が難しい顔をしてジトリと見てくることは、この際見なかったことにしてしまいたい。
せっかく色々取り繕ってきたのにもう気づかれてしまったのか。
機嫌を伺うようにロー船長の様子を見てみるが、さっぱりと表情が読みとることができない。
どうしたものかとシオンが考えあぐねていると、
さまよっていたはずの自分の視線がある一点でピタリと止まった。
止まったというよりも、射るようなロー船長の鋭い双眸に射竦められて
動けなくなったという方が正しいかもしれない。
ロー船長の口が開いていくのがスローモーションのように映り、
何も話すなと願っても無情にも耳に声が届いてしまう。
「シオン」
その鋭い眼光とは裏腹に、名前を呼ぶ声は淡々としていた。
が、眼光鋭く淡々と呼ばれたらかなり怖い。
それでもまさか聞かなかったフリをするわけにもいかない。
何せ視線が合ってしまっているのだから。
「何かあったのか?」
鋭い視線と淡々とした口調はそのままに、
それでいて何の変哲もない風を装われた質問がぶつけられた。
そんな質問をぶつけてくるくらいなのだから、ロー船長の中できっと答えは出ているのだろう。
それでも訊ねてくる真意を心底知りたいと思った。
けれどまさか馬鹿正直に、
「実は賞金稼ぎっぽい人たちとお友達になってました」
などと話せるわけもない。
わざわざ何もなかったかのように体裁を調えてきたというのに、
自らそれを棒に振るような真似はしたくない。
し、するつもりもない。
でなければ、あんな危険きわまりない行動に出たりはしなかったのだから。
知られてもいいと思っていれば、のほほんと助けが来るのを待っていたことだろう。
その方が安全でいて確実なのだから。
それでもそうしなかったのは、自分なりの理由がある。
決して譲ることのできない理由が。
だから、
「何もありませんでした」
そう返すしかないのだ。
たとえそれが、偽りだとしても。
ロー船長は眼光をスッと細めて、一言「そうか」と零した。
どう見ても納得したとは思えない表情をしているけれど、返ってきたのはただの相槌にも似た短い応え。
まだ何か言われるかと身構えていたシオンだったが、予想に反してロー船長はそれ以上何も言わなかった。
それどころか、さっさと歩き出してしまう始末だ。
慌ててその背中を追いかけるも、酷使し続けてしまった体では追いつくのもままならない。
途中でそれに気づいたのか、ロー船長が奇跡的に足を止めた。
その間にシオンは何とかロー達の元へと辿り着く。
突き刺さる視線を愛想笑いを浮かべてごまかそうとしたけれど、ロー船長に通用するはずもなく。
「ベポ、シオンを担いでこい」
との指示に、ベポちゃんが2つ返事で了承して早々にシオンはベポちゃんに担がれた。
「あの、自分で歩けるんですけど」
「お前に合わせて歩くのが面倒だ」
ざっくりと反論を反論で返され、シオンは二の句を告げずに黙り込んだ。
全くもってその通りなのだから仕方がない。
どうやら身体が本調子ではないことをすっかり見抜かれてしまっているようだ。
それでも、表面上は気づかない振りをしてくれている。
「……ロー船長にも優しさの欠片があったんだなぁ」
ベポちゃんの素敵毛皮に埋もれながら、シオンはしみじみとした感慨に耽ったのだった。
10.9.24 tarot