真夜中の攻防
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何となく嫌な予感はしていた。
でもそんな予感は、当たっても全然嬉しくない。
時刻は恐らく真夜中を回った辺りだろう。
普段なら絶対に目を覚まさない時間帯。
暗闇に包まれる部屋で、シオンは身体に違和感を感じて目を覚ました。
「……お腹、痛い」
夕方辺りから怪しいとは思っていたけれど、
下腹部のズキョズキョという痛みで元々あった疑いがさらに深いものになった。
重い身体を引きずってトイレへ入れば、もう確定。
「生理きちゃったぁ……」
痛みに顔をゆがめながら、シオンは泣きそうな声で呟いた。
「……最っ悪」
絞り出すようにそれだけ口にして、シオンは再び身体を引きずって部屋に戻った。
そのまま倒れ込むようにベッドへ身を投げる。
増してきた痛みをやり過ごそうとゴロゴロと転がったけれど、意味なし。
お腹を抱えて丸まってもー痛みは増すばかりだ。
何で夜中に痛み出すか分からない。
しかもこういう時に限って、痛みがひどかったりするものだから余計にたちが悪い。
このままでは寝るに寝られないことに、今までの経験上でわかっている。
痛み止めを飲んだところで効くまでに時間はかかるし、痛みが退くという保証はない。
けれど、気休めでも飲まないよりはマシな気がする。
そう思って、シオンは机の引き出しから薬を取り出した。
これで多少は痛みが和らぐと気を抜きかけて、端と気づく。
水が、ない。
元々倉庫だった部屋をこぢんまりとした自室に変えたこの部屋は、調理場からは少々離れている。
普段ならそんなに遠いと思わない距離でも、今の自分の状態では話が違ってくる。
調理場までの道のりを思い、一瞬水なしでいこうかと思った。
が、すぐにその考えを打ち消した。水なしで薬を呑むのはさすがに辛い。
というか、無理。でも薬は呑みたい。
そんな風に薬を片手に悩んでいたら、だんだん涙目になってきた。
ヤバい、痛すぎる。
横になっていても薬は呑めない、痛みも引かないのなら、頑張って調理場まで行った方がいい。
多分。
もしかしたら、動いた方が痛みが気にならないかもしれないし。
そう思ったシオンは、意を決して自室を出た。
寝入っているみんなを起こさないように極力音を殺しながら、調理場へと向かう。
痛みのことはあまり考えないようにして、ただひたすらに前進することに集中した。
あと少し、あと少し
そうやって自分を誤魔化しながら、少しずつ調理場へと近づいていく。
動いたことが功を奏したのか、さほど激しい痛みに襲われることはなくなっていた。
だから、無意識のうちに気を抜いてしまっていたのかもしれない。
「―っ!」
目指していた場所が目に入ってきた瞬間、シオンは息を詰まらせて膝をついた。
今まで潜んでいた痛みが一気に押し寄せてきたかのような、激しい痛み。
もうそこに調理場の扉は見えているのに、しゃがみ込んだまま動けない。
痛みで声を出すこともできず、唯一できることは襲ってくる痛みにただ耐えることだけ。
誰、かー
無駄だと思いながらも、シオンは心の中で助けを求めた。
10.2.21 tarot