ハロウィン
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「ロー船長、どこにいるんだろう」
甲板で繰り広げられる宴を抜けたシオンは、船内を探索していた。
「どうしてもイタズラをしないと気がすまない!」という思いは探しているうちに薄れてきていたのだが、
せっかくだから小さなイタズラだけでも……という思いはあった。
「ロー船長―」
ちょっと間抜けだなと思いながらも探し人の名を呼べば
「何か用か?」
と、真後ろから声をかけられ、シオンは飛びあがるほど驚いてしまった。
「で、何の用だったんだ?」
「別に用というほどのことではなかったんですけど」
とりあえず甲板が見下ろせる位置に移動し、ローと並んで座ってみた。
様子をちょくちょくうかがってはみたが、さっぱりとイタズラを仕掛けるタイミングが訪れない。
今日のシオンのポケットには、いろいろなものが仕込まれている。
タバスコやクラッカーや作り物のねずみなど、そりゃもういろいろと。
しかし、まだ今のところどれも使う段階には至っていない。
こんなことならベポちゃんだけにでも仕掛ければよかったな。
全くと言っていいほど隙が見えないローに、シオンのイタズラ心は砕かれていく。
「ロー船長、手を出してください」
「断る」
「即答ですか」
正面から突破しようとしても、すぐに打ち砕かれてしまう。
「ロー船長の馬鹿」
そう言って、シオンは俯いた。
俯いた拍子にぽたりと、透明な雫が床に落ちて飛び散った。
「は?」
ローは目の前の光景を疑った。視界には俯いて涙を零すシオンが映っている。
普段の様子からしても、こいつが泣くなんてところを見たことは一度たりともない。
だから、余計に目の前の光景が信じられなかった。
……いったい何だっていうんだ
わざわざ宴の席を離れて探しに来て、なんでここで泣く?
ローの脳内で思考がフル回転し、可能性がありそうな事柄を弾き出していく。
1.誰かにセクハラされた
そんなことで泣くような奴じゃない。
そもそも、そんなことをするような物好きがこの船に乗っているとは思えない。
2.ベポに嫌われた
それは、ない。多分。
3.狙っていた菓子を取られた
あり得なくもないが、あれほどの量の菓子がそう簡単になくなるとは思えない。
ベポ以外は酒のつまみにしている程度だし、最悪厨房に行って頼めば作ってくれる。
それより何より、シオンが菓子の争奪戦で負けるわけがない。
どれだけ考えても、シオンがここでいきなり泣き出す理由が見つからなかった。
ちらりと様子を伺えば、先ほどと変わらず俯いているシオンがー
「……ん?」
なんとなく違和感を感じて、ローは動きを止めた。
あぁ、そういうことか。
ストンと、状況が理解できた。
理解できた状況に、心のどこかでほっとしている自分がいた。
まぁ、そう思ったところで気取られるようなことは決してしないが。
「……いつまで嘘泣きを続ける気だ?」
一瞬でも安堵したなんてことはおくびにも出さずにそっけなく言うと、シオンがゆっくりと顔を上げた。
その顔には、涙が流れたと思えるような痕があった。けれど、目は少しも充血していない。
「……残念、ばれちゃいましたか」
残念と言いながらも楽しそうに、シオンは顔に残っていた水滴を拭き取った。
「びっくりしましたか?」
目薬を片手に、シオンは満足げな表情を浮かべていた。
全てはノリでやったことだったが、思ったよりも良い感じのリアクションが見られたので少々舞い上がってしまう。
「わざわざ仕込んできたのか」
「いえ、突発的な行動ですよ」
だってロー船長から直接お菓子をもらっていないし。
とか、勝手に理由をこじつけるまでもなく、今日は「ハロウィン」という立派な大義名分がある。
「『トリック・オア・トリート』ですよ、ロー船長」
「……言われた覚えがないな」
「言ったじゃないですか。一時間ほど前に」
「まだ続いてたのか、あれは」
「もちろんですよ。別に
『普段はロー船長に仕掛けられてばっかりだから、今日こそ仕掛ける側に回ってやる』
とか思ってないですから、全然」
「ずいぶんと楽しそうだな」
「だから、そんなことないですって」
否定しながらも笑いを堪え切れていないシオンに、ローはそれ以上何も言えなかった。
代わりと言うかのように、盛大な溜息をついてはいたが。
『トリック・オア・トリート』
お菓子をくれないとイタズラするぞ、か。
全く、厄介な行事があったもんだ。
先ほどの「嘘泣き」を思い出し、ローの口元には苦笑いが浮かんだ。
それでも宴の席ではしゃいでいるシオンが視界に映ると、ふっと口元を緩ませて楽しげに手元の酒を煽った。
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なんて言うか、これはハロウィンなのだろうか……。とか書いててちょっと思いました。
まぁ何となく「ハロウィン」な気分で書いてたので、ハロウィンものです(多分)。
少しずつこんな感じで気持ちだけでも「イベント」ものをやっていきたいと思います。
できれば(笑)
09.10.30 tarot