夢現
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「……またあいつは何をやらかしたんだろうな」
双眼鏡をそっと下ろし、ペンギンは深いため息をついた。
休憩すらあいつにはトラブルの素らしい。
ため息を吐き出したペンギンの視線の先には、
不機嫌オーラ全開のローとさっき休憩に入ったばかりのシオンの姿があった。
「あぁ、私の休憩時間がぁ……」
心なしか視界が霞んできた気がする。
せっかくの休憩時間がまさか悪夢の時間になるとは。人生って理不尽だ。
いや違う、ローが理不尽なんだ。そりゃもう救いようがないくらいに。
「人の話を聞くのに考え事とはいい度胸だな」
「ひいぃぃぃ!すみませんでした!」
シオンは現在、不機嫌オーラ全開のローに見下ろされている身である。
船長室に入るのは最初に忍び込んだ時以来。
よってシオンの中では、船長室=首を斬られた場所というなんとも物騒な印象がある。
そのせいか、シオンはもう帰りたいという気持ちで一杯だった。
そもそもなぜこんな展開になっているのかが理解出来ない。
「ロー船長、そろそろお怒りになっている理由を聞かせて頂きたいのですが」
怒っているということは分かっているので、ひたすらに低姿勢で訊ねてみる。
「……わからねェのか?」
「えーと……わからないんですけど」
睨まれても困る。
怒られるようなことはしていなー
ふと、1つ引っかかることが頭をよぎった。
「お前、あいつについていこうとしてただろ」
不機嫌なローは確かそう言っていた。
ということは、私がお兄さんについていこうとしたから怒っているのだろうか?
んー他に考えられないし、多分そういうことなのだろう。 よくわからないけれど。
「そんなについて行ったら駄目でしたか?」
「人攫いとかだったらどうする気だ?」
「ちゃんと観察してから判断したんですけど」
「油断させて連れ込むのは常套手段だ」
「む」
ローの言っていることにも一理ある。
一理あるけれども、だからってあんな邪険に追い払わなくてもいいのにとも思う。
「……不満そうだな」
「だって」
もうちょっとでスイーツ三昧だったのに。
とか、未練がましく思ってしまう。
実際にそういう展開になっていたのかは、今となっては分からないのだけれど。
「久しぶりにスイーツが食べれると思ったのに……」
「……太りてェのか?」
「失礼な。甘味を味わいたいというこの気持ちがわからないんですか?」
「知らない輩にたかろうっていうのは理解不能だ」
「それ、海賊の船長が言いますか?」
「おれたちは媚びを売って奪おうなんざ考えねェからな」
「媚びなんて売ってないんですけど」
「あぁ?」
「ひいぃぃぃ!」
ローはいい加減自分の眼力の威力を知るべきだ。
竦み上がったシオンに追い討ちをかけるように、ローが詰め寄ってきた。
必死の思いで後退を試みるも、無情にも壁によって阻まれる。
ひくつきながら視線を上げれば、そこにはローのドアップな顔。
ダンッという大きな音が、耳のすぐ傍で響いた。
09.10.13 tarot