夏なひと時
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「……暑い」
夏島の領域に入ったのか、ここ数日続いている猛暑に14はすっかり参ってしまっていた。
それはベポちゃんも同様のようで、当人はすでにノビきっている。
おまけにだらしなく舌を出して、現在形で横に転がっていた。
「うぅ、もう無理」
暑さに耐えきれなくなって、14 はすでにキャミに短パンの格好だ。
それなのに暑さの地獄からは一向に解放される気配がない。
「ベポちゃん?」
暑さを紛らわそうと隣に声をかけてみても、もはや応えは返ってこない。
代わりに聞こえるのは、「あー」だの「うー」だのという呻き声。
「これだから夏は嫌いだ!」
と叫んだところで、暑さが和らぐわけもなく。
せめて水分を取らなければ、このままだと確実に干上がってしまう。
茹だるような暑さの中、2人は這うように食堂へと移動を開始した。
「冷たい~」
シャクシャクと、スプーンで山を崩す度に涼しげな音が耳に届く。
「やっぱり暑い時はこれだよね、うん」
暑さにへばっている14を見かねて、料理長がかき氷を出してくれたのだ。
ベポちゃんはかき氷を見るなり
「器の中に顔を突っ込む」
という偉業を成し遂げ、料理長に呆れられていた。
気持ちは分からないでもないけれど、わざわざ細かく削ってくれた氷に突っ込まなくてもいいのにと思う。
料理長お手製のレモンシロップをかけて氷を口に運べば、口の中で甘く冷たく溶けてゆく。
「お前ら、良いもん食ってんなァ」
団扇を片手にローが食堂に入ってきた。
さすがに暑いのか、パーカーを肘の辺りまで捲っている。
「ベポは何やってんだ?」
「暑さに耐えきれなかったみたいです」
身動き一つとらず皿に顔を突っ込んでいれば、確かに何をやっているのか疑問を抱く光景だ。
しかも氷はすでに水に戻りつつあり、このまま放っておけば息が出来なくなるに違いない。
「かき氷、だよな?」
「そうです。ベポちゃんのは面影もなくなってますけど」
氷のおかげで多少なりとも元気が出てきたのか、ベポちゃんの耳がピクピクと動き始めていた。
「ロー船長も食べますか?料理長に頼めば作ってくれますよ?」
「そこにあるだろ?」
「これは私の分です」
14がとられまいと氷の入った器を抱え込む。
それを横目に見ながら、ローは手近にあった椅子に腰掛けた。
「早く食べないと溶けちまうぞ」
団扇を片手に、ローはテーブルに肘をついてこちらを見ている。
威嚇体制に入っていた14 だったが、かき氷が溶けてしまっては元も子もない。
ローに目を光らせながらも、14 はかき氷の器から離れた。
口元にニヤリとした笑みを浮かべているローの様子は、非常に嫌な予感を感じさせられる。
でも、暑さの前ではそれはほんの些細なこと。
シャクシャクと再びかき氷の山にスプーンを入れれば、忘却の彼方へと追いやられた。
「音だけでも涼しげだな」
「そうですね。音だけ聞いてて下さい」
「音だけ、か」
「私の分ですから。そんなに見てもあげません」
そう宣言して、14 は若干溶けかかっている氷をスプーンですくった。
シロップがたっぷりと染み込んだそれは、瞬く間に喉へと滑り落ちてくる。
順調に食べ進めていた14だったがー
「いったぁ」
冷たいモノを一気に食べたせいで、キーンと頭が痛み出した。
こめかみを押さえて痛みをやり過ごし、さてもうひと口と顔を上げた。
のだけれどー
「あれ?」
あるはずの場所に有るべきモノがない。
ギギギっと首を横に向ければ、涼しい顔をしてかき氷を口にかき込んでいるローの姿。
「甘ェな」
「ロー船長!それ私の!」
かき氷を頬張るローの手元にある器を見て、14は悲鳴を上げた。
見ればすでに器の中身は空に近い。
「私のかき氷がぁ……」
恨まし気な視線をローに送ると、ずいっとスプーンが目の前に刺し出された。
「最後のひと口、いるか?」
「いるに決まって」
睨むように見上げると、目の前には真っ白な世界が広がっていた。
「アイ」
パクっとひと口。
それは本当に突然のこと。
「おいしい~!」
と声をあげたのは、さっきまで器に顔を突っ込んでいたベポちゃんで。
「あー!!」
と14 が叫んでしまったのはある意味必然的。
驚くベポちゃんを押しのけ、14 がローに詰め寄ってしまったのも致し方ない。
「い、今のって本当に」
「最後のひと口だったな」
ローも、ベポちゃんの行動には虚を突かれていたらしい。
スプーンと私を見比べ、気の抜けた声で決定打を放った。
「私のかき氷が…最後のひと口だったのに……」
14 が崩れるように座り込むと、ベポちゃんはようやく状況を把握したらしい。
「14、ご、ごめん」
「いいよ、全然気にしてないから」
あわあわしているベポちゃんの両頬を引っ張り、微笑む。
(全然気にしてるよ)
(全然気にしてるじゃねェか)
「また作ってもらえばいいだろ?」
ローはポンポンと私の頭を軽く叩いて、そんなことを言った。
だから
「じゃあ、料理長に頼んできてくれますよね?」
普段より若干声を低くして、黒い笑顔を2人に向けた。
「……ベポ」
「アイアイ!キャプテン!」
引きつった声でベポちゃんが応え、猛スピードで調理場へ走っていった。
正確には走らせたのだけれど、そんなことは知ったこっちゃない。
「早く来い来い、かき氷~」
14 は待ちきれずにスプーンを持って、テーブルにスタンバイした。
「ったく、14には敵わねェな」
顔を隠すように帽子を前にずらし、ローは小さくそう呟いた。
隠れきらなかった口元には、とても楽しげな笑みが浮かんでいた。
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14様へのお礼夢です。
「夏らしく、かき氷やアイスに関したロー夢」ということだったので、こんなになりました。
もう一つ選択肢を頂いていたのですが、それはまた別の機会に使わせていただこうかなーと。
ちょうど夏真っ盛りだしということもあり、今回は「かき氷」ネタですww
14様のみお持ち帰り可となっております。
14様ありがとうございました。こんなんですが、よかったらもらってやって下さい。
これからもどうぞよろしくお願いします!!
09.7.20 tarot