初戦闘
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「シオン!」
「!!」
ベポがシオンの元へ駆けつけるよりも早く、
「ROOM」
後ろから届く、低い声。
敵方を包み込むように、半透明なサークルが形成される。
サークルへ向けて刀で一閃が放たれれば、中に転がるは個々にバラけた体のパーツ。
「シャンブルズ」
あちこちから上がる悲鳴。
「気を楽にしろ。すぐに終わる」
ローの言葉通り、それは一瞬の出来事だった。
「キャプテンが暴れてる」
シオンの元へ走り寄ったベポは、サークル内でシャッフルされている輩をみてそんな感想を持った。
ベポだけでなく誰もがそう思うほど、ローは容赦なく敵を無効化している。
「シオン、今のうちに」
「う、うん」
シオンは刀を鞘に戻し、側に来てくれたベポちゃんの手をとった。
強張った体を半ばベポちゃんに引きずられるように動かし、後方に下がる。
「何やってんだ、シオン?」
責めるようないじるような、小馬鹿にするような口調のローの声が、シオンの耳に届く。
「うぅ」
「このまま海に飛び込んでしまえ!!」 と言われた方がまだマシだ。てか、もう斬り伏せて欲しい。
「さっさと残りの奴らを蹴散らしてこい」
「はいぃぃぃ」
ヤバい、後がめちゃくちゃ怖い。
やっぱりさっき一緒に技に巻き込まれておけばよかった。
「ここからはおれも参戦する。いい加減飽きてきた。遊びは終わりだ。とっとと片すぞ」
「アイアイ、キャプテン! シオン行ける?」
「行ける!ここで行かなきゃ命が危ない!」
「よしっ、じゃあ行くよ!」
「アイアイ、ベポちゃん!」
半ばヤケになりながら、シオンは敵に突っ込んでいく。
先ほどのローの攻撃で、結構な数が片付いていた。
残ったのは全体の四分の一程度。
ローが本格的に参戦するまでもなく、数分後には1人を残して敵は全て床に沈んだ。
「……まだやるか?」
ニィッと口元をゆがめるローの表情に、1人意識が残ってしまった方はザッと顔色を無くした。
「お前に選択肢を与えてやる。そこに転がってる奴らの仲間入りをするか、見逃されるか。
どっちがいい?」
ローに刀を突きつけられ、息も絶え絶えな男は掠れた悲鳴をあげた。
そしてー
「み、見逃してくれ」
涙目になって提示された選択肢を選んだ。
ローの口元がさらに恐ろしく歪められる。
「……そうか」
男から突きつけていた刀を離して、ローが楽しそうに振り向く。
「ペンギン、手の空いてる奴を連れて積み荷を運び込め」
「わかった」
「ベポ、その辺に転がってる奴らをどかせ。邪魔だ」
「アイアイ、キャプテン!」
「ちょっと待ってくれ」
不穏な指示に、男が待ったをかける。
けれど、
「まさかタダで見逃してもらえるとでも思ったか?甘いな」
「!!」
限界まで目を見開いていらっしゃる方には悪いが、ローと取引をして無事に済むわけがない。
ご愁傷様、だ。
提示された選択肢。
どちらを選んだとしても、結果はそう変わらない。
それなのに選択肢を提示したのは、ローの遊びみたいなものだ…多分。
海賊事情はいまいちわからないけれど、奪い奪われる世界においては、敗者や弱者に選べる道などたかがしれている。
そう、たかがしれているのだ。
だからー
「シオン、お前はこっちで反省会だ」
ペンギンさん達について行こうとしていたシオンが、ローに名指しで呼び止められた場合。
逃れる術はーない。
09.8.10 tarot