全てから　この世界から
逃げることが出来るなら
逃げることが卑怯でないなら
私が逃げることを許してください
もう　こんな世界には

――――――――　イ　タ　ク　ナ　イ




～Prologue～






ここは、日本のとある街中の家。
その家に住んでいる少女は夏休みを過ごしていた。


今日は七月三十日。
少女は机に向かって、本を読んでいた。


「ぐはぁ！…セブ萌え～vV」


この少女、名は、ヒレン アスカ。
商業高校の２年生。
成績は可もなく不可もなく。

アスカはハリー･ポッターと不死鳥の騎士団を読んで、騒いでいた。
なぜなら……半分腐女子だからだ。
アスカの家族である妹や父親からオタクと言われているが、本人はそれを思いっきり否定している。
だが、内心影響は受けていると思ってはいる。

チャンチャチャチャチャ～♪
急にアスカの携帯から懐かしい中学校の校歌の着メロが流れた。


「あれ？順さんからだ……」


アスカは中学以来の友達、順華からのメールを開いた。


―――――――――
やあ！アスカ♪
おひさ～
今ヒマなら、うち来ない？
つか、今すぐ来い
ハリポタ全巻持ってきてね！
―――――――――

「拒否権なしかよ…。しかも、大荷物な事言って」


アスカは心底めんどくさいとでも言うようなため息を吐いた。
アスカは黒い少し大きなショルダーバックにハリポタ全巻を入れ、彼女のところへ行くことにした。
行かなければ、明日はないと思うからだ。
ある意味、彼女はアスカの中では怖い存在でもあった。


「んじゃ、お母さん。順さんのとこに行って来る」

「気をつけてね」

「は～い」


アスカは、灰色のTシャツにお気に入りの短パンの格好で家を出た。
カバンを自転車のかごに入れて、彼女の家へと自転車をこぎ始めた。

刻一刻と迫り来る、神の悪戯は災厄と言うものとなってこの少女に振りかかった。


「あ゛～、あっつい。めんどくせぇ」


アスカは自転車に乗って、彼女の家へと向かっていた。
彼女の家まであと少しというとき、大型トラックがアスカの後ろから突っ込んできた。
アスカは避ける暇もなく、猛スピードで突っ込んできたトラックに撥ねられた。


「(ああ…こんな簡単に死んじゃうんだ)」


意識が途切れる前に見えたのは、青い空と目を閉じたときの自分の瞼が日に照らせれた赤い血の色。
耳に残るのは、甲高いトラックの急ブレーキの音だった。