-Ⅵ-

夢主設定

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~未来から来た少女~





シオンがポツリと零す様に呟いた“神隠し”という言葉に、それが不可解な失踪事件に使われていたことを思い出した。
彼女の故郷である日本では、“神に攫われる”ことを主に指す言葉だ。

人ではなく、“人ならざる存在”に誘拐されたと思い至ったからこそ、先ほどの質問に答えられなかったのだろう。


「……君が日本にいた時の西暦と日付は?」


咄嗟に、そう聞いた。
こういった不可解な失踪後に戻ってきた人は、失踪していた時の記憶がなかったりするため、日付などの感覚がズレていたりする場合がある。


「……二月、六日…………」


そして思った通り、シオンが覚えている最後の日付は私が知る日付とまったく違っていた。
だが、西暦だけは黙り込んだままだ。

西暦を言えない、ということは、“今”よりも未来か、それとも西暦の数え方が違う世界から来てしまったのか。
前者はまだしも、後者はあまりにも非現実的すぎる。
どちらも、非現実的なのに変わりはないが。

今よりも過去から来たにしては、何か違う気がした。


「………今よりも“未来”から、来たんだね」


そう鎌を掛けてみれば、彼女はビクッと体を揺らして驚いた顔で私を見た。
その反応が、“今よりも未来”から来てしまったことを如実に表している。


「どうして……?」


何故気付いたのかと言いたげな顔で問うシオンに、私は考えたことを口にする。
もちろん、前者の方の考えだ。


「君が西暦を言わない時点で、未来から来たのだと推測できたよ。今よりも過去であるならば、西暦を言うことに躊躇う必要はない。近い過去であるならば尚更だ。だが、君は言えなかった……。まあ、半分鎌を掛けたところもあるけどね」


そう苦笑しながら締めくくれば、シオンはちょっと驚いたように少しばかり目を開いて、それから小さく笑った。

彼女はこんな風に笑うのかと、思わず思ってしまった。

 
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