～回想～





始まりは、学校の帰り。
その日は雨で、私は迎えを待っている時だった……。


――――――――――
―――――――
―――――


「遅い……」


私は心の中でいつもより遅すぎやしないか？！、と文句を叫んでからため息を吐いた。
息は白い煙のように空に昇り、すぐに消えてしまう。

寒さに耐えながら、傘を差して雨の中待っていた。

車が次々に来ては、迎え待ちの他の生徒を乗せて帰っていく。

そんな光景を恨めしげに見ながら、冷えきっている手に息を吐きかけた。

バタンッ、と真横にあった車の扉が閉まる音がした。

チラリと目をやれば、後部座席の窓ガラスから運転席と助手席に人がいるのが見えた。
ああ、出るんだな、と思って、邪魔にならないように避けようとした。
バックしてくることはないだろうと思いつつも、万が一のことを考えて。

その時だった。


「っ！？」


本当にバックしてきたのだ。
しかも、手慣れたようにスピードを出して。
後方の確認すらもせずに。

瞬間、身体はぶつかった衝撃を受けて、まるで本を閉じるかのように身体がしなりながら倒れる。
車の下に巻き込まれた足に引きずられるように、しなった上半身が速度を上げて頭を地面へと叩きつける。

一瞬の出来事。
それなのに、何故か視界はスローモーションのようにゆっくりと動いているように見える。
走馬灯が見えれば面白かったのだが、それもないらしく。

ならばせめてと、視界が血に染まるのを見ないようにと目を閉じた―――のだが、いつまでたっても衝撃が来ない。

不思議に思って目を開いてみると、そこは見慣れない街中の広場らしき場所だった。

それに何故だが、ベンチに座っている。


「……何処ここ？」


どことなくレトロな雰囲気が漂う街中の広場だ。
近くには、大きな建物がある。
よく見ると、白いレンガ造りだ。

ぐるりと見渡してみると、周りの建物にもなんとなく見覚えがあった。

そして、その既視感があるあり得ない考えに辿り着く。


「まさか……トリップした？！」


その見覚えがあるレンガ造りの建物たちは、最近本編をクリアした“魔神の笛”で見たものとそっくりだったのだ。