今日もまた、バルクヘッドが壊してくれた機械を手に修理をしていた。

全く、何だってこうも毎回毎回機械や機材を壊されて修理する羽目になるのか…。

小さく呆れた溜息を吐いた時、アイセンサーが端の方で何か動く物を捉えた。
そちらへ視線を落とせば、私の足元をうろうろしていたらしいショウコと目が合った。


「……何か用か？」


私がそう問いかければ、ショウコは首を横に振り、私の足元を再び歩き回り始めた。
何が楽しいのか理解に苦しむが、これではうっかり動く事すらできない。


「おい、ショウコ。私の足元でうろうろしないでくれ。気が散るし、危ないし、邪魔だ」


足元を歩き回るショウコにそう言うと、彼女はピタリと止まり、私を無表情で見上げた。

彼女とはパートナーであるのだが、如何せんあの無表情には慣れない。
オプティマスと似通った物ではあるのだが、残念ながら私は彼女の過去を良く知らない。
だからこそ、あの無表情がどういった感情を押し殺したものなのか見当もつかないのだ。

オプティマスは、なんとなく分かる様だが……。


「……じゃあ、少しだけ手の上に乗せて」


ショウコの突然の要件に、回路が止まりかけた。

何故、そこで手の上に乗せてになるのか。
普通は、大人しく離れるはずだろう？！

口には出さなかったが、その疑問が回路の中で算出された。
だが、それを言った所でショウコの考えが変わる筈もないので、仕方なく彼女が乗れるように手を出してやった。

ショウコが乗ったのを確認してから、彼女を持ち上げるともう少し上、と更に要求が飛んできた。

ますます訳が分からないまま、言われた通りに少し上へと上げれば、ショウコが急に目の前の視界から消えた。
それと同時に、口元に何か柔らかい物が触れる感触がして、突然の事に柄にもなく驚いた。


「……な、何を……？！」

「ラチェットの成分が足りなかったから、充電したの。もう大丈夫だから、降ろしてもいいよ」


ショウコの言葉を、最後まで理解する事が出来なかった。