闇に揺れたJack-o'-Lantern
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Trick or Treat!
交わされる合言葉
飾られたランタン
お菓子の甘い匂い
私、今日だけ…
「闇に揺れたJack-o'-Lantern」
十月三十一日。
十月末のイギリス……いや、今や全世界的に有名なイベント―ハロウィーン。
私といえば、あまりハロウィーンだからと言って何かをするわけでもない国、日本からこの学校に通っているため、周りの子達と違いテンションに差が出る。
今回のハロウィーンは土曜日だったためか、校長先生が仮装、悪戯なんでも無礼講じゃ!なんて言わなければ、今日も去年と同じように過ぎたのかもしれない。
ハア……、とため息一つ。
私の横を駆け抜けた同い年の生徒達はそれぞれ仮装をしていたり、手に悪戯道具を持っていた。
みんな、笑顔だった。
私だけ、ではないが、こうして制服でいるのは少ないだろう。
規則に違反することなく制服を着て、ハロウィーンなのに悪戯して面白がったり、お菓子をもらうこともしない。
図書館にいてもうるさく感じた私は、今こうして悪戯の戦場と化している廊下をうまい具合に通り抜ける。
友達のいない私には、静けさがほしかった。
楽しげに笑う声が、今ほど耳障りだと感じたことはない。
ふと気がついたら、いつの間にか更なる地下へ続く螺旋階段の前へと来ていた。
そのことに一人自嘲の笑みを溢すと、静寂……とまでは行かないが静かな螺旋階段の入り口に腰掛ける。
近くに飾られていたジャック・オ・ランタンを手元に引き寄せて明かり代わりし、持っていた分厚い本を開く。
時折感じる風が運ぶ匂いは、湿った匂いで、冬の入り口に入りかけているこの時期に、年中うっすらと肌寒いこの地下の廊下は外にいるのとなんら変わりはなかった。
冷え切ってしまった手に息を吹きかけ、体を少し縮込ませる。
揺らめくジャック・オ・ランタンの光は、仄かだが暖かい。
「こんな所で、何をしているのかね?Ms.ヒレン」
カツ、と靴音を鳴らし、私の背後に立った黒い影を纏うスネイプ教授。
一瞬、吸血鬼かと思うほど、怪しげな雰囲気が漂っている。
そう思ったのは、ハロウィーンのせいだろう、と頭の中で自己完結し、教授の質問に答えるため口を開く。
「……見ての通り、本を読んでいます、スネイプ教授」
知らずに冷え切っていた体に、声が思うように出ず、震えて少し擦れた声が闇に包まれた廊下に響いた。
「……こんな所で読まずとも、談話室や図書館で読めばよかろう」
「何処へ行っても、騒がしいので……」
栞を挟み、本を閉じて立ち上がる。
杖を振って、ジャック・オ・ランタンを元の場所へと戻した。
「私は通行の邪魔になるので、失礼します」
軽く一礼し、その場を去ろうとすると、後ろから声が掛かる。
交わされる合言葉
飾られたランタン
お菓子の甘い匂い
私、今日だけ…
「闇に揺れたJack-o'-Lantern」
十月三十一日。
十月末のイギリス……いや、今や全世界的に有名なイベント―ハロウィーン。
私といえば、あまりハロウィーンだからと言って何かをするわけでもない国、日本からこの学校に通っているため、周りの子達と違いテンションに差が出る。
今回のハロウィーンは土曜日だったためか、校長先生が仮装、悪戯なんでも無礼講じゃ!なんて言わなければ、今日も去年と同じように過ぎたのかもしれない。
ハア……、とため息一つ。
私の横を駆け抜けた同い年の生徒達はそれぞれ仮装をしていたり、手に悪戯道具を持っていた。
みんな、笑顔だった。
私だけ、ではないが、こうして制服でいるのは少ないだろう。
規則に違反することなく制服を着て、ハロウィーンなのに悪戯して面白がったり、お菓子をもらうこともしない。
図書館にいてもうるさく感じた私は、今こうして悪戯の戦場と化している廊下をうまい具合に通り抜ける。
友達のいない私には、静けさがほしかった。
楽しげに笑う声が、今ほど耳障りだと感じたことはない。
ふと気がついたら、いつの間にか更なる地下へ続く螺旋階段の前へと来ていた。
そのことに一人自嘲の笑みを溢すと、静寂……とまでは行かないが静かな螺旋階段の入り口に腰掛ける。
近くに飾られていたジャック・オ・ランタンを手元に引き寄せて明かり代わりし、持っていた分厚い本を開く。
時折感じる風が運ぶ匂いは、湿った匂いで、冬の入り口に入りかけているこの時期に、年中うっすらと肌寒いこの地下の廊下は外にいるのとなんら変わりはなかった。
冷え切ってしまった手に息を吹きかけ、体を少し縮込ませる。
揺らめくジャック・オ・ランタンの光は、仄かだが暖かい。
「こんな所で、何をしているのかね?Ms.ヒレン」
カツ、と靴音を鳴らし、私の背後に立った黒い影を纏うスネイプ教授。
一瞬、吸血鬼かと思うほど、怪しげな雰囲気が漂っている。
そう思ったのは、ハロウィーンのせいだろう、と頭の中で自己完結し、教授の質問に答えるため口を開く。
「……見ての通り、本を読んでいます、スネイプ教授」
知らずに冷え切っていた体に、声が思うように出ず、震えて少し擦れた声が闇に包まれた廊下に響いた。
「……こんな所で読まずとも、談話室や図書館で読めばよかろう」
「何処へ行っても、騒がしいので……」
栞を挟み、本を閉じて立ち上がる。
杖を振って、ジャック・オ・ランタンを元の場所へと戻した。
「私は通行の邪魔になるので、失礼します」
軽く一礼し、その場を去ろうとすると、後ろから声が掛かる。
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