4 どきどき
「まあ、いろいろあったんだよ。そんなたいしたことないから大丈夫。」
「そっかー。そうよね。私も担任になって困ることいっぱいあるある。生徒の進路とか人間関係とか。」
「そこらへん、難しいよな。」
勇気は人思いである。
一人のために真剣に悩む。
そこが教師に向いているような気がする。
「いまだって、生徒のなかにね、一人ぼっちの子がいるのよー。」
勝手に話が進んでいる。
一応、耳を傾けてみようか。
「その子、性格もすっごく良くて優しい子なんだけど、ちょっと体に支障があってね。そのせいで妙にクラスメートに避けられてるっていうか。」
「あー、偏見ってやつ?」
「そう、それ。まぁ、最近はそういうのもなくなってるとは思うんだけど。私がちょっといろいろ裏で仕組んだから(笑)。 でもね、やっぱりその子元気がないのよ。」
「へー。」
なんか妙に波さんと似ているなぁ。
ま、気のせいかな。
「その子病院通いなんだけど、最近は精神科に通ってるみたいなの。」
………。
「あのさ、その子の体の支障って左手?」
勇気は驚いた顔をしていた。
「そうよ!あたり!なんでわかったの!?」
やっぱり、波さんだ。