4 どきどき
僕は鞄の中から波さんの偽手を取り出し 彼女に渡した。
彼女は大事そうにその偽手を左手にはめていた。
さっきから気になっていたことがある
波さんの家からは
他の人がいる気配がない
ご家族の方はいないのだろうか
「そういえば、ご家族の方はいらっしゃらないんですか?」
波さんの 顔が 一瞬
暗くなった気がする
でもそれは
ほんの一瞬のことだった
気のせいか…
すぐに波さんは普段の顔になった。
「私 一人暮らしなんです」
「へー!一人暮らしなんですか。ご飯とか大丈夫なんですか?」
「あ、えと 大丈夫です…
じゃなくて!!!!話をそらそうとしないでください!!!!
何でストーカーしたんですか!?」
話をそらそうとしたのがばれてしまった。