ちぐはぐ
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浮気調査の対象相手が会っていたのは主だった。
「⋯まじかよ」
銀時は電柱の影から数メートル先で楽しく話している男女を眺めていた。目線の先には、旦那が浮気しているかもと一昨日素行調査を依頼された対象の男と共に名前がいる。
しかも二人はアクセサリーショップの前で立ち止まると仲良さげに店の中へと消えていった。
「⋯⋯まじかよ」
よりにもよって浮気相手と思しき女が名前だと判明し、いつもより激しく頭を搔いた銀時はコンビニに入りジャンプを手に持ちながら窓越しにその店の入口を見つめていた。
なんて説明すりゃいいんだよ。おたくの旦那さんはしっかり浮気してました、うちの従業員と。ってか?無理だろどう考えても。
内容など全く頭に入ることのないジャンプをぺらぺらとめくりながら思考を巡らせる銀時だったが、ふと、そもそも本当に浮気なのか?と疑問を抱いた。
本当はただの知り合いなだけで、たまたま目的地が同じで、たまたま一緒に入店しただけなのでは?と。
銀時は男が家を出る瞬間から尾行をしていた訳ではない。仕事を終えてから家に着くまでの行動を把握しようと頃合いを見て付近へ足を運んだところ、二人を目撃してしまったのだ。
「アイツに限って⋯」
相手は既婚者だぞ、そう思っていると店の扉が開き疑惑の二人が外へ出てきた。男の手には小さな紙袋が握られており、二人とも相変わらず仲良さげに楽しく微笑み合っている。
その後すぐ名前はへこりと頭を下げると手を振り男とは別の方へと歩き出した。今すぐにでも名前を追いたい気持ちを抑えながら男の尾行を優先した銀時は、男がそのまま家へ帰ったのを見届けるといつもより忙しない足取りで万事屋へと帰った。
「おかえり〜」
居間に行くとソファで雑誌を眺めている名前はこちらを向くことなく言葉をかけてきた。その様子におかしなところは何もなく至って普段通りの名前は雑誌からめぼしい服を見つけてはページに小さく折り目を付けていた。
「⋯お前今日どこいってたの」
自分用の椅子へと腰を下ろした銀時は、あくまで普通を装いながら遠回しに今日の出来事を聞いてみると
「でーと」
潔いくらいに堂々と答える名前に一瞬目眩がした。なんて報告すりゃあいいんだよ。依頼の時点で少し気が強そうだった女性を思うと報告次第ではヤバそうな展開を想像し半ば諦めの銀時は、その気怠げな目で名前を見つめると諭すように言葉をかけた。
「⋯さすがにお前いくらなんでも既婚者はまじぃだろ」
「何が?」
銀時の言葉に未だ顔を雑誌に向けたままの名前はあくまで恍けるつもりなのか明確な言葉を使わずに言葉を返す。
「その男だよ男、お前相手がどういうやつかわかってんの?」
「ん?⋯あぁ奥さんいるよ」
ていうか買い物してたの知ってて聞いたの?とようやく銀時へと視線を向けた名前は既婚者であるとわかっていて、それがどうしたとでも言いそうな様子で言葉を返す態度にさすがの銀時も痺れを切らしいくらか声音を強めた。
「お前さァ、さすがの俺でもねーわ有り得ねーわ、何お前そういうやつタイプだったわけ?」
「は?何が?」
「浮気疑われてる男の相手がまさかお前だったとかまじ、ちょっとお前自分で説明してくんね?あの強そうな奥さんにうちの従業員がスイマセンとか俺言えねーわ」
「⋯え?待っ」
「つーかお前男は顔とか言ってたじゃねーか、アイツどう見」
「待ってって!!!」
流れるように言葉を続ける銀時を遮り一際声を上げた名前はタンっと銀時のデスクへ両手をつくと「もっぺん言って」と言葉を繰り返すよう伝えた。
「だからアイツどう見たって男前って顔じゃねえだろ」
「そこじゃなくてもっと前」
「あ?既婚者相手とかさすがの俺でも有り得ねーわって」
「その次!」
「んだよお前めんどくせーな!男の浮気相手おめーかよって!」
「⋯⋯その浮気って何?なんのこと?」
「は?」
いやここまで来て恍けんの?と気の抜けた声を出した銀時に、どういうこと?と説明を求める名前はどうやら本当に何のことかわかっていないという顔をしていた。
いやさっきこいつは相手が奥さんいるの知ってるとか言ってなかったか?ならどういうことって一体どういうことだよ何に対してのどういうことだよ。
「⋯え?私浮気してるって思われてんの?」
「お前っつーかお前の相手っつーか、いやお前もなんだけど」
漸く話を理解したらしい名前は目を見開いたかと思えば顎に指を添えて何かを考えてみたり青ざめてみたりと忙しなく表情を変えると、まっすぐに銀時へと顔を向けた。
「一回私の話黙って聞いて欲しいんだけど」
「まぁいいけどよ」
「まず私浮気してない」
「してるやつは大抵そうやっ」
「黙ってって」
いい?と有無を言わせない目で銀時を黙らせた名前は、相手はよく行く店の店員で、通ううちに親しくなったと言う。また近いうちに奥さんの誕生日があるらしく日頃の感謝を込めてプレゼントをしたいが何を贈ればいいのかわからないと相談を受けた名前は、奥さんがたまに眺めていたというアクセサリーショップに行くことを提案して一緒にプレゼント選びを手伝ったらしい。
「だから今日も、浮気じゃなくて買い物付き合っただけだし」
どうやら自分の勘違いだったと気付いた銀時は深く長く息を吐いて内輪の問題ではないことに一安心し、体を預けるように背もたれに深く寄りかかった。
名前はデスクに寄りかかりながら銀時に顔を向けていた。
「てか浮気疑われてたとか有り得ないって」
「いやあれはどう見てもだろ」
「私これでも男は顔で選ぶタイプなんだけど」
「まずお前が選ぶ側ってイデデおい馬鹿指もげイデデデデデ!」
ぶんぶんと手を振りながら名前を睨む銀時を見てあははと堪える事なく自然に笑うと、銀時の後ろへと移動し窓の外を眺めながら「別にイケメンが好きって訳じゃないし」と呟いた名前の表情は銀時からは見えない。
「何お前びーがすきなの?」
「鏡見てみたら?」
「⋯は?」
2022.7.26
「⋯まじかよ」
銀時は電柱の影から数メートル先で楽しく話している男女を眺めていた。目線の先には、旦那が浮気しているかもと一昨日素行調査を依頼された対象の男と共に名前がいる。
しかも二人はアクセサリーショップの前で立ち止まると仲良さげに店の中へと消えていった。
「⋯⋯まじかよ」
よりにもよって浮気相手と思しき女が名前だと判明し、いつもより激しく頭を搔いた銀時はコンビニに入りジャンプを手に持ちながら窓越しにその店の入口を見つめていた。
なんて説明すりゃいいんだよ。おたくの旦那さんはしっかり浮気してました、うちの従業員と。ってか?無理だろどう考えても。
内容など全く頭に入ることのないジャンプをぺらぺらとめくりながら思考を巡らせる銀時だったが、ふと、そもそも本当に浮気なのか?と疑問を抱いた。
本当はただの知り合いなだけで、たまたま目的地が同じで、たまたま一緒に入店しただけなのでは?と。
銀時は男が家を出る瞬間から尾行をしていた訳ではない。仕事を終えてから家に着くまでの行動を把握しようと頃合いを見て付近へ足を運んだところ、二人を目撃してしまったのだ。
「アイツに限って⋯」
相手は既婚者だぞ、そう思っていると店の扉が開き疑惑の二人が外へ出てきた。男の手には小さな紙袋が握られており、二人とも相変わらず仲良さげに楽しく微笑み合っている。
その後すぐ名前はへこりと頭を下げると手を振り男とは別の方へと歩き出した。今すぐにでも名前を追いたい気持ちを抑えながら男の尾行を優先した銀時は、男がそのまま家へ帰ったのを見届けるといつもより忙しない足取りで万事屋へと帰った。
「おかえり〜」
居間に行くとソファで雑誌を眺めている名前はこちらを向くことなく言葉をかけてきた。その様子におかしなところは何もなく至って普段通りの名前は雑誌からめぼしい服を見つけてはページに小さく折り目を付けていた。
「⋯お前今日どこいってたの」
自分用の椅子へと腰を下ろした銀時は、あくまで普通を装いながら遠回しに今日の出来事を聞いてみると
「でーと」
潔いくらいに堂々と答える名前に一瞬目眩がした。なんて報告すりゃあいいんだよ。依頼の時点で少し気が強そうだった女性を思うと報告次第ではヤバそうな展開を想像し半ば諦めの銀時は、その気怠げな目で名前を見つめると諭すように言葉をかけた。
「⋯さすがにお前いくらなんでも既婚者はまじぃだろ」
「何が?」
銀時の言葉に未だ顔を雑誌に向けたままの名前はあくまで恍けるつもりなのか明確な言葉を使わずに言葉を返す。
「その男だよ男、お前相手がどういうやつかわかってんの?」
「ん?⋯あぁ奥さんいるよ」
ていうか買い物してたの知ってて聞いたの?とようやく銀時へと視線を向けた名前は既婚者であるとわかっていて、それがどうしたとでも言いそうな様子で言葉を返す態度にさすがの銀時も痺れを切らしいくらか声音を強めた。
「お前さァ、さすがの俺でもねーわ有り得ねーわ、何お前そういうやつタイプだったわけ?」
「は?何が?」
「浮気疑われてる男の相手がまさかお前だったとかまじ、ちょっとお前自分で説明してくんね?あの強そうな奥さんにうちの従業員がスイマセンとか俺言えねーわ」
「⋯え?待っ」
「つーかお前男は顔とか言ってたじゃねーか、アイツどう見」
「待ってって!!!」
流れるように言葉を続ける銀時を遮り一際声を上げた名前はタンっと銀時のデスクへ両手をつくと「もっぺん言って」と言葉を繰り返すよう伝えた。
「だからアイツどう見たって男前って顔じゃねえだろ」
「そこじゃなくてもっと前」
「あ?既婚者相手とかさすがの俺でも有り得ねーわって」
「その次!」
「んだよお前めんどくせーな!男の浮気相手おめーかよって!」
「⋯⋯その浮気って何?なんのこと?」
「は?」
いやここまで来て恍けんの?と気の抜けた声を出した銀時に、どういうこと?と説明を求める名前はどうやら本当に何のことかわかっていないという顔をしていた。
いやさっきこいつは相手が奥さんいるの知ってるとか言ってなかったか?ならどういうことって一体どういうことだよ何に対してのどういうことだよ。
「⋯え?私浮気してるって思われてんの?」
「お前っつーかお前の相手っつーか、いやお前もなんだけど」
漸く話を理解したらしい名前は目を見開いたかと思えば顎に指を添えて何かを考えてみたり青ざめてみたりと忙しなく表情を変えると、まっすぐに銀時へと顔を向けた。
「一回私の話黙って聞いて欲しいんだけど」
「まぁいいけどよ」
「まず私浮気してない」
「してるやつは大抵そうやっ」
「黙ってって」
いい?と有無を言わせない目で銀時を黙らせた名前は、相手はよく行く店の店員で、通ううちに親しくなったと言う。また近いうちに奥さんの誕生日があるらしく日頃の感謝を込めてプレゼントをしたいが何を贈ればいいのかわからないと相談を受けた名前は、奥さんがたまに眺めていたというアクセサリーショップに行くことを提案して一緒にプレゼント選びを手伝ったらしい。
「だから今日も、浮気じゃなくて買い物付き合っただけだし」
どうやら自分の勘違いだったと気付いた銀時は深く長く息を吐いて内輪の問題ではないことに一安心し、体を預けるように背もたれに深く寄りかかった。
名前はデスクに寄りかかりながら銀時に顔を向けていた。
「てか浮気疑われてたとか有り得ないって」
「いやあれはどう見てもだろ」
「私これでも男は顔で選ぶタイプなんだけど」
「まずお前が選ぶ側ってイデデおい馬鹿指もげイデデデデデ!」
ぶんぶんと手を振りながら名前を睨む銀時を見てあははと堪える事なく自然に笑うと、銀時の後ろへと移動し窓の外を眺めながら「別にイケメンが好きって訳じゃないし」と呟いた名前の表情は銀時からは見えない。
「何お前びーがすきなの?」
「鏡見てみたら?」
「⋯は?」
2022.7.26
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