看護師、な彼女
名前設定
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「今度は何したの?」
「なに、大したことではない。
道端で躓いたら通りかかったカボチャの馬車にぶつか」
「はいはい、つまりあれやこれやって事ね」
そこそこの怪我を負い入院することになった桂。
設けられた個室の中では桂ともう一人、慣れた手付きで手当をしながら言葉を交わす名前の姿があった。
「はい、これで体温測って」
点滴や怪我の具合を確認しながら名前は胸ポケットに入れてある体温計を桂へ渡した。
暫く渡されたままの体温計を見つめた桂は、わざとらしく咳払いをした。
「わざわざ体温計を使わずとも、熱の有無を確認する手っ取り早い方法があるではないか」
キラキラ音が聞こえてきそうなほど真剣な眼差しで名前を見つめる桂。
名前が顔を向けると、前髪を持ち上げた桂が傷一つない綺麗なおでこを晒していた。
「⋯⋯小太郎?」
「なんだ」
「あなた病人なの」
「言われずともわかっておる」
「わかってないよね?
⋯ほら、早く測って」
ぴちっ、と手元にあるクリップボードで桂のおでこを軽く叩いた名前は布団の上に置かれている体温計を拾い、再び桂へ渡した。
表情こそ変えないものの納得出来ずにいた桂だったが、名前から体温計を受け取ると大人しく脇に挟んだ。
いつもこうだった。
爆撃に巻き込まれたり、爆撃に巻き込まれたり、それから爆撃に巻き込まれたり。
時には桂の意思に関係なく事件に巻き込まれることも多々あったが、入院する程の大怪我をした際にはいつも名前のいる病院にお世話になっていた。
その度に桂の担当をする看護師もまた名前だった。
勿論そんな決まりはないが、誰も桂を担当したがらない、名前は桂が心配、となると必然と結果は決まってくる。
ピピッと体温を知らせる音が鳴る。
「見せて」
何かを言いたげな桂は言われた通り体温計を名前に渡す。
足を怪我した桂は片足を器具で吊られている状態のため自由に動くことができない。
今回ばかりは長い期間をこの病室で過ごすことになりそうだ、と思いながらも、どこかぽかぽかとした感情も確かに感じていた。
「なあ名前」
「なに」
「すまない」
名前が休まない限りは毎日こうして会える嬉しさを感じた反面、互いに顔を合わせる時間の八割はこうして病院だと気付く桂。
申し訳なさから出た言葉だった。
「なによ今更」
「迷惑をかけてばかりいるな、俺は」
「それはそうね」
看護師として働いている名前としては、恋人が患者として職場に通いつめるのは気が気ではない。
けれどいざ仕事外で会おうとすれば、絶望的に時間が噛み合わないのも現実問題として大きく存在していた。
そもそも桂自体そう易々と陽の下を歩ける人物ではない。
名前も理解した上で交際を続けていた。
それだけ桂は、名前の中で大きく大切な存在だった。
「正直こんな大怪我をぽんぽん負ってほしくないの。
小太郎の言うあれやこれやも隠さず言ってほしい。
でも、厚かましい女にはなりたくないの」
「⋯どうやら俺は、名前の優しさに甘えすぎていたようだな」
「そうよ?私って案外いい女なの」
珍しく落ち込んだ様子の桂を
見てふふっと笑う名前。
「私の欠点は、惚れた弱み、ってやつね」
名前はクリップボードを布団の上へ置いた。
ベッドサイドに備わっている手すりと桂の肩へ手を伸ばし、体を支えながら身をかがめ前髪へと唇を落とした。
「あとは退院してからね?桂さん」
布団からクリップボードを拾い上げ病室の扉へ向かう名前。
背中を向ける直前に見えた名前のふわりとした控えめな笑顔。
それだけで桂の表情も明るくなる。
「いずれ全てを話させてくれるか」
「お婆ちゃんになる前にお願いね」
25.7.26
リクエスト〝桂の入院時に担当になるナースさん〟
もはや職場でも顔馴染みなくらいの頻度で担当してそうです。
リクエストありがとうございました!
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