土方誕生日2025
名前設定
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HBD、小さな気付きの主人公と同一です。
午後八時を少し過ぎた頃、喫煙室で煙草を吸っていた土方は漸く終わりが見えてきた書類のことを考えていた。
「⋯⋯」
すると窓の向こう、僅かに距離のある廊下の先で手を振っている名前を見つけた。
名前は次第に近付いてきて喫煙室の扉を開けると、中に入り切ることはなくその場から土方へ話しかけた。
「お疲れ様です!まだお仕事されますか?」
「あぁ」
「お部屋にいます?」
「これ吸ったら戻るとこだ」
「お米好きですか?」
「⋯⋯いやまぁ、あんま米に対して好きとか嫌いとか考えたことはねえが、うめぇとは思う」
それだけ聞くと笑顔で扉を閉めて一礼した名前は、小さく咳き込みながらどこかへ去っていった。
「⋯」
土方はふーっと長く煙を吐き出しながら名前が向かっていった先を暫く見つめ、まだいくらか長さの残る煙草を灰皿へ押し付け部屋へ戻った。
それから暫く部屋で仕事をしていた土方。
ふと耳を澄ますとトツトツと小さな足音が部屋へ近づいてくる。
それは土方がいる部屋の扉の前で止まった。
「土方さんいますか?苗字です」
「?あぁ、ちょっと待ってろ」
扉に落ちる影はとても小さく灯りのせいでふわりと揺れている。
土方は筆を置き扉を開けると、湯気の立つ湯呑みとおにぎりが乗ったお盆を持つ名前が可愛らしい笑顔と共に立っていた。
「これどうぞ」
「⋯お、おう、さんきゅ」
突然の訪問に驚いている土方を見てきょとんとした表情を浮かべる名前は暫くして、ハッとした表情をしながら土方を見上げた。
「も、もしかしてお腹いっぱいですか⋯!?
⋯⋯あっ、たしかに私お米が好きかどうか聞くだけ聞いて、お腹空いてるかは聞かなかったから⋯」
「いいいやいや!んな事ねえから!丁度腹減ってたんだよなあ!」
言葉を続けるにつれ声が小さくなり俯き始めた名前を見て謎の焦りを感じた土方。
けして無理している訳ではなく、本当に小腹が空き始めた頃というのもありお盆を受け取ると名前を部屋の中へ招いた。
ちょこん、と音が聞こえてきそうなほど小さな体をさらに小さくさせ座布団の上で膝を折る名前。
先に座るよう伝えた土方は名前のためのお茶を用意すると静かに机へ置き、自身も定位置へ腰を下ろした。
「すみませんっそんな、私の事は気にせず⋯ありがとうございます」
ぴしっと背筋を伸ばす名前へ小さく笑いながら、気にすんな、と声をかける土方は綺麗な形をしたおにぎりを頬張った。
「⋯どうですか?それ」
「んめぇ」
「やった!最近やっと綺麗なの作れるようになったんです」
にへにへと本当に嬉しそうな笑みを浮かべてお茶を啜る名前。
「そういや苗字、お前こそこんな時間まで何してんだ」
頬に残るおにぎりを飲み込み疑問を投げかけると、名前はぴくりと湯呑みを持つ手を震わせ瞬きを繰り返した。
明らかに動揺している様子に、何かまずいことを聞いたか?と思い返してみても土方には思い当たる節が無い。
二口分ほど欠けたおにぎりを片手にいろいろ考えてしまった土方。
少し間を空けて、名前は少し声を張り「あ、あの!」と土方に声をかけると小さい箱を差し出した。
小さな両手に収まる、見慣れた銘柄の煙草。
「お誕生日って聞いて⋯でも私、土方さんのことまだ全然知らなくって⋯
煙草かマヨネーズかで迷ったんですけど、ならいっそ両方かな〜って⋯」
へへ、と照れながら手を引く名前。
両方。
土方の目の前にある煙草と、ツナマヨが入ったおにぎり。
ツナマヨと言うよりほぼマヨにツナを添えた程度と思うくらい濃いとは感じていたが、その一言で全て納得できた。
「⋯⋯なんで知ってんだよ」
「えっそれは、ほら、お姉様方のトレンドですよ」
「勘弁してくれ⋯」
「でも誕生日って嬉しいですよね?特別感あるし」
「老いるだけだろ」
そう言いつつも、実は少しだけ嬉しく感じていた土方。
名前の言うオネエサマ方に騒がれるのは苦手だが、こうして一対一なら⋯名前となら悪くない、と。
「それで、その⋯」
指先同士を絡めもじもじと何かを言いたげな名前。
更におにぎりを口に含み、文字通り頬を張っている土方は言葉の続きを静かに待った。
「よければ今度、ごはんでも、行きませんか?
⋯その、土方さんのこともっと知りたくて」
だめですか?と大きな瞳で見つめられ喉が詰まりかけた土方は数度咳き込んでしまう。
慌てて立ち上がろうとする名前を手で制しながら呼吸を整え、想像すらしていなかった名前の誘いに年甲斐もなく浮かれてしまう。
「⋯⋯明後日でも、いいか」
「はい!もちろん!」
名前を見れずに顔を逸らしながら返した答えでも、その返答に対しての反応があまりに可愛くて土方の心は緩んだ。
いつの日からかその小さな姿を見かけると目で追うようになっていた。
女性らしい可愛らしさを自然と纏いながらまだまだ不慣れな職場で頑張っているな、と思いつつ、名前に対して抱いている気持ちを素直に受け入れられずにいた。
けれど日々話していく中で素直な感情を込めて反応してくれる様子を見て、きっとこの気持ちは間違いではない、と気付かせてくれるのも確か。
明後日が既に待ち遠しい気持ちでいっぱいな中、久しぶりに満たされた誕生日を迎えることが出来た土方はもう一つのおにぎりへ手を伸ばした。
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