坂田誕生日2024
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HBD、out等の主人公と同一主人公です。
「⋯⋯さん、⋯銀さん!」
ぱたぱたと胸元に感じる軽い衝撃と自分の名を呼ぶ声にうっすらと目を開いた銀時は、目の前にいる名前を視界で確認するなり勢い任せに飛び起きた。
「はっ、おまっ、名前!?今何時だと思っ」
「しー!銀さん!しー!!!静かに!神楽ちゃん起きちゃう!」
だらしない姿勢のまま現状に理解が追い付いていない銀時とは違い、名前は至って冷静に人差し指を口元にかざすと銀時に声を抑えるよう伝えると、柔らかな笑顔を向けながら静かに呟いた。
「今からお外、行きませんか?」
***
さわさわと普段より忙しない脈を感じながら名前に連れられ近くの川辺へ来ると、静かに腰を下ろした名前の横に並ぶよう自身も腰を下ろした銀時。
「最近うんと肌寒くなっちゃいましたね」
膝を抱えながら空を見上げる名前。
その横顔を見つめながら頭の後ろで腕を組み静かに寝そべった銀時は、段々と秋に近付きつつある空気の冷たさを感じ小さなくしゃみをした。
「実は⋯じゃじゃん!これ持ってきたんです!」
ずびびっと鼻をすする銀時の横で鞄から二本の缶ビールを取り出した名前は、そのうちの片方を銀時へ差し出した。
「なんとこれだけじゃなくて⋯⋯じゃん!ちょっと組み合わせ悪いけど」
続けて名前が取り出したのはちょっとお洒落な使い捨て容器に入ったいろんなカットフルーツ。
「今日は特別に寄せといて貰って、持ってきちゃいました」
相変わらずの可愛らしい笑顔で口の中へぶどうを運んだ名前は、おいしっ、と幸せそうに空を眺めている。
なんだこの、まるでカップルみたいな光景。
あれ、俺まだ夢見てるっけ、夢か?これ。
あまりの幸福感に疑いさえ抱き始めた銀時は体を起こすとぎこちなく口角を吊り上げながら名前の名前を呼んだ。
すると視線を銀時に向けリスのように片頬を膨らませた名前が「ん?」と顔を傾げた。
「イ、イヤァ〜⋯俺なんかしたっけな~⋯みたいな」
「え?なんで?」
「⋯急すぎんだろンな時間によ、逆にこえーわ」
ぼりぼりと頭を掻く銀時を静かに見つめる名前は、ぱちぱちと数度大きく瞬きをすると、銀さん、と銀時の名前を呼んだ。
「銀さん、銀さん」
「なんだよ」
「今日何の日か覚えてますか?」
「あ?んな急に言われても日付なんていちいち確認してねえしな」
数日前パチンコに行ったときは珍しく当たって⋯え〜っと確か⋯⋯あ~何日だったっけな。
再度ぼりぼりと手を動かしながら働きの悪い頭で考えても、今日が何日かいまいち思い出せない銀時を横目に、名前は頬張ったフルーツを飲み込むと小さく笑みをこぼした。
「銀さんの誕生日ですよ、今日」
誕生日。
自分の生まれた日にさほど価値など感じていない銀時にとって、自分の誕生日だと言いにこにこと嬉しそうな笑顔を自分へ向ける名前が、とても愛おしく感じた。
「忘れちゃったんですか?まあでも、なんとなく銀さんっぽいっちゃぽいですけど」
「⋯⋯この歳になったら祝われんのも複雑なんだよ」
「そんな寂しいこと言わないでくださいよ!
いくつになってもお祝いしますよ、銀さん、出会ってくれてありがと~って」
ね?と銀時の顔を覗く名前と目が合った銀時は一際大きく跳ねる心臓に気付かないフリをした。
自分のために酒やフルーツを用意して連れ出してくれた名前。
特別感と優越感で自然と普段より火照り始める身体、そんなことわかっているのにアルコールのせいだと自分を騙し、缶ビールを煽りごくごくと喉元へ残りを流し込む銀時。
この冷たい空気を気持ちいいとさえ感じていた銀時の横で、カシャッ、とシャッター音を鳴らした名前は写真を眺めては映り具合を確認するなり小さく眉をひそめた。
「⋯ね、もう1枚撮っていい?」
「なんで1枚目は無断のくせに2枚目は確認とってんだよ」
「いいじゃん!ね、こっちみて銀さん」
そんなことを言われては反射的に顔を背けてしまう銀時と、最初から背けられるとわかっていたのかほとんど顔の映らない銀時の姿をスマホに収めた名前は満足そうに笑顔で写真を眺めていた。
きっと相手が新八や沖田ならこんなタイミングでこんな祝われ方なんてしないだろう、と謎の自信と確信があった銀時。
考えれば考えるほど、勘違いなんかじゃなく少なくとも自分に好意を抱いているのでは?そう思えて仕方なかった。
普段新八から酷い目線を向けられながらも気付けば名前を目で追ってしまっている銀時は、名前に起こされてからずっと落ち着きのない血流を感じながら手を伸ばせばすぐに届く距離にいる名前を意識していた。
「⋯なあ名前」
どうせ誕生日なら、どうせ今日の主役なら、ちょっとくらい贅沢したって罰は当たらないだろう。
「なんですか?」
生きるか死ぬかの瀬戸際で感じる緊張とはまったく別の緊張を胸に抱きながら次の言葉を必死に絞り出そうとする銀時を見つめながら、その小さな口に飲み口を当てとくとくとビールを数口流し込み普段と変わらない様子で次の言葉を待っている名前。
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯えっ、なんですか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯いや、やっぱなんでもねえわ」
「⋯えええ!?すっごい気になっちゃいますよそれは!ちょっと!?」
銀時はたっぷりと時間をかけた結果、たった一言を言い出すことができない自分の不甲斐なさを搔き消すように頭を無造作に掻き始めた。
一方たっぷりと時間をかけられ結局なにもなかった名前は銀時の袖をつんつんと引っ張りながら言葉の続きを急かしているけれど、銀時は絶対に言うもんかと口を硬く閉じたまま。
自分のことをどう思っているのか。
なんでわざわざこんな時間に起こしたのか。
自分は名前のことを⋯⋯。
聞きたい事、言いたい事、何一つ言えないまま喉元につっかえた言葉の端切れを吐き出すように短めの溜息を吐いた銀時。
耳を凝らして漸く聞こえてくような川の音、それくらい静かな空間で名前と二人きりの現状をもっと堪能すべきだとわかっていながら、脳内に浮かんでくるのは恰好のつかない自分の姿ばかり。
ぐるぐると渦巻くどんよりとした気持ちを振り払うため数度頭を左右に振った銀時は、一旦全部を忘れて今この瞬間を大事にしよう、と思い立ちパッと顔を上げた。
「⋯⋯」
顔をあげてすぐに気付くほど、いつからそうしていたのか銀時の目の前にはただじーっと自分を見つめる名前の可愛らしい顔があった。
ぱち、ぱち。
固まったままスローモーションのような動作で数度瞬きをする銀時を見つめながらふわっと笑った名前は、その艶々とした口元を動かし何かを伝えると、地面についた手に力を込めて身を乗り出した。
ほんの一瞬。
外の空気で冷え切った互いの唇が触れ合った、ほんの一瞬。
一方は瞬きすら忘れ動くことなくただただ今起きた出来事を理解しようと必死になりながら思考がショートしかけていて、一方はそんな相手の表情を見つめながら照れくさそうに嬉しそうにへにゃりと笑顔を浮かべ小さく笑っている。
「一番に、言いたくて」
へにゃりと笑みを浮かべたままほんのり赤くなった顔で真っすぐにそう伝えた名前。
そこでようやく、先程口元を動かした名前はただ口元を動かしたのではなく、ちゃんと言葉を発していたのを思い出した銀時。
〝すきです〟
たった四文字。
鮮明に思い出される名前の声で聞こえてきたその言葉。
自分のことをどう思っているのか。
なんでわざわざこんな時間に起こしたのか。
聞きたい事すら聞けなかった銀時の問いへの答えのような言葉を伝えてきた名前。
そんな彼女が浮かべる笑顔を見つめた銀時は、名前の事を今までで一番可愛らしく、一番愛おしく感じた。
「⋯⋯そういうのは普通男が先に言うもんだろーがよ⋯」
「だって銀さんいっつもいっぱいいっぱいで、言ってくれないじゃん」
早い者勝ちです、そう言う名前の悪戯っぽい笑顔さえ今の銀時にとっては最高のプレゼントだった。
名前を思う気持ちが大きすぎた故に精一杯になっていた銀時を、空回りして奇行に走ってしまう時だって少なくなかった銀時を、新八の冷めた目線を向けられていた銀時を、名前はすべてわかっていた。
その全てを理解した銀時は恥ずかしさやそれまで渦巻いていた気持ちを長い溜息と共に吐き出すと、先程言えずに飲み込んだ言葉を名前に伝えた。
2024.10.10
「⋯⋯さん、⋯銀さん!」
ぱたぱたと胸元に感じる軽い衝撃と自分の名を呼ぶ声にうっすらと目を開いた銀時は、目の前にいる名前を視界で確認するなり勢い任せに飛び起きた。
「はっ、おまっ、名前!?今何時だと思っ」
「しー!銀さん!しー!!!静かに!神楽ちゃん起きちゃう!」
だらしない姿勢のまま現状に理解が追い付いていない銀時とは違い、名前は至って冷静に人差し指を口元にかざすと銀時に声を抑えるよう伝えると、柔らかな笑顔を向けながら静かに呟いた。
「今からお外、行きませんか?」
***
さわさわと普段より忙しない脈を感じながら名前に連れられ近くの川辺へ来ると、静かに腰を下ろした名前の横に並ぶよう自身も腰を下ろした銀時。
「最近うんと肌寒くなっちゃいましたね」
膝を抱えながら空を見上げる名前。
その横顔を見つめながら頭の後ろで腕を組み静かに寝そべった銀時は、段々と秋に近付きつつある空気の冷たさを感じ小さなくしゃみをした。
「実は⋯じゃじゃん!これ持ってきたんです!」
ずびびっと鼻をすする銀時の横で鞄から二本の缶ビールを取り出した名前は、そのうちの片方を銀時へ差し出した。
「なんとこれだけじゃなくて⋯⋯じゃん!ちょっと組み合わせ悪いけど」
続けて名前が取り出したのはちょっとお洒落な使い捨て容器に入ったいろんなカットフルーツ。
「今日は特別に寄せといて貰って、持ってきちゃいました」
相変わらずの可愛らしい笑顔で口の中へぶどうを運んだ名前は、おいしっ、と幸せそうに空を眺めている。
なんだこの、まるでカップルみたいな光景。
あれ、俺まだ夢見てるっけ、夢か?これ。
あまりの幸福感に疑いさえ抱き始めた銀時は体を起こすとぎこちなく口角を吊り上げながら名前の名前を呼んだ。
すると視線を銀時に向けリスのように片頬を膨らませた名前が「ん?」と顔を傾げた。
「イ、イヤァ〜⋯俺なんかしたっけな~⋯みたいな」
「え?なんで?」
「⋯急すぎんだろンな時間によ、逆にこえーわ」
ぼりぼりと頭を掻く銀時を静かに見つめる名前は、ぱちぱちと数度大きく瞬きをすると、銀さん、と銀時の名前を呼んだ。
「銀さん、銀さん」
「なんだよ」
「今日何の日か覚えてますか?」
「あ?んな急に言われても日付なんていちいち確認してねえしな」
数日前パチンコに行ったときは珍しく当たって⋯え〜っと確か⋯⋯あ~何日だったっけな。
再度ぼりぼりと手を動かしながら働きの悪い頭で考えても、今日が何日かいまいち思い出せない銀時を横目に、名前は頬張ったフルーツを飲み込むと小さく笑みをこぼした。
「銀さんの誕生日ですよ、今日」
誕生日。
自分の生まれた日にさほど価値など感じていない銀時にとって、自分の誕生日だと言いにこにこと嬉しそうな笑顔を自分へ向ける名前が、とても愛おしく感じた。
「忘れちゃったんですか?まあでも、なんとなく銀さんっぽいっちゃぽいですけど」
「⋯⋯この歳になったら祝われんのも複雑なんだよ」
「そんな寂しいこと言わないでくださいよ!
いくつになってもお祝いしますよ、銀さん、出会ってくれてありがと~って」
ね?と銀時の顔を覗く名前と目が合った銀時は一際大きく跳ねる心臓に気付かないフリをした。
自分のために酒やフルーツを用意して連れ出してくれた名前。
特別感と優越感で自然と普段より火照り始める身体、そんなことわかっているのにアルコールのせいだと自分を騙し、缶ビールを煽りごくごくと喉元へ残りを流し込む銀時。
この冷たい空気を気持ちいいとさえ感じていた銀時の横で、カシャッ、とシャッター音を鳴らした名前は写真を眺めては映り具合を確認するなり小さく眉をひそめた。
「⋯ね、もう1枚撮っていい?」
「なんで1枚目は無断のくせに2枚目は確認とってんだよ」
「いいじゃん!ね、こっちみて銀さん」
そんなことを言われては反射的に顔を背けてしまう銀時と、最初から背けられるとわかっていたのかほとんど顔の映らない銀時の姿をスマホに収めた名前は満足そうに笑顔で写真を眺めていた。
きっと相手が新八や沖田ならこんなタイミングでこんな祝われ方なんてしないだろう、と謎の自信と確信があった銀時。
考えれば考えるほど、勘違いなんかじゃなく少なくとも自分に好意を抱いているのでは?そう思えて仕方なかった。
普段新八から酷い目線を向けられながらも気付けば名前を目で追ってしまっている銀時は、名前に起こされてからずっと落ち着きのない血流を感じながら手を伸ばせばすぐに届く距離にいる名前を意識していた。
「⋯なあ名前」
どうせ誕生日なら、どうせ今日の主役なら、ちょっとくらい贅沢したって罰は当たらないだろう。
「なんですか?」
生きるか死ぬかの瀬戸際で感じる緊張とはまったく別の緊張を胸に抱きながら次の言葉を必死に絞り出そうとする銀時を見つめながら、その小さな口に飲み口を当てとくとくとビールを数口流し込み普段と変わらない様子で次の言葉を待っている名前。
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯えっ、なんですか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯いや、やっぱなんでもねえわ」
「⋯えええ!?すっごい気になっちゃいますよそれは!ちょっと!?」
銀時はたっぷりと時間をかけた結果、たった一言を言い出すことができない自分の不甲斐なさを搔き消すように頭を無造作に掻き始めた。
一方たっぷりと時間をかけられ結局なにもなかった名前は銀時の袖をつんつんと引っ張りながら言葉の続きを急かしているけれど、銀時は絶対に言うもんかと口を硬く閉じたまま。
自分のことをどう思っているのか。
なんでわざわざこんな時間に起こしたのか。
自分は名前のことを⋯⋯。
聞きたい事、言いたい事、何一つ言えないまま喉元につっかえた言葉の端切れを吐き出すように短めの溜息を吐いた銀時。
耳を凝らして漸く聞こえてくような川の音、それくらい静かな空間で名前と二人きりの現状をもっと堪能すべきだとわかっていながら、脳内に浮かんでくるのは恰好のつかない自分の姿ばかり。
ぐるぐると渦巻くどんよりとした気持ちを振り払うため数度頭を左右に振った銀時は、一旦全部を忘れて今この瞬間を大事にしよう、と思い立ちパッと顔を上げた。
「⋯⋯」
顔をあげてすぐに気付くほど、いつからそうしていたのか銀時の目の前にはただじーっと自分を見つめる名前の可愛らしい顔があった。
ぱち、ぱち。
固まったままスローモーションのような動作で数度瞬きをする銀時を見つめながらふわっと笑った名前は、その艶々とした口元を動かし何かを伝えると、地面についた手に力を込めて身を乗り出した。
ほんの一瞬。
外の空気で冷え切った互いの唇が触れ合った、ほんの一瞬。
一方は瞬きすら忘れ動くことなくただただ今起きた出来事を理解しようと必死になりながら思考がショートしかけていて、一方はそんな相手の表情を見つめながら照れくさそうに嬉しそうにへにゃりと笑顔を浮かべ小さく笑っている。
「一番に、言いたくて」
へにゃりと笑みを浮かべたままほんのり赤くなった顔で真っすぐにそう伝えた名前。
そこでようやく、先程口元を動かした名前はただ口元を動かしたのではなく、ちゃんと言葉を発していたのを思い出した銀時。
〝すきです〟
たった四文字。
鮮明に思い出される名前の声で聞こえてきたその言葉。
自分のことをどう思っているのか。
なんでわざわざこんな時間に起こしたのか。
聞きたい事すら聞けなかった銀時の問いへの答えのような言葉を伝えてきた名前。
そんな彼女が浮かべる笑顔を見つめた銀時は、名前の事を今までで一番可愛らしく、一番愛おしく感じた。
「⋯⋯そういうのは普通男が先に言うもんだろーがよ⋯」
「だって銀さんいっつもいっぱいいっぱいで、言ってくれないじゃん」
早い者勝ちです、そう言う名前の悪戯っぽい笑顔さえ今の銀時にとっては最高のプレゼントだった。
名前を思う気持ちが大きすぎた故に精一杯になっていた銀時を、空回りして奇行に走ってしまう時だって少なくなかった銀時を、新八の冷めた目線を向けられていた銀時を、名前はすべてわかっていた。
その全てを理解した銀時は恥ずかしさやそれまで渦巻いていた気持ちを長い溜息と共に吐き出すと、先程言えずに飲み込んだ言葉を名前に伝えた。
2024.10.10
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