理想と現実
名前設定
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絶対に折れないあの子を口説く銀さん
「名前ちゃんさ〜次いつ暇なの?」
「暇してないです」
いつもよりほんの少し眉と目との幅を狭め、キリリとした顔をしつつもどこかだらしのない笑顔で名前へ問いかけた銀時。
「あれ?名前ちゃん明後日休みじゃなかった?」
「休みです!⋯あの、新八さん!よければ買い物付き合ってもらえませんか!」
「ぼ、僕!?僕でいいの?!」
「俺は!?そこは俺じゃねえの!?」
そんな銀時へ真顔で静かに「ないです」と答えた名前は、隣を歩く新八へ明後日どこへ行き何を買いたいかなどを至って普通に話し始めた。
一方で、口をあんぐりと開け歩む足すらもやめてしまった銀時との距離が離れようと、二人は銀時を振り返ろうともしなかった。
︙
「それにしてもいいの?僕なんかと一緒で」
時折ちらりと後ろを振り返っては銀時がいないという事実に安心からか心配からか軽く息をこぼしていた新八は、隣を歩く自分より僅かに背の低い名前へと話しかけた。
女性の好きな物やトレンドといった流行りなど何も分からないのにどうして自分を、と思っていたのは勿論だが他にもっと大きな理由が一つあった。
「だって名前ちゃん銀さんのこ」
「好きですよ!好きですけど!」
そう、新八は名前の想い人が銀時であると知っていた。
けれど、先程銀時へ向けた態度とは正反対な様子で「だって⋯」と口を閉じ自信なさげに俯きながら指先を触り始めた名前。
「だって⋯違うんですもん!」
今度は勢いよく顔を上げたかと思えば、何がどう違うのか一際大きな声で何かを否定した名前は顔が酷く火照っているようだった。
「え⋯え?何が違うの??」
新八はその否定が何に対してなのかわからなかった。
銀時が好きという気持ちの否定ではないだろうというのはすぐにわかったが、それなら対象はどれなのか?その素朴な疑問がそのまま口から出てしまっていた。
新八の言葉を聞き更に顔を赤くした名前は新八がむしろ照れ始めてしまうほど可愛らしいものだった。
「わ、私は⋯」
普段の声に比べると随分と自信が無く小さな声、その不安定さ故に今にも空気に溶けてしまいそうなほどの声で必死に伝えようとする名前。
そんな名前を急かすことなく持ち前の優しさで言葉を待っている新八は、次の一言を聞くなり脳内は新たな謎で覆われてしまった。
「私は、銀さんが好きだからこそキライです!」
名前は何を言っているのか?
好きだからこそキライ、という言葉の意味を噛み砕き理解すのは難解だと感じた新八。
片想いを拗らせるとこうなるのか?
恋愛経験の乏しい新八からすればその未知の言葉は名前に対しての返答すらも考える余地を与えてくれそうになく、目頭が痛くなり始めていた。
「私は好きな人には好きって言いたい派なんです」
あまりの不思議に返答出来ずにいた新八を横目に、名前は一度深く息を吸うとゆっくり話を始めた。
「もう少しで私も年齢的には大人です、ちゃんと大人になって⋯好きですって⋯大好きですって私から銀さんに伝えたいんです⋯⋯」
「⋯そ、そうな」
「なのに銀さんは!いつもあんな感じで!私の計画をこれでもかってくらい折りにくるじゃないですか!」
「⋯⋯⋯⋯」
「冗談じゃないですよ!
実はずっと前から好きなんです!みたいな、イイ感じの雰囲気で私の方から付き合ってくださいとか言いたいのに、あれじゃまるで銀さんが私を好きみたいじゃないですか!」
「⋯⋯」
「やですよ!片思いだからこその良さだってあるし、今の世の中は女の子から告白するのだって全然アリなんですから!少なくとも私は⋯⋯」
そこまで聞いた新八は自然と耳に届く声を遮断した。
目の前にいる名前という子は、とてつもなく大きな勘違いをしているんだと理解したから。
同時に今まで過ごしてきた時間の中で理解していた名前という人物は、実際に思っていたより何倍も何十倍も繊細で頑固で、いろいろと拗らせているのだと、新八は改めて気付かされた。
銀時のことを好いているのに日頃なにかと銀時に対し冷めすぎているのでは?という態度を向けていた謎が判明し、その相手である銀時もまたあからさま過ぎるが故に名前に気持ちが届いていなかった。
この状況に、間接的ではあるものの双方の間へ挟まれる形で時間を過ごすことの多い新八からすれば目頭が痛くなるどころのはなしではなかった。
︙
「なぁなぁ名前ちゃ⋯⋯おーい名前ちゃん」
「⋯⋯」
「んな無視する事ァねーだろ、なぁ新八」
「いや僕に聞かれても。
っていうか銀さん、この空気どうするんですか」
あれから二日後、デパートの中を並びながら歩いている三人の姿があった。
左から、新八をストーカーすることで無事買い物に合流できた銀時と、不満そうに頬を軽く膨らませてしっかりと寡黙を貫いている名前と、名前からの目線を向けられ多少の申し訳無さを感じながらもどうする事も出来ずに誰よりも溜息を堪えている新八。
「空気?知るかンなもん、つーかオメェが空気読んでどっか行くとこじゃね?俺今から名前ちゃんとデートしたいんだけど。
言われなきゃわかんねーの?はぁ〜これだから童貞はよォ」
「はあああ!?ていうか今それ関係ないですから!」
「私デートしませんよ」
「え〜いいじゃんいいじゃん銀さんがエスコートしちゃうからさぁ〜美味しいパフェ食えるとこ連れてっちゃうからさぁ〜」
「やです」
「また照れちゃってェ、本当は俺と出かけたいんじゃないの〜?」
「別に」
「うわでたよそのちょっと調子乗っちゃった女優系の返事?でも普段ツンツンしちゃう名前ちゃんが言うとデレてるっぽくて唆ら⋯⋯」
ああだこうだと言いながら猛アタックするも全スルーされている銀時を見ながらとうとう堪えていた溜息を盛大に零した新八は、もういっそいなくなった方が双方のためになるんじゃないかとさえ思い始めていた。
けれどそれを行動に移してしまえば、後日確実に名前から涙まじりに責められるとわかっていたため、行動に移すことができなかった。
何度誘いを向けても振り向いてもらえない銀時、何度誘いを向けられても首を縦に振らない名前、そして両者の気持ちを認知している新八。
二人がいい感じになるまで、早くてもまだまだ月日が残っている。
名前のいう大人がどのくらいの大人を意味するのか新八にはわからなかったが、早ければ明日にでもぜひお願いしたいと心から願うほどだった。
そんな事知る由もない新八以外の二人は、今日もまたしっかりと押しては押されの攻防を繰り広げていた。
23.4.4
リクエスト〝口説く銀さんと折れないあの子〟
絶対の理想があるからこそなびくこと無く理想に向かって一日一日を大切に歩む子と、折れないからこそ惹かれ続け、明日も明後日もとデートに誘う日々を送る銀さんにしてみました。
リクエストありがとうございました!
「名前ちゃんさ〜次いつ暇なの?」
「暇してないです」
いつもよりほんの少し眉と目との幅を狭め、キリリとした顔をしつつもどこかだらしのない笑顔で名前へ問いかけた銀時。
「あれ?名前ちゃん明後日休みじゃなかった?」
「休みです!⋯あの、新八さん!よければ買い物付き合ってもらえませんか!」
「ぼ、僕!?僕でいいの?!」
「俺は!?そこは俺じゃねえの!?」
そんな銀時へ真顔で静かに「ないです」と答えた名前は、隣を歩く新八へ明後日どこへ行き何を買いたいかなどを至って普通に話し始めた。
一方で、口をあんぐりと開け歩む足すらもやめてしまった銀時との距離が離れようと、二人は銀時を振り返ろうともしなかった。
︙
「それにしてもいいの?僕なんかと一緒で」
時折ちらりと後ろを振り返っては銀時がいないという事実に安心からか心配からか軽く息をこぼしていた新八は、隣を歩く自分より僅かに背の低い名前へと話しかけた。
女性の好きな物やトレンドといった流行りなど何も分からないのにどうして自分を、と思っていたのは勿論だが他にもっと大きな理由が一つあった。
「だって名前ちゃん銀さんのこ」
「好きですよ!好きですけど!」
そう、新八は名前の想い人が銀時であると知っていた。
けれど、先程銀時へ向けた態度とは正反対な様子で「だって⋯」と口を閉じ自信なさげに俯きながら指先を触り始めた名前。
「だって⋯違うんですもん!」
今度は勢いよく顔を上げたかと思えば、何がどう違うのか一際大きな声で何かを否定した名前は顔が酷く火照っているようだった。
「え⋯え?何が違うの??」
新八はその否定が何に対してなのかわからなかった。
銀時が好きという気持ちの否定ではないだろうというのはすぐにわかったが、それなら対象はどれなのか?その素朴な疑問がそのまま口から出てしまっていた。
新八の言葉を聞き更に顔を赤くした名前は新八がむしろ照れ始めてしまうほど可愛らしいものだった。
「わ、私は⋯」
普段の声に比べると随分と自信が無く小さな声、その不安定さ故に今にも空気に溶けてしまいそうなほどの声で必死に伝えようとする名前。
そんな名前を急かすことなく持ち前の優しさで言葉を待っている新八は、次の一言を聞くなり脳内は新たな謎で覆われてしまった。
「私は、銀さんが好きだからこそキライです!」
名前は何を言っているのか?
好きだからこそキライ、という言葉の意味を噛み砕き理解すのは難解だと感じた新八。
片想いを拗らせるとこうなるのか?
恋愛経験の乏しい新八からすればその未知の言葉は名前に対しての返答すらも考える余地を与えてくれそうになく、目頭が痛くなり始めていた。
「私は好きな人には好きって言いたい派なんです」
あまりの不思議に返答出来ずにいた新八を横目に、名前は一度深く息を吸うとゆっくり話を始めた。
「もう少しで私も年齢的には大人です、ちゃんと大人になって⋯好きですって⋯大好きですって私から銀さんに伝えたいんです⋯⋯」
「⋯そ、そうな」
「なのに銀さんは!いつもあんな感じで!私の計画をこれでもかってくらい折りにくるじゃないですか!」
「⋯⋯⋯⋯」
「冗談じゃないですよ!
実はずっと前から好きなんです!みたいな、イイ感じの雰囲気で私の方から付き合ってくださいとか言いたいのに、あれじゃまるで銀さんが私を好きみたいじゃないですか!」
「⋯⋯」
「やですよ!片思いだからこその良さだってあるし、今の世の中は女の子から告白するのだって全然アリなんですから!少なくとも私は⋯⋯」
そこまで聞いた新八は自然と耳に届く声を遮断した。
目の前にいる名前という子は、とてつもなく大きな勘違いをしているんだと理解したから。
同時に今まで過ごしてきた時間の中で理解していた名前という人物は、実際に思っていたより何倍も何十倍も繊細で頑固で、いろいろと拗らせているのだと、新八は改めて気付かされた。
銀時のことを好いているのに日頃なにかと銀時に対し冷めすぎているのでは?という態度を向けていた謎が判明し、その相手である銀時もまたあからさま過ぎるが故に名前に気持ちが届いていなかった。
この状況に、間接的ではあるものの双方の間へ挟まれる形で時間を過ごすことの多い新八からすれば目頭が痛くなるどころのはなしではなかった。
︙
「なぁなぁ名前ちゃ⋯⋯おーい名前ちゃん」
「⋯⋯」
「んな無視する事ァねーだろ、なぁ新八」
「いや僕に聞かれても。
っていうか銀さん、この空気どうするんですか」
あれから二日後、デパートの中を並びながら歩いている三人の姿があった。
左から、新八をストーカーすることで無事買い物に合流できた銀時と、不満そうに頬を軽く膨らませてしっかりと寡黙を貫いている名前と、名前からの目線を向けられ多少の申し訳無さを感じながらもどうする事も出来ずに誰よりも溜息を堪えている新八。
「空気?知るかンなもん、つーかオメェが空気読んでどっか行くとこじゃね?俺今から名前ちゃんとデートしたいんだけど。
言われなきゃわかんねーの?はぁ〜これだから童貞はよォ」
「はあああ!?ていうか今それ関係ないですから!」
「私デートしませんよ」
「え〜いいじゃんいいじゃん銀さんがエスコートしちゃうからさぁ〜美味しいパフェ食えるとこ連れてっちゃうからさぁ〜」
「やです」
「また照れちゃってェ、本当は俺と出かけたいんじゃないの〜?」
「別に」
「うわでたよそのちょっと調子乗っちゃった女優系の返事?でも普段ツンツンしちゃう名前ちゃんが言うとデレてるっぽくて唆ら⋯⋯」
ああだこうだと言いながら猛アタックするも全スルーされている銀時を見ながらとうとう堪えていた溜息を盛大に零した新八は、もういっそいなくなった方が双方のためになるんじゃないかとさえ思い始めていた。
けれどそれを行動に移してしまえば、後日確実に名前から涙まじりに責められるとわかっていたため、行動に移すことができなかった。
何度誘いを向けても振り向いてもらえない銀時、何度誘いを向けられても首を縦に振らない名前、そして両者の気持ちを認知している新八。
二人がいい感じになるまで、早くてもまだまだ月日が残っている。
名前のいう大人がどのくらいの大人を意味するのか新八にはわからなかったが、早ければ明日にでもぜひお願いしたいと心から願うほどだった。
そんな事知る由もない新八以外の二人は、今日もまたしっかりと押しては押されの攻防を繰り広げていた。
23.4.4
リクエスト〝口説く銀さんと折れないあの子〟
絶対の理想があるからこそなびくこと無く理想に向かって一日一日を大切に歩む子と、折れないからこそ惹かれ続け、明日も明後日もとデートに誘う日々を送る銀さんにしてみました。
リクエストありがとうございました!
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