これからを大切に
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銀さんと喧嘩(ろくでなし銀さんです)
「今なんて言ったの?」
「あ?だから忘れてたっつってんだろ」
同じこと二度も言わせんじゃねーよ。
お登勢さんのお店のカウンター席で顔を赤くし力の抜けた上半身を緩く倒しながら、私を軽く見てすぐ頭を掻き問に対しそう答えた銀時。
その姿を見て、その答えを聞いて、ああ、さすがにもう無理かも、と思った。
「そう、わかった」
お登勢さんが心配そうに見ているだとかキャサリンさんが私のためにいつも頼むお酒を持ってきているだとか、勿論目の前で酔い潰れている男だとか、そういうのも全部どうでも良く思えた私は小さく「じゃあね」と言葉を吐き捨てると逃げるようにスナックお登勢を出た。
今日は銀時と、出かけようねと約束をしていた日だった。
夜の酒場で適当に出会って、適当に関係を持って、適当なままズルズルと何ヶ月も続いていた近からず遠からずの関係が、二ヶ月程前に恋人という関係に変わってた。
それから何度もここに行こう、あそこに行こうと計画を立てたりもしたけれど、普段からふわりふわりと過ごしているだろう銀時はその都度「悪ぃ忘れてたわ」と幾度となく予定を忘れてた。
私も私で「まあ大した出先でもないしね」と軽く流していたけれど、さすがに今日はそういう思いで気持ちを抑えることが出来なかった。
美味しいと最近話題のお店。
ちゃんと予約もしたしお洒落もした、誰のためでもない銀時のために。
それなのにお店の前で会おうと約束をしていた時間から三十分が過ぎても一時間が過ぎても銀時は来なかった。
その時点で私はお店が目の前にあるというのにお店へ連絡をし予約をキャンセルした。
さらに一時間、すぐ近くのベンチで待ってみたけれどあの目立つ頭はいつまでたっても来てくれることはなく、携帯を持ってないこともわかっていたからゆっくりと銀時の住む万事屋へと向かった私は、その真下に位置するお登勢さんのスナックでベロベロになっていた銀時を見つけた。
〝同じこと二度も言わせんじゃねーよ〟
妙にぐさりと心に刺さる言葉だった。
少なくとも二時間も待たせたんだから謝りの一つくらい、と思っていた私は間違ってはいないはずなのに、なんで沈むような気持ちを抱かなきゃいけないんだろう。
思えば今までだって悪ぃ悪ぃと言いながらも来てくれたことなんて何回あったんだろう。
私ももう若くない、結婚だって真面目に考えなきゃいけない歳だし、適当な関係を続けていくのはやめようと思い話を切り出した時に「んじゃあ」と銀時の言葉で関係性が変わったけれど、それも正直なところ気持ちがあったのか今となっては疑問が浮かぶ。
「⋯⋯最悪」
ここまでくると期待していた自分に呆れすら感じてしまう。
期待した分だけ気持ちの落ち幅は大きくなるだけで、その分を埋め合わせられるかといえば結局のところ好きなことをしたりして自分で補う事しかしてこなかった。
もう今日はこのままどこかお酒でも飲みに行こう、きっと適当な相手と適当に過ごしたって今日くらいはバチが当たることはないでしょ。
それに折角のお洒落も帰宅してすぐ解いてしまうには勿体無いと思っていたし。
そんな思いでぶらぶらとお店が並ぶ道を歩いていると、ふと声をかけられた。
「名前じゃねえか」
「?⋯あぁ、こんばんは」
振り返れば普段の隊服ではなく落ち着いた色の着物を着て、ほんのりと鼻先を赤く染めていた土方さんがいた。
「一人か?ンなとこに一人でいていいのかよ」
どちらからともなく通行を妨げないよう軒下へと身を寄せると、土方さんは少し怠そうな顔で私の周りをちらりと見渡した。
いろいろなお店の並ぶ繁華街。
夜も深まりつつある時間に恋人のいる私が一人でいることを咎めているような言葉を言いながら、その恋人である銀髪の人物が近くにいるのではと辺りを探しているようだった。
「銀時ならいないので大丈夫ですよ」
「⋯おま」
「それにもうどうでも⋯⋯いや⋯ごめんなさい⋯」
「⋯⋯」
土方さんの言葉に被せるようつい勢いで口を出てしまった言葉を否定してみたけれど、あまり意味もなく、本当に申し訳ない空気にさせてしまい軽く謝りつつ最低なことをしてしまったと身勝手に気持ちが沈んでいった。
「何かあったのかよ」
酔いで顔を赤らめた人達が目の前を通り過ぎるのをぼんやり眺めながら、隣にいる土方さんからぽつりと落ちてきた言葉をどう返すべきか考えた。
何も無いです、だなんて変に勘のいい土方さんなら私がつい零してしまった言葉も加味するとすぐに嘘だと気付くだろうし、逆に言い出したところでただ面倒な女だと思われて終わりなだけで。
「⋯ちょっと」
あまり触れないでほしいという意を込めて土方さんを見上げながら返答すると、察してくれたのかそれ以上踏み込んだ言葉をかけてくることはなかった。
しばらく口を閉ざしていた土方さんだったけれど、ふと「明日休みか」と聞いてきて、予定もないので軽く頷けば「飯行くか」と僅かに火照る顔で少し遠くへ視線を向けていた土方さん。
「酒でも飲んで元気出せ」
私を見ることなく、でもはっきりと私に届く声で呟かれる声はぶっきらぼうだけど飾ること無く落ち着いたいつも通りの優しい声で、土方さんは優しいな、と思う度にいつも比較してしまう自分が嫌いだった。
「今度ご飯奢りますね」
「おめーの今度は期待してねえよ」
「えーそんなひど⋯」
少し気持ちも軽くなり視野が狭くなってたのかもしれない。
歩いてると横を通った人と肩がぶつかりバランスを崩してしまった。
咄嗟に手を伸ばした先には当然土方さんがいて、土方さんもそんな私に気付いてか硬い腕で私がそれ以上体勢を崩さないよう抱きとめる形で受け止めてくれていた。
「大丈夫か」
「ごめんなさ⋯ちょっとぶつかっちゃって」
すみません、と言いながら姿勢を戻すまで、優しさからかそっと体を支えてくれていた土方さん。
ちらりと見上げたその顔は、どうやら私にぶつかった人を見つめているのか私の後ろへと視線を向けていた。
普段見ることの無い距離からの土方さんの顔はやっぱりかっこよかったし、ほんのりと香るお酒の匂いも大人な雰囲気を漂わせているような気がした。
「おい」
すると今度は、土方さんの背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あ?」
私に添えていた手を離し後ろを振り返った土方さんから小さく舌打ちが聞こえた気がして、少し頭を傾け土方さんの横からその人物を覗くと、そこにはやっぱり見慣れた銀髪。
「何勝手に人の女ベタベタ触ってくれちゃってんの」
「てめえの女にひでえ顔させてんのはどこのどいつかと思ったらやっぱりオメーだったか」
ピリピリと音が鳴りそうな、見慣れた光景。
私が誰と付き合ってるかなんてわかりきってるはずなのにあえて口にした土方さんと、それを聞いて眉尻をぴくりと震わせた銀時。
いつもと変わらない光景を前に何故かいつも以上に気まずく感じていた私の前で、二人は何か言い合ってるように感じたけれど周りの音で掻き消されそれ以上は私の耳に届くことは無かった。
暫くして銀時は深い溜息を一つ吐くと、頭を雑に搔き土方さんの肩を退かし「帰るぞ」と私の腕を掴んで引き寄せた。
「待っ⋯ちょっと!」
「んだよ、今日は出かけんだろーが」
「そんなのキャンセルしたに決ま⋯ねえ!」
ズンズンと大股で進んでいく銀時は私の腕を掴んだまま。
離そうにもしっかりと掴まれた腕は当然離せそうになく、私の呼びかけにも応えてくれない。
普段より歩数を増やし先を行く銀時に必死に着いていくのがやっとで、何も言わずに離れてしまった土方さんへ何か言わなきゃと振り返ったけれどそこにはもう土方さんの姿は見えなかった。
ただ腕を引かれるまま繁華街を抜け、気付けば見慣れた看板を掲げた何でも屋の前まで戻っていた私達。
半ば諦めつつずるずると銀時の後ろを着いていきながら玄関へ入ると、漸く足を止めた銀時は小さく何かを口にした。
「何?」
けれど何を言ったかまではわからず、聞き返すと「だァから」と声を張り「悪かったっつってんの」と今までで何度目かの謝罪の言葉を口にした。
「⋯⋯⋯」
「まぁ、何?アレっつーか何つーか、ほら、な?」
ぶつぶつと言い訳を続ける銀時を見てると、当初抱いていた苛々や呆れがどうでもよく思えてきて、私はなんて甘いんだろうと思うと同時に目の前で必死にああだこうだと身振り手振りを続ける銀時を見て小さな笑いが込み上げてきた。
「もういいよ、大丈夫」
銀時を甘やかしてるのはきっと他でもない私自信なのに、そっと背中へ腕を回して隙間を埋めるよう胸へ顔を当てると、お返しにと包み込んでくれる温もりで満足してしまう自分がいた。
「次忘れたら別れるから」
「そん時はまた捕まえっから問題ねえよ」
「⋯⋯再犯しない約束は無し?」
これじゃ別れる時も捕まる時も、そう遠くはないんだろうなと思う。
結局そのあと、土方さんと何話してたの?と聞いても答えてくれなかったけど、それから数日は土方さんの名前を出すと銀時は不機嫌そうに眉間に皺を刻むことが多くなったし、今まで忘れるか遅刻かだったのに予定を組んだ日はちゃんと来てくれるようになった。
23.3.13
リクエスト〝銀さんと大喧嘩〟
大喧嘩した後に土方さんと会い勘違いされる、という内容だったので出来る限り近い展開で、かつだらしのない銀さんで書いてみました。
喧嘩⋯というより呆れに近いかもしれません。
リクエストありがとうございました!
「今なんて言ったの?」
「あ?だから忘れてたっつってんだろ」
同じこと二度も言わせんじゃねーよ。
お登勢さんのお店のカウンター席で顔を赤くし力の抜けた上半身を緩く倒しながら、私を軽く見てすぐ頭を掻き問に対しそう答えた銀時。
その姿を見て、その答えを聞いて、ああ、さすがにもう無理かも、と思った。
「そう、わかった」
お登勢さんが心配そうに見ているだとかキャサリンさんが私のためにいつも頼むお酒を持ってきているだとか、勿論目の前で酔い潰れている男だとか、そういうのも全部どうでも良く思えた私は小さく「じゃあね」と言葉を吐き捨てると逃げるようにスナックお登勢を出た。
今日は銀時と、出かけようねと約束をしていた日だった。
夜の酒場で適当に出会って、適当に関係を持って、適当なままズルズルと何ヶ月も続いていた近からず遠からずの関係が、二ヶ月程前に恋人という関係に変わってた。
それから何度もここに行こう、あそこに行こうと計画を立てたりもしたけれど、普段からふわりふわりと過ごしているだろう銀時はその都度「悪ぃ忘れてたわ」と幾度となく予定を忘れてた。
私も私で「まあ大した出先でもないしね」と軽く流していたけれど、さすがに今日はそういう思いで気持ちを抑えることが出来なかった。
美味しいと最近話題のお店。
ちゃんと予約もしたしお洒落もした、誰のためでもない銀時のために。
それなのにお店の前で会おうと約束をしていた時間から三十分が過ぎても一時間が過ぎても銀時は来なかった。
その時点で私はお店が目の前にあるというのにお店へ連絡をし予約をキャンセルした。
さらに一時間、すぐ近くのベンチで待ってみたけれどあの目立つ頭はいつまでたっても来てくれることはなく、携帯を持ってないこともわかっていたからゆっくりと銀時の住む万事屋へと向かった私は、その真下に位置するお登勢さんのスナックでベロベロになっていた銀時を見つけた。
〝同じこと二度も言わせんじゃねーよ〟
妙にぐさりと心に刺さる言葉だった。
少なくとも二時間も待たせたんだから謝りの一つくらい、と思っていた私は間違ってはいないはずなのに、なんで沈むような気持ちを抱かなきゃいけないんだろう。
思えば今までだって悪ぃ悪ぃと言いながらも来てくれたことなんて何回あったんだろう。
私ももう若くない、結婚だって真面目に考えなきゃいけない歳だし、適当な関係を続けていくのはやめようと思い話を切り出した時に「んじゃあ」と銀時の言葉で関係性が変わったけれど、それも正直なところ気持ちがあったのか今となっては疑問が浮かぶ。
「⋯⋯最悪」
ここまでくると期待していた自分に呆れすら感じてしまう。
期待した分だけ気持ちの落ち幅は大きくなるだけで、その分を埋め合わせられるかといえば結局のところ好きなことをしたりして自分で補う事しかしてこなかった。
もう今日はこのままどこかお酒でも飲みに行こう、きっと適当な相手と適当に過ごしたって今日くらいはバチが当たることはないでしょ。
それに折角のお洒落も帰宅してすぐ解いてしまうには勿体無いと思っていたし。
そんな思いでぶらぶらとお店が並ぶ道を歩いていると、ふと声をかけられた。
「名前じゃねえか」
「?⋯あぁ、こんばんは」
振り返れば普段の隊服ではなく落ち着いた色の着物を着て、ほんのりと鼻先を赤く染めていた土方さんがいた。
「一人か?ンなとこに一人でいていいのかよ」
どちらからともなく通行を妨げないよう軒下へと身を寄せると、土方さんは少し怠そうな顔で私の周りをちらりと見渡した。
いろいろなお店の並ぶ繁華街。
夜も深まりつつある時間に恋人のいる私が一人でいることを咎めているような言葉を言いながら、その恋人である銀髪の人物が近くにいるのではと辺りを探しているようだった。
「銀時ならいないので大丈夫ですよ」
「⋯おま」
「それにもうどうでも⋯⋯いや⋯ごめんなさい⋯」
「⋯⋯」
土方さんの言葉に被せるようつい勢いで口を出てしまった言葉を否定してみたけれど、あまり意味もなく、本当に申し訳ない空気にさせてしまい軽く謝りつつ最低なことをしてしまったと身勝手に気持ちが沈んでいった。
「何かあったのかよ」
酔いで顔を赤らめた人達が目の前を通り過ぎるのをぼんやり眺めながら、隣にいる土方さんからぽつりと落ちてきた言葉をどう返すべきか考えた。
何も無いです、だなんて変に勘のいい土方さんなら私がつい零してしまった言葉も加味するとすぐに嘘だと気付くだろうし、逆に言い出したところでただ面倒な女だと思われて終わりなだけで。
「⋯ちょっと」
あまり触れないでほしいという意を込めて土方さんを見上げながら返答すると、察してくれたのかそれ以上踏み込んだ言葉をかけてくることはなかった。
しばらく口を閉ざしていた土方さんだったけれど、ふと「明日休みか」と聞いてきて、予定もないので軽く頷けば「飯行くか」と僅かに火照る顔で少し遠くへ視線を向けていた土方さん。
「酒でも飲んで元気出せ」
私を見ることなく、でもはっきりと私に届く声で呟かれる声はぶっきらぼうだけど飾ること無く落ち着いたいつも通りの優しい声で、土方さんは優しいな、と思う度にいつも比較してしまう自分が嫌いだった。
「今度ご飯奢りますね」
「おめーの今度は期待してねえよ」
「えーそんなひど⋯」
少し気持ちも軽くなり視野が狭くなってたのかもしれない。
歩いてると横を通った人と肩がぶつかりバランスを崩してしまった。
咄嗟に手を伸ばした先には当然土方さんがいて、土方さんもそんな私に気付いてか硬い腕で私がそれ以上体勢を崩さないよう抱きとめる形で受け止めてくれていた。
「大丈夫か」
「ごめんなさ⋯ちょっとぶつかっちゃって」
すみません、と言いながら姿勢を戻すまで、優しさからかそっと体を支えてくれていた土方さん。
ちらりと見上げたその顔は、どうやら私にぶつかった人を見つめているのか私の後ろへと視線を向けていた。
普段見ることの無い距離からの土方さんの顔はやっぱりかっこよかったし、ほんのりと香るお酒の匂いも大人な雰囲気を漂わせているような気がした。
「おい」
すると今度は、土方さんの背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あ?」
私に添えていた手を離し後ろを振り返った土方さんから小さく舌打ちが聞こえた気がして、少し頭を傾け土方さんの横からその人物を覗くと、そこにはやっぱり見慣れた銀髪。
「何勝手に人の女ベタベタ触ってくれちゃってんの」
「てめえの女にひでえ顔させてんのはどこのどいつかと思ったらやっぱりオメーだったか」
ピリピリと音が鳴りそうな、見慣れた光景。
私が誰と付き合ってるかなんてわかりきってるはずなのにあえて口にした土方さんと、それを聞いて眉尻をぴくりと震わせた銀時。
いつもと変わらない光景を前に何故かいつも以上に気まずく感じていた私の前で、二人は何か言い合ってるように感じたけれど周りの音で掻き消されそれ以上は私の耳に届くことは無かった。
暫くして銀時は深い溜息を一つ吐くと、頭を雑に搔き土方さんの肩を退かし「帰るぞ」と私の腕を掴んで引き寄せた。
「待っ⋯ちょっと!」
「んだよ、今日は出かけんだろーが」
「そんなのキャンセルしたに決ま⋯ねえ!」
ズンズンと大股で進んでいく銀時は私の腕を掴んだまま。
離そうにもしっかりと掴まれた腕は当然離せそうになく、私の呼びかけにも応えてくれない。
普段より歩数を増やし先を行く銀時に必死に着いていくのがやっとで、何も言わずに離れてしまった土方さんへ何か言わなきゃと振り返ったけれどそこにはもう土方さんの姿は見えなかった。
ただ腕を引かれるまま繁華街を抜け、気付けば見慣れた看板を掲げた何でも屋の前まで戻っていた私達。
半ば諦めつつずるずると銀時の後ろを着いていきながら玄関へ入ると、漸く足を止めた銀時は小さく何かを口にした。
「何?」
けれど何を言ったかまではわからず、聞き返すと「だァから」と声を張り「悪かったっつってんの」と今までで何度目かの謝罪の言葉を口にした。
「⋯⋯⋯」
「まぁ、何?アレっつーか何つーか、ほら、な?」
ぶつぶつと言い訳を続ける銀時を見てると、当初抱いていた苛々や呆れがどうでもよく思えてきて、私はなんて甘いんだろうと思うと同時に目の前で必死にああだこうだと身振り手振りを続ける銀時を見て小さな笑いが込み上げてきた。
「もういいよ、大丈夫」
銀時を甘やかしてるのはきっと他でもない私自信なのに、そっと背中へ腕を回して隙間を埋めるよう胸へ顔を当てると、お返しにと包み込んでくれる温もりで満足してしまう自分がいた。
「次忘れたら別れるから」
「そん時はまた捕まえっから問題ねえよ」
「⋯⋯再犯しない約束は無し?」
これじゃ別れる時も捕まる時も、そう遠くはないんだろうなと思う。
結局そのあと、土方さんと何話してたの?と聞いても答えてくれなかったけど、それから数日は土方さんの名前を出すと銀時は不機嫌そうに眉間に皺を刻むことが多くなったし、今まで忘れるか遅刻かだったのに予定を組んだ日はちゃんと来てくれるようになった。
23.3.13
リクエスト〝銀さんと大喧嘩〟
大喧嘩した後に土方さんと会い勘違いされる、という内容だったので出来る限り近い展開で、かつだらしのない銀さんで書いてみました。
喧嘩⋯というより呆れに近いかもしれません。
リクエストありがとうございました!
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