微々たる可能性
名前設定
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銀さん→主→新八
「新八くん今日いないんですか?」
「ンなに会いたきゃ直接行きゃあいいだろーが」
「やですよそんな、いかにも~みたいな行動」
「どの口が言ってんだよ」
ここ一ヶ月の間、ほぼ毎日どこかで一度、時には一日に二度三度、万事屋を訪れていた名前は目当ての人物が居ないと知ると銀時の小言を聞きながら小さくため息を吐いた。
ソファーに座り自身のつま先を合わせながらスリスリと小さく足先を動かしている名前。
一方、新八や神楽が不在な万事屋で一人静かに漫画を読んでいた銀時は突然の来客で一度は漫画から手を離したものの、その人物が名前だとわかると小さくため息を吐き再び手にした漫画へ目を通し始めていた。
常にハツラツとしていて自然と人が集まるようなタイプ。
スナックお登勢で働いている事もあり社交的で人脈も広く、贔屓などせず誰に対しても善し悪しをハッキリと指摘できるようなタイプ。
それが名前だった。
毛先にいくにつれ緩くパーマのかかった明るい髪を後頭部の高い位置で括り、両耳にはいくつかのピアス、パキッとしたメイクを施した整った顔。
化粧はそこまで派手という訳ではなく、あくまで整っている彼女のベースをより引き立たせる程度のもの。
大きな瞳が位置する目元や潤いのある小さな唇は、彼女の魅力や女性らしさを惜しげも無く醸し出していた。
そんな名前の目当ての人物は、名前のような人物とは対局に位置するようなタイプだった。
それどころか坂田銀時という銀髪で天然パーマの隣にいる機会が増え、さらに苗字名前という全体的に明るい人物と交流を持ち始めたことで、ただでさえその特徴のない髪型と眼鏡という落ち着いた印象の志村新八は、地味、という印象が一際強く残ってしまうほどの人物。
「超タイプです!」
それは名前と新八が出会って二日目の出来事。
互いの趣味や好みは勿論、性格もほぼ無知といっていいほど何も知り得ていない段階で、名前は新八へそう言葉をかけていた。
女性から告白の類を受けたことは無く彼女もいた事がない新八にとってはあまりに突然の衝撃だった。
顔を真っ赤に染めながら静かに倒れた新八は当然ながらその日を境に名前を意識し始めた。
当たり前と言えば当たり前だが、名前から好意を伝えられたからといって付き合うという行動をけして選ぶことのなかった新八。
万事屋へ足を運ぶ度に、お登勢のスナックを訪れる度に、ニコニコと可愛らしい笑顔を向けてくる名前を見かけては女性との経験のなさからかどうしようもなく気恥しいような気持ちに襲われ、名前のことを意図的に避けるようになっていた。
「つーかお前アイツのどこがそんなにアレなの?」
そんな二人の様子を日々眺めては、小さな溜め息を毎度飲み込んでいた人物が一人いた。
「え~?坂田さんいつも一緒にいるじゃないですか」
「だから尚更わかんねえんだよ」
もう今週何度も目を通し、もはや台詞さえ覚え始めていた程には読み潰した漫画を机に放った銀時は至極つまらなそうな顔で名前へ問いかけた。
「どこって、まず真面目そうでしょ?歳も近いし、女の子慣れしてなさそうだし、あといかにも未経験ですってところが⋯」
ソファーの上で膝を抱えながら綺麗に整えられた自身の指先を見つめ、当たり前だと言うようにスラスラと新八のお気に入りポイントを述べては細く長い指を一本ずつ緩く折り曲げていく名前。
ちゃらんぽらんで歳も僅かに差があり色々な経験などいくらでも積んできた新八とは真逆の銀時からすれば、今更どうこうできるものではないなと思えてくるような言葉ばかり。
それでも銀時は、お登勢の厚意でここに住み始めた頃からずっと名前を見ていた。
最初こそあまり関わりを持たないようにと徹していた銀時だったがそんな隔も気付けば無くなり、いつしか少しづつ気になる存在になっていた。
そんな名前が初めて見せた女子の顔。
頬をほんのり赤らめ新八へ近付き満面の笑みでストレートに想いをぶつけていた姿を見て、まさかよりによって新八なのかと風邪でもないのに頭が痛くなったのを鮮明に覚えていた銀時。
「まぁでもあれだよな、お前明らかに避けられてるよな」
ほんの小さな妬みのつもりで銀時が発した一言。
少しでいい、微々たるモンでもいい、ほんのちょびっとでも俺を見てくれればそれで、という思いで銀時が発した言葉を聞いた名前は小さく指先を揺らした。
「やっぱりそうですよね〜⋯何がダメなんでしょう」
「そりゃああいうタイプは大人しいのが好きに決まってんだろ、箸より重いもの持てねぇみてーな」
「今更お通ちゃんみたいにはなれないし⋯見た目からかなぁ」
銀時の言葉を聞きながら、パーマのかかる自身の明るい髪の先や耳で輝くピアスに手を添えながら小さく息を吐いた名前。
お前はそのままでいいだろ、という言葉は当然口から出ることは無くただバレないよう横目で名前を眺めていた銀時。
髪色を変えても、ピアスを外しても、名前の人柄まで変わることはないだろう。
ただその髪色を含めた身なりを変えてしまう原因が自身ではなく他の男にあると思うと、胸の中が鈍色の雲に覆われていくような気がした。
一方で、相手が相手なだけに変に得体の知れない男よりはいいのか?と思いつつも、それなら俺にだって少しくらいチャンスがあってもいいんじゃないか?と、一喜一憂しては心情にリンクして痒くなる後頭部を無遠慮にボサボサと搔いていた。
23.2.22
リクエスト〝銀さんの想い人が新八を好きになる話〟
大人しめの子より新八とは対極なキャラクターで書いてみました。一方通行は結構好きなので楽しかったです。
リクエストありがとうございました。
「新八くん今日いないんですか?」
「ンなに会いたきゃ直接行きゃあいいだろーが」
「やですよそんな、いかにも~みたいな行動」
「どの口が言ってんだよ」
ここ一ヶ月の間、ほぼ毎日どこかで一度、時には一日に二度三度、万事屋を訪れていた名前は目当ての人物が居ないと知ると銀時の小言を聞きながら小さくため息を吐いた。
ソファーに座り自身のつま先を合わせながらスリスリと小さく足先を動かしている名前。
一方、新八や神楽が不在な万事屋で一人静かに漫画を読んでいた銀時は突然の来客で一度は漫画から手を離したものの、その人物が名前だとわかると小さくため息を吐き再び手にした漫画へ目を通し始めていた。
常にハツラツとしていて自然と人が集まるようなタイプ。
スナックお登勢で働いている事もあり社交的で人脈も広く、贔屓などせず誰に対しても善し悪しをハッキリと指摘できるようなタイプ。
それが名前だった。
毛先にいくにつれ緩くパーマのかかった明るい髪を後頭部の高い位置で括り、両耳にはいくつかのピアス、パキッとしたメイクを施した整った顔。
化粧はそこまで派手という訳ではなく、あくまで整っている彼女のベースをより引き立たせる程度のもの。
大きな瞳が位置する目元や潤いのある小さな唇は、彼女の魅力や女性らしさを惜しげも無く醸し出していた。
そんな名前の目当ての人物は、名前のような人物とは対局に位置するようなタイプだった。
それどころか坂田銀時という銀髪で天然パーマの隣にいる機会が増え、さらに苗字名前という全体的に明るい人物と交流を持ち始めたことで、ただでさえその特徴のない髪型と眼鏡という落ち着いた印象の志村新八は、地味、という印象が一際強く残ってしまうほどの人物。
「超タイプです!」
それは名前と新八が出会って二日目の出来事。
互いの趣味や好みは勿論、性格もほぼ無知といっていいほど何も知り得ていない段階で、名前は新八へそう言葉をかけていた。
女性から告白の類を受けたことは無く彼女もいた事がない新八にとってはあまりに突然の衝撃だった。
顔を真っ赤に染めながら静かに倒れた新八は当然ながらその日を境に名前を意識し始めた。
当たり前と言えば当たり前だが、名前から好意を伝えられたからといって付き合うという行動をけして選ぶことのなかった新八。
万事屋へ足を運ぶ度に、お登勢のスナックを訪れる度に、ニコニコと可愛らしい笑顔を向けてくる名前を見かけては女性との経験のなさからかどうしようもなく気恥しいような気持ちに襲われ、名前のことを意図的に避けるようになっていた。
「つーかお前アイツのどこがそんなにアレなの?」
そんな二人の様子を日々眺めては、小さな溜め息を毎度飲み込んでいた人物が一人いた。
「え~?坂田さんいつも一緒にいるじゃないですか」
「だから尚更わかんねえんだよ」
もう今週何度も目を通し、もはや台詞さえ覚え始めていた程には読み潰した漫画を机に放った銀時は至極つまらなそうな顔で名前へ問いかけた。
「どこって、まず真面目そうでしょ?歳も近いし、女の子慣れしてなさそうだし、あといかにも未経験ですってところが⋯」
ソファーの上で膝を抱えながら綺麗に整えられた自身の指先を見つめ、当たり前だと言うようにスラスラと新八のお気に入りポイントを述べては細く長い指を一本ずつ緩く折り曲げていく名前。
ちゃらんぽらんで歳も僅かに差があり色々な経験などいくらでも積んできた新八とは真逆の銀時からすれば、今更どうこうできるものではないなと思えてくるような言葉ばかり。
それでも銀時は、お登勢の厚意でここに住み始めた頃からずっと名前を見ていた。
最初こそあまり関わりを持たないようにと徹していた銀時だったがそんな隔も気付けば無くなり、いつしか少しづつ気になる存在になっていた。
そんな名前が初めて見せた女子の顔。
頬をほんのり赤らめ新八へ近付き満面の笑みでストレートに想いをぶつけていた姿を見て、まさかよりによって新八なのかと風邪でもないのに頭が痛くなったのを鮮明に覚えていた銀時。
「まぁでもあれだよな、お前明らかに避けられてるよな」
ほんの小さな妬みのつもりで銀時が発した一言。
少しでいい、微々たるモンでもいい、ほんのちょびっとでも俺を見てくれればそれで、という思いで銀時が発した言葉を聞いた名前は小さく指先を揺らした。
「やっぱりそうですよね〜⋯何がダメなんでしょう」
「そりゃああいうタイプは大人しいのが好きに決まってんだろ、箸より重いもの持てねぇみてーな」
「今更お通ちゃんみたいにはなれないし⋯見た目からかなぁ」
銀時の言葉を聞きながら、パーマのかかる自身の明るい髪の先や耳で輝くピアスに手を添えながら小さく息を吐いた名前。
お前はそのままでいいだろ、という言葉は当然口から出ることは無くただバレないよう横目で名前を眺めていた銀時。
髪色を変えても、ピアスを外しても、名前の人柄まで変わることはないだろう。
ただその髪色を含めた身なりを変えてしまう原因が自身ではなく他の男にあると思うと、胸の中が鈍色の雲に覆われていくような気がした。
一方で、相手が相手なだけに変に得体の知れない男よりはいいのか?と思いつつも、それなら俺にだって少しくらいチャンスがあってもいいんじゃないか?と、一喜一憂しては心情にリンクして痒くなる後頭部を無遠慮にボサボサと搔いていた。
23.2.22
リクエスト〝銀さんの想い人が新八を好きになる話〟
大人しめの子より新八とは対極なキャラクターで書いてみました。一方通行は結構好きなので楽しかったです。
リクエストありがとうございました。
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