来島誕生日2023
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初めての恋が同性、そんなお話(主人公→また子)
「名前!明日暇っスか!?」
「明日?うん、空いてるよ」
部屋へ行こうと廊下を曲がった時、不意に後ろから大きな声で名前を呼ばれまた子ちゃんが小走りに駆け寄ってきた。
「買い物行きたいんスけど、一緒にどうスか?」
「いいよいいよ、私も欲しいものあるし」
「んじゃ明日!寝坊しちゃダメっスからね!」
「うん、また明日」
手を振ると私より何倍も大きく手を振りながら来た道を戻っていくまた子ちゃん。
隊の中で一番歳が近くて、一番一緒に居る時間が長くて、それで、一番好きな人。それがまた子ちゃん。
派手な髪に派手な服。いつも明るく堂々としてて、私とは正反対。
そんなまた子ちゃんにいつの間にか惹かれるようになっていて、最初は当然、憧れだとかそういう類の気持ちだと思ってた。
でも時間が経てば経つほど、これって憧れだけじゃない気がする、そう思うようになっていて。
また子ちゃんが楽しそうに抱きついてきた時にドキリと大きく揺れた胸に動揺し、もしかして⋯と自覚したのが何ヶ月か前。
そうして始まった私の叶うことの無い初恋は、私を酷く悩ませた。
︙
「ありがとうまた子ちゃん、こんなに付き合ってもらっちゃって」
「何言ってんスか!名前の買い物ならいくらでも付き合うっスよ!」
また子ちゃんの買い物に付き合うはずだったのに、早々に目当てのものを見つけたまた子ちゃんは私の買い物に付き合ってくれた。
といってもそんなに数があったわけじゃない。
じゃあなんでこんなに、両手に紙袋提げるほど買い物しちゃったのか。
行く先々で「これ可愛いっスね!」とか「絶対これ名前に似合うっスよ!」とか言われたら、そりゃあもう値段も見ずにカゴへ入れ回ってたから。
本当に買いたかった物はまた子ちゃんには内緒で、こっそりラッピングしてもらいポケットの中に忍ばせながら。
フードコートに着き、その中で比較的目立たない場所の二人で座れるテーブルに荷物を置いてから美味しそうなクレープ屋さんで互いに違う味のを頼んだ。
苺が沢山使われてるクレープを選んだまた子ちゃんと、抹茶とあずきが使われてるクレープを選んだ私。
「⋯それでそれで、ついこの前晋助様が」
テーブルで向かい合うように座りながら、顔をほんのり赤くして大好きな晋助さんの話を楽しそうに話すまた子ちゃんをうんうんって眺めてた。
やっぱりまた子ちゃんは晋助さんが好きなのかな⋯かっこいいもんね、ちょっとどころじゃない危なさがプンプン漂ってるけど、それでも私達みんなのこと考えてくれてるし、その危なさも魅力だと思ってる。
私もかっこよくなれたら⋯⋯いや、どれだけ頑張っても無理だよなあ、と救いのない恋を誤魔化すようにクレープを頬張った。
ほんのり苦くて、ほんのり甘い緑色のクレープ。
生地にも使われている抹茶は中のクリームは勿論上から振りかけられている分もあって、頬張ると苦味が口いっぱいに広がるけど別に嫌になるような苦味じゃない。
ちゃんとその苦味の中で程よい甘味を主張しているあずきもある。
たまに感じるこの甘みが酷く癖になるのかもしれない。このクレープも、私の想いも。
「名前のそれ美味しそうっスね!」
実はこれと二択だったんスけど、名前ならそっち選ぶと思って私はこっちにしたんスけどね!
また一口食べようとした時ふとまた子ちゃんから言われた言葉。
キラキラと可愛い笑顔で私のクレープを見てるまた子ちゃんは「一口交換どうスか!」と苺のクレープを差し出してきた。
「勿論」
迷うことなんて何も無かった私は手に持つ抹茶のクレープとまた子ちゃんの持つ苺のクレープとを交換して、まだ欠けていない方の端っこを一口食べた。
端までしっかりと入っているクリームと苺の酸味が効いたソースは王道と言えるくらい美味しい。ほんのり掛かっているチョコソースも相性抜群で、刻みアーモンドもアクセントになってる。
「これ美味しいね」
こぼさないようクレープを見ながら口へ運んでた私は再びまた子ちゃんを向くため目を向けると、私が食べて欠けてある上からぱくりとクレープを頬張ったまた子ちゃんは美味しそうに目を細めていた。
「こっちもやっぱ美味いっスね!」
次はこっち食べようかな、とニコニコ笑いながらクレープを手渡してくるまた子ちゃん。
「そう⋯そうだよね、美味しいよね」
たったそれだけなのに嬉しそうに胸が煩くなる。
同じグラスで水を飲むとか、同じ取り箸でおかずを取るとか、そういうのと何ら変わりのない行為のはずなのに、意識のしすぎなのかまた子ちゃんの行動一つ眺めるだけで首元がじわりと熱くなる。
「⋯また子ちゃん」
私また子ちゃんの事が好きなんだ、と言えたらどれだけ楽なんだろう。
でもきっと、例え優しくて良い子なまた子ちゃんだろうと同性からそういう目で見られてるなんて知ったら気持ち悪いと思うよね、という思いがずっと頭の中を漂っている。
「なんスか?」
目の前にいる仲間が、女が、自分に好意を寄せてるだなんて気付きすらしないまた子ちゃんはいつものように笑顔を浮かべながら私の返事を待っている。
クレープを片手に移しポケットから小さな袋を取りだして、また子ちゃんに手渡した。
「もう少しで誕生日だよね、おめでとう」
また子ちゃんに似合うと思って買ったヘアゴム。
ゴールドの小さな飾りがついてるそれはほんの少しだけ子供っぽいかなとも思ったけど、また子ちゃんの普段着や持ち前の明るさには十分マッチすると思って選んだもの。
「まじスか!やば、めっちゃ嬉しいっス!」
最後の一口を頬張り丁寧にラッピングを開けたまた子ちゃんは、中身を確認すると一瞬指先を止め、すぐに髪を解き始めた。
「ま、また子ちゃん!?」
せっかく綺麗にまとめあげていた髪を解いて袋から取りだしたヘアゴムを咥えると、手櫛で髪を再びまとめながら私があげたばかりのヘアゴムで再び髪を束ね始めた。
「どうスか!?似合うスか!?」
「⋯⋯うん、すごく似合ってる」
きらきらと笑う表情みたいに、微かに光を帯び輝くヘアゴムを見つめながら嬉しさが込み上げてくる。
こんなに、こんなに嬉しそうにしてくれるなんて思ってなかったし、こんなに嬉しさで心が満たされるとも思ってなかった。
私も最後の一口を食べ終わると「なんかご利益ありそうっスね」と嬉しそうにヘアゴムに触れるまた子ちゃん。
「ただのヘアゴムだよ?そんな大層な⋯」
「だって名前から貰ったものっスからね!」
一生大事にするっスよ!と荷物を持ち立ち上がったまた子ちゃんにつられるように、私も荷物を手に持ち一生という言葉に口元を緩ませながら席を立った。
23.1.10
少し遅れちゃいましたが、誕生日おめでとう!
「名前!明日暇っスか!?」
「明日?うん、空いてるよ」
部屋へ行こうと廊下を曲がった時、不意に後ろから大きな声で名前を呼ばれまた子ちゃんが小走りに駆け寄ってきた。
「買い物行きたいんスけど、一緒にどうスか?」
「いいよいいよ、私も欲しいものあるし」
「んじゃ明日!寝坊しちゃダメっスからね!」
「うん、また明日」
手を振ると私より何倍も大きく手を振りながら来た道を戻っていくまた子ちゃん。
隊の中で一番歳が近くて、一番一緒に居る時間が長くて、それで、一番好きな人。それがまた子ちゃん。
派手な髪に派手な服。いつも明るく堂々としてて、私とは正反対。
そんなまた子ちゃんにいつの間にか惹かれるようになっていて、最初は当然、憧れだとかそういう類の気持ちだと思ってた。
でも時間が経てば経つほど、これって憧れだけじゃない気がする、そう思うようになっていて。
また子ちゃんが楽しそうに抱きついてきた時にドキリと大きく揺れた胸に動揺し、もしかして⋯と自覚したのが何ヶ月か前。
そうして始まった私の叶うことの無い初恋は、私を酷く悩ませた。
︙
「ありがとうまた子ちゃん、こんなに付き合ってもらっちゃって」
「何言ってんスか!名前の買い物ならいくらでも付き合うっスよ!」
また子ちゃんの買い物に付き合うはずだったのに、早々に目当てのものを見つけたまた子ちゃんは私の買い物に付き合ってくれた。
といってもそんなに数があったわけじゃない。
じゃあなんでこんなに、両手に紙袋提げるほど買い物しちゃったのか。
行く先々で「これ可愛いっスね!」とか「絶対これ名前に似合うっスよ!」とか言われたら、そりゃあもう値段も見ずにカゴへ入れ回ってたから。
本当に買いたかった物はまた子ちゃんには内緒で、こっそりラッピングしてもらいポケットの中に忍ばせながら。
フードコートに着き、その中で比較的目立たない場所の二人で座れるテーブルに荷物を置いてから美味しそうなクレープ屋さんで互いに違う味のを頼んだ。
苺が沢山使われてるクレープを選んだまた子ちゃんと、抹茶とあずきが使われてるクレープを選んだ私。
「⋯それでそれで、ついこの前晋助様が」
テーブルで向かい合うように座りながら、顔をほんのり赤くして大好きな晋助さんの話を楽しそうに話すまた子ちゃんをうんうんって眺めてた。
やっぱりまた子ちゃんは晋助さんが好きなのかな⋯かっこいいもんね、ちょっとどころじゃない危なさがプンプン漂ってるけど、それでも私達みんなのこと考えてくれてるし、その危なさも魅力だと思ってる。
私もかっこよくなれたら⋯⋯いや、どれだけ頑張っても無理だよなあ、と救いのない恋を誤魔化すようにクレープを頬張った。
ほんのり苦くて、ほんのり甘い緑色のクレープ。
生地にも使われている抹茶は中のクリームは勿論上から振りかけられている分もあって、頬張ると苦味が口いっぱいに広がるけど別に嫌になるような苦味じゃない。
ちゃんとその苦味の中で程よい甘味を主張しているあずきもある。
たまに感じるこの甘みが酷く癖になるのかもしれない。このクレープも、私の想いも。
「名前のそれ美味しそうっスね!」
実はこれと二択だったんスけど、名前ならそっち選ぶと思って私はこっちにしたんスけどね!
また一口食べようとした時ふとまた子ちゃんから言われた言葉。
キラキラと可愛い笑顔で私のクレープを見てるまた子ちゃんは「一口交換どうスか!」と苺のクレープを差し出してきた。
「勿論」
迷うことなんて何も無かった私は手に持つ抹茶のクレープとまた子ちゃんの持つ苺のクレープとを交換して、まだ欠けていない方の端っこを一口食べた。
端までしっかりと入っているクリームと苺の酸味が効いたソースは王道と言えるくらい美味しい。ほんのり掛かっているチョコソースも相性抜群で、刻みアーモンドもアクセントになってる。
「これ美味しいね」
こぼさないようクレープを見ながら口へ運んでた私は再びまた子ちゃんを向くため目を向けると、私が食べて欠けてある上からぱくりとクレープを頬張ったまた子ちゃんは美味しそうに目を細めていた。
「こっちもやっぱ美味いっスね!」
次はこっち食べようかな、とニコニコ笑いながらクレープを手渡してくるまた子ちゃん。
「そう⋯そうだよね、美味しいよね」
たったそれだけなのに嬉しそうに胸が煩くなる。
同じグラスで水を飲むとか、同じ取り箸でおかずを取るとか、そういうのと何ら変わりのない行為のはずなのに、意識のしすぎなのかまた子ちゃんの行動一つ眺めるだけで首元がじわりと熱くなる。
「⋯また子ちゃん」
私また子ちゃんの事が好きなんだ、と言えたらどれだけ楽なんだろう。
でもきっと、例え優しくて良い子なまた子ちゃんだろうと同性からそういう目で見られてるなんて知ったら気持ち悪いと思うよね、という思いがずっと頭の中を漂っている。
「なんスか?」
目の前にいる仲間が、女が、自分に好意を寄せてるだなんて気付きすらしないまた子ちゃんはいつものように笑顔を浮かべながら私の返事を待っている。
クレープを片手に移しポケットから小さな袋を取りだして、また子ちゃんに手渡した。
「もう少しで誕生日だよね、おめでとう」
また子ちゃんに似合うと思って買ったヘアゴム。
ゴールドの小さな飾りがついてるそれはほんの少しだけ子供っぽいかなとも思ったけど、また子ちゃんの普段着や持ち前の明るさには十分マッチすると思って選んだもの。
「まじスか!やば、めっちゃ嬉しいっス!」
最後の一口を頬張り丁寧にラッピングを開けたまた子ちゃんは、中身を確認すると一瞬指先を止め、すぐに髪を解き始めた。
「ま、また子ちゃん!?」
せっかく綺麗にまとめあげていた髪を解いて袋から取りだしたヘアゴムを咥えると、手櫛で髪を再びまとめながら私があげたばかりのヘアゴムで再び髪を束ね始めた。
「どうスか!?似合うスか!?」
「⋯⋯うん、すごく似合ってる」
きらきらと笑う表情みたいに、微かに光を帯び輝くヘアゴムを見つめながら嬉しさが込み上げてくる。
こんなに、こんなに嬉しそうにしてくれるなんて思ってなかったし、こんなに嬉しさで心が満たされるとも思ってなかった。
私も最後の一口を食べ終わると「なんかご利益ありそうっスね」と嬉しそうにヘアゴムに触れるまた子ちゃん。
「ただのヘアゴムだよ?そんな大層な⋯」
「だって名前から貰ったものっスからね!」
一生大事にするっスよ!と荷物を持ち立ち上がったまた子ちゃんにつられるように、私も荷物を手に持ち一生という言葉に口元を緩ませながら席を立った。
23.1.10
少し遅れちゃいましたが、誕生日おめでとう!
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