迷子
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ちっちゃい沖田ちゃん
「当面の間このガキ預かってくだせぇ」
何でも屋である万事屋の扉を跨ぎ銀時達のいる居間へ足を踏み入れた沖田は、そういうと自身の後ろに隠れている小さな女の子の背中を押し前へ差し出した。
「アレ?お前んとこって確か上一人しかいねぇんじゃねーの?」
「そうですぜ」
「んじゃそのガキなんだよ、ウチは託児所じゃねえぞ」
お宅んとこで預かっとけよ、そう言うと動物をはらうようにシッシッと手を振り沖田達を追い払おうとする銀時。
「そうですよ、流石にそういうのは⋯」
突然の訪問にも関わらず暖かいお茶を運んできた新八も、僅かに眉をひそめながら形式的に机の上へ湯呑みを置いた。
「パパ⋯この人たちこわい⋯」
終始沖田のズボンの裾を引っ張りながらモジモジとしていた少女は口を開くと、沖田を見上げ「ここやだ」と目を潤ませ始めていた。
「ったく、融通の利かねー大人にはなりたくねぇな」
金ならしっかり払うつもりだったんですがねィ、と言うと女の子の背を押し今度は玄関へと向かおうとする沖田と少女。
一方、今のやり取りを一部始終眺めていた新八は口をあんぐりと開き、ソファへ寝転がっていた神楽の口からは酢昆布がポロリと落ち、数秒後部屋の中には銀時の驚きの声が響き渡っていた。
︙
「⋯⋯ってな訳で」
「イヤイヤイヤ意味わかんねえって」
お茶の入った湯呑みの置かれたテーブルを挟む形で片方のソファには沖田と少女、もう片方へは神楽と新八が座り、一人用のデスクに肘をつきながら四人を眺めている銀時。
町を巡回中迷子を見つけ声をかけたところ、沖田を見るなり何故か「パパ!」と顔を上げた少女はそれから沖田の傍を離れずにいるという。
近くの人へ声をかけたものの見知った子供ではないらしく、子供を探しているという親からの連絡も屯所へ届いていないようで、お手上げ状態のまま、ふと、ここ万事屋を思い出し足を運んだという沖田。
仕事中連れ回す訳にもいかず、屯所内で変に誤解を招くことも避けたいため母親が見つかるまで面倒を見て欲しいとのことだった。
「お前そもそもいくつだよ、ガキがガキ作ってんじゃねーよ」
ただの迷子だと言えばさほど問題も無いように思えるが、何故沖田は誤解を招くという心配をしているのか。
無論銀時が沖田の子供だと言ったのは先程のパパ呼びだけではなく、その見た目にもあった。
少女は沖田にそっくりな顔をしていたのだ。
色素の薄い蜂蜜のような色をした髪にクリクリと大きく丸い目。
右側頭部に可愛らしい髪留めで髪を結っている以外、ほとんど沖田と瓜二つな顔立ちをしていた。
だからこそあらぬ誤解を産まぬようにと沖田はここ万事屋へ少女を連れてきていた。
「だから俺のガキじゃねえって言ってるじゃねえですか。少なくとも身に覚えが無ぇですし、仮にあったとしたら責任取ってますぜ。旦那と違って」
「なにその最後の一言お前いつの話してんの」
足をパタパタとさせながらストローを咥え、両手で持った小さいグラスからいちご牛乳を飲んでいる少女の名前すらわからないという沖田は「とりあえず親探してくるんで面倒見てやってくだせぇ」と言いながら立ち上がった。
「いや俺良いとか言ってねえけど」
「親見つけ次第諸々の金払わせますんで」
「よーしお前ら菓子でも買ってこい」
「アンタそれでも大人かよ!!!」
二人の間で話が成立したのか、沖田は立ち上がると玄関へと向かい、銀時は新八達へ声をかけると机の上に放っておいたジャンプを開き始めた。
「パパ⋯」
そんな沖田の後ろをてくてくと付いていき、同じようにズボンの裾を掴むため手を伸ばしている少女。
「⋯⋯なんでい」
俺はパパじゃない。たった一言そう伝えればいいだけの簡単な事のように思えるが、言葉を飲み込み後ろを向くと少女と目線を合わせるようにしゃがんだ沖田。
「パパ行っちゃうの?一緒、だめ?」
再び目を潤ませながら沖田を見上げ小さな訴えを向ける少女は、沖田から離れた手で自分の服を掴みながら必死に涙を堪えていた。
「良い子にしてればすーぐママ連れて戻ってやるよ」
だから良い子にしてろよ、そういい頭を軽く撫でてやるとニコニコとした顔で「うん!」と沖田を見上げた少女は「良い子にしてるの!」と言い小走りで居間へと戻って行った。
︙
「おいザキ、早くしろ」
「⋯こ、これでも急いでますって!」
巡回していたもう一人の隊員、なぜか部隊の違う山崎と共に少女を拾った場所へと向かっていた沖田。
数分前、少女を探している母親がいると連絡が来た沖田達は確認をするため即連絡を返すと車を走らせていた。
やがて目的の場所へ着き、女性を待機させていた隊員の元へ向かった沖田を見た女性はとても驚いたような顔を向けた。
沖田が話を聞く限り、その女性は間違いなく少女の母親だった。
旦那の出張で着いてきたほぼ見知らぬ土地で母子共々迷子になってしまったという。
この女性があの少女の母親であると確信した決め手は「主人がすごく⋯その⋯⋯貴方に似ていて⋯」という一言だった。
少女が沖田と瓜二つなほど似ていた理由もこれで説明がついた。
パトカーに女性を乗せ再び万事屋へ訪れた沖田達は、少女を引き取るなり泊まっているというホテルまで送り届けた。
「本当何から何まで、ありがとうございました」
「まぁこれも仕事なんでね」
ぺこぺこと頭を下げる母親の横で「パパ!」と酢昆布を手にした少女がニコニコと笑っている。
「こらっ⋯!す、すみません⋯本当に主人とそっくりなもので⋯」
「まあ今度外出る時ァ逸れねーよう気ぃ付けて」
じゃあな、と少女の頭を数度撫でた沖田は山崎の待つ車へと戻っていった。
山崎の運転の最中外を眺めながらふと自分によく似た少女を沖田は思い浮かべ、優しい笑みを浮かべていた。
22.12.3
「当面の間このガキ預かってくだせぇ」
何でも屋である万事屋の扉を跨ぎ銀時達のいる居間へ足を踏み入れた沖田は、そういうと自身の後ろに隠れている小さな女の子の背中を押し前へ差し出した。
「アレ?お前んとこって確か上一人しかいねぇんじゃねーの?」
「そうですぜ」
「んじゃそのガキなんだよ、ウチは託児所じゃねえぞ」
お宅んとこで預かっとけよ、そう言うと動物をはらうようにシッシッと手を振り沖田達を追い払おうとする銀時。
「そうですよ、流石にそういうのは⋯」
突然の訪問にも関わらず暖かいお茶を運んできた新八も、僅かに眉をひそめながら形式的に机の上へ湯呑みを置いた。
「パパ⋯この人たちこわい⋯」
終始沖田のズボンの裾を引っ張りながらモジモジとしていた少女は口を開くと、沖田を見上げ「ここやだ」と目を潤ませ始めていた。
「ったく、融通の利かねー大人にはなりたくねぇな」
金ならしっかり払うつもりだったんですがねィ、と言うと女の子の背を押し今度は玄関へと向かおうとする沖田と少女。
一方、今のやり取りを一部始終眺めていた新八は口をあんぐりと開き、ソファへ寝転がっていた神楽の口からは酢昆布がポロリと落ち、数秒後部屋の中には銀時の驚きの声が響き渡っていた。
︙
「⋯⋯ってな訳で」
「イヤイヤイヤ意味わかんねえって」
お茶の入った湯呑みの置かれたテーブルを挟む形で片方のソファには沖田と少女、もう片方へは神楽と新八が座り、一人用のデスクに肘をつきながら四人を眺めている銀時。
町を巡回中迷子を見つけ声をかけたところ、沖田を見るなり何故か「パパ!」と顔を上げた少女はそれから沖田の傍を離れずにいるという。
近くの人へ声をかけたものの見知った子供ではないらしく、子供を探しているという親からの連絡も屯所へ届いていないようで、お手上げ状態のまま、ふと、ここ万事屋を思い出し足を運んだという沖田。
仕事中連れ回す訳にもいかず、屯所内で変に誤解を招くことも避けたいため母親が見つかるまで面倒を見て欲しいとのことだった。
「お前そもそもいくつだよ、ガキがガキ作ってんじゃねーよ」
ただの迷子だと言えばさほど問題も無いように思えるが、何故沖田は誤解を招くという心配をしているのか。
無論銀時が沖田の子供だと言ったのは先程のパパ呼びだけではなく、その見た目にもあった。
少女は沖田にそっくりな顔をしていたのだ。
色素の薄い蜂蜜のような色をした髪にクリクリと大きく丸い目。
右側頭部に可愛らしい髪留めで髪を結っている以外、ほとんど沖田と瓜二つな顔立ちをしていた。
だからこそあらぬ誤解を産まぬようにと沖田はここ万事屋へ少女を連れてきていた。
「だから俺のガキじゃねえって言ってるじゃねえですか。少なくとも身に覚えが無ぇですし、仮にあったとしたら責任取ってますぜ。旦那と違って」
「なにその最後の一言お前いつの話してんの」
足をパタパタとさせながらストローを咥え、両手で持った小さいグラスからいちご牛乳を飲んでいる少女の名前すらわからないという沖田は「とりあえず親探してくるんで面倒見てやってくだせぇ」と言いながら立ち上がった。
「いや俺良いとか言ってねえけど」
「親見つけ次第諸々の金払わせますんで」
「よーしお前ら菓子でも買ってこい」
「アンタそれでも大人かよ!!!」
二人の間で話が成立したのか、沖田は立ち上がると玄関へと向かい、銀時は新八達へ声をかけると机の上に放っておいたジャンプを開き始めた。
「パパ⋯」
そんな沖田の後ろをてくてくと付いていき、同じようにズボンの裾を掴むため手を伸ばしている少女。
「⋯⋯なんでい」
俺はパパじゃない。たった一言そう伝えればいいだけの簡単な事のように思えるが、言葉を飲み込み後ろを向くと少女と目線を合わせるようにしゃがんだ沖田。
「パパ行っちゃうの?一緒、だめ?」
再び目を潤ませながら沖田を見上げ小さな訴えを向ける少女は、沖田から離れた手で自分の服を掴みながら必死に涙を堪えていた。
「良い子にしてればすーぐママ連れて戻ってやるよ」
だから良い子にしてろよ、そういい頭を軽く撫でてやるとニコニコとした顔で「うん!」と沖田を見上げた少女は「良い子にしてるの!」と言い小走りで居間へと戻って行った。
︙
「おいザキ、早くしろ」
「⋯こ、これでも急いでますって!」
巡回していたもう一人の隊員、なぜか部隊の違う山崎と共に少女を拾った場所へと向かっていた沖田。
数分前、少女を探している母親がいると連絡が来た沖田達は確認をするため即連絡を返すと車を走らせていた。
やがて目的の場所へ着き、女性を待機させていた隊員の元へ向かった沖田を見た女性はとても驚いたような顔を向けた。
沖田が話を聞く限り、その女性は間違いなく少女の母親だった。
旦那の出張で着いてきたほぼ見知らぬ土地で母子共々迷子になってしまったという。
この女性があの少女の母親であると確信した決め手は「主人がすごく⋯その⋯⋯貴方に似ていて⋯」という一言だった。
少女が沖田と瓜二つなほど似ていた理由もこれで説明がついた。
パトカーに女性を乗せ再び万事屋へ訪れた沖田達は、少女を引き取るなり泊まっているというホテルまで送り届けた。
「本当何から何まで、ありがとうございました」
「まぁこれも仕事なんでね」
ぺこぺこと頭を下げる母親の横で「パパ!」と酢昆布を手にした少女がニコニコと笑っている。
「こらっ⋯!す、すみません⋯本当に主人とそっくりなもので⋯」
「まあ今度外出る時ァ逸れねーよう気ぃ付けて」
じゃあな、と少女の頭を数度撫でた沖田は山崎の待つ車へと戻っていった。
山崎の運転の最中外を眺めながらふと自分によく似た少女を沖田は思い浮かべ、優しい笑みを浮かべていた。
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