月白に苛まれて
名前設定
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「何から何までお世話になりました」
「うちが起こした事だ、最後まで責任取るのが筋ってもんだろ」
「そうですよ名前さん!僕が轢いちゃったんだから、うんとお世話になっていいんだよ!」
「全部テメェのせいだろ山崎!!!」
ガツンと重たい音が車内に響き、山崎さんの頭はまるで漫画のようにみるみるうちに腫れあがっていく。
退院する際の手続きやら何やらを全てこの人達がやってくれていたようで、家まで送ってくれるという二人の言葉に甘え人生初のパトカーに乗った。
自力で帰ろうにも地名すら聞いたことのない場所ばかりのこの夢の中じゃ自分の家さえたどり着けるかどうかもわからなかったし、タクシーに乗るお金もない、どうせなら送ってもらおうとさえ思っていたから丁度良かった。
そんなこんなで免許証に記されていた私すらも場所がわからない私の家らしき場所に向かうため、不規則に揺れるパトカーの後部座席に座りながら景色を眺めていた。
思っていた通り、街へ出ても見かける人達は皆着物を着ていて、建物自体も昔の家屋のような古き良き風情のある建物ばかりだった。
所々にビルやコンビニもあったりするけど、基本的には古い造形の建物ばかり。
きっと江戸時代かどこかにタイムスリップでもしたらこういう感じなのかな?みたいな。
日本人に親しみある景色はどこを眺めても飽きない楽しさや綺麗さがあった。
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しばらくすると速度を落とし路肩へ停車したパトカー。
「名前さんの言ってた住所はここ⋯ですけど⋯⋯」
目的地へ着いたはずなのに沈んだ声音で到着を教えてくれる山崎さん。
それもそのはず、目の前にあるのは大きなパチンコ店だった。
「⋯⋯本当にここですか?」
「⋯ナビはそう言ってるけど⋯⋯」
いやいやさすがに、さすがに何も知らない土地だとしてもパチ屋に住所があるなんて話聞いたことがない。
いくらここまでの細かな部分全てが作り込まれた夢だとしても、さすがにここに来てこんなこと、あり得ない。
「こ、この近くとか⋯」
前のめりに運転席のヘッドレストの部分へ頬をつけながらナビを覗いてみても、確かに目的地に到着してることになっている。
この近くとか。
そう言ってはみたものの近くにはコンビニや居酒屋やえっちなお店、商店街なのか人が住んでいそうな家やアパート的な建物すら見当たらない。
「お前自分の家知らねえのか?」
的確な言葉を投げてくる土方さん。
そりゃそうだ、何も不思議じゃない、自分の家の住所や場所を忘れる人なんているわけがない。
「⋯⋯い、いやぁ事故に遭って忘れちゃったのかな」
「えええ!?それってもしかしなくても僕のせいだよね!?」
「うっせえな!」
ガヤガヤと騒がしい車内。
溜息をついた土方さんは「免許証見せろ」と私の方へ手を伸ばしてきたので、言われるがまま免許証を渡してみたけれど場所は間違っていないようだった。