月白に苛まれて
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「あの、本当に本当の事をいうので、もうあとは好きにしてください」
この前置き自体に意味はないことくらいわかってた。
それでも言葉にすることで多少は自分の中で諦めがついたように思えて、少しは気が楽になったように感じた。
元々こことは別の世界にいて、帰宅途中事故に遭って。
漠然と死を覚悟するくらいの事故。
それでも何故か目が覚めた私は全く知らない世界にいて。
山崎さんに平謝りされて、土方さんに面倒みて頂いて。
知らない世界なので頼れる身内も知人もいなくて。
それどころか家もお金も何もかもがなくて。
私は苗字名前のはずなのに、正直今の私自身、本当にそうなのか自信が持てなくて。
それなのに、名前?アマント?訳が分からなくて。
ただこの町や国や世界でどうこうしようだとか悪い事は何も考えていない。
なので。
「許してください⋯」
手首を動かしたことで机と擦れた手錠がカチャリと軽い音を響かせた。
何に謝ってるのかすらわからなくなりながら見た男性の顔はいたって真顔。
黙ったまま、ただじっと動かずに椅子に座ったままでいる。
暫く経ち、やっと口を開いた男性は小さく笑いながら吐き捨てるように息を漏らした。
「やっと話す気になったかと思えば、ンな話信じろって言うんですかぃ」
「⋯信じるもなにも事実を」
嘘じゃない、本当に私の身に起きたこと。
最初から嘘なんて一つもついてない。
「私の住所も家も、私そのものも存在してないじゃないですか。
事故に遭う前は家に帰ってジムに通って大学に行って。
贅沢せず普通に生活してたんです、普通に⋯」
わかってもらえると期待した。
