月白に苛まれて
名前設定
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「⋯⋯名前さん、ほら、少しでも食べないと⋯」
「いりません」
「そんな事言わないでさ⋯
なにか好きなもの持ってこれたらいいんだけど、規則があって⋯」
「いりません」
留置所という小さく区切られた仕切りの中、の隅。
体を寄せ膝を抱きかかえて俯いている私とは違い、ちらりと見た山崎さんは細い木で出来た格子の向こう側で正座しながら健気に私へ話しかけ続けている。
結局私は彼らが求めているような本当の名前だとかどこのアマントだとか、そういう質問に応えることが出来ずに留置所に戻された。
そもそもアマントなるものが何なのか私には理解できない。
名前も、実際のところ今の私は何という名前なのか自分自身ですら確信が持てずにいた。
「ごめんね⋯僕が⋯僕があんな事故起こさなきゃ」
格子を隔てた私の目の前で、起きてしまったことを後悔している言葉をつらつらと呟き続ける山崎さん。
ただでさえどうにかなりそうな時に、そんな弱音を吐かないでほしい、聞かせないでほしい。
あなたは自由で私とは違う、私にどうしろっていうの。
不運な事故で生きてるか死んでるかさえもわからないのに、知らない世界にぶち込まれて、昨日今日の出来事で精神がぎりぎり繋がってるような状態で。
私を気にかけてくれるのはありがたいと思う、けど、可能ならずっと一人にしてほしかった。
「いっそ⋯」
「え?何?名前さん?」
まともな睡眠も食事も摂れてない私の口からこぼれた言葉は正直いうと本心から出た言葉だった。
「いっそ、あの事故で死んだ方がよかった」
