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一度はしたくなるあれ(3z)
「晋助も宿題しない?」
「しねえ」
停学が解け、それはもう超珍しく学校に来ていた晋助は放課後私と一緒に私の家に来ていた。
親や兄弟がいる訳でもなくこれといって広い家でもない。部屋にはテレビと机とベッドと僅かな本が詰まっている本棚、大きなぬいぐるみがちらほらあるだけの普通の部屋。
クッションに座りながら机に宿題を広げている私とは違い、晋助は上着を脱ぎ適当に布団の上へ放ると、もはや定位置になりつつあるベッドに寝転がりながら大きなはにわの抱き枕を使っている。
「また停学になっちゃうよ」
「⋯⋯」
もう彼には答える気すらないらしい。
今までも休みの日とか確実に私が家にいるだろう日に限って『家にいろ』とだけ打たれたメールが送られてきては、部屋に来るなりベッドを占領してる晋助。
他に寛げるようなスペースもないから仕方ないと思いつつも、わざわざ来てまでベッドとはにわの抱き枕を占領しなくてもいいのに、なんて思ってるけど口に出したらきっとすごい顔をされるから言わずにいる。
スマホで好きな音楽を流しながら宿題をやり始めて、思っていたよりもうんと早く終わってしまった。
これといった趣味といっても本を読むかスマホでゲームをするくらい。
そこまで持続性があるゲームじゃない、どちらかというと時間ができた何かの合間にちょこっと触る程度のものだし、本といっても丁度読み終えたものばかりで新しいものも手元にない。
あれ、私普段何してるんだっけ?と思い返してみてもゲームか読書か、あとは進行形で占領されているベッドで横になるくらいで。
テレビをつけ、きっと寝てるだろう晋助が起きない程度の音量まで下げてからこの時間にやってるバラエティでも適当に見ようかとチャンネルを切り替えていると、今日は何の日?という特集をやってた。
〝11月11日はポッチー&プリッチの日〟
街頭インタビューでどっちが好きかと学生に聞いたり、双方の味のランキングをやっていたり。
確かに今日、学校で妙ちゃんやさっちゃんからポッチーやプリッチを貰った!と思い出し鞄から縦長の袋で個装されているそれらを取り出し、地味に空いてきたお腹を埋めるためカシャカシャと袋を開けた。
ぽきぽきと特有の軽い音を鳴らしならがかじった箇所で折れていくプリッチ。
プリッチ派の私からすれば、トマト味が口いっぱいに広がってすごく美味しい、チョコがメインのポッチーと比べてくどさを感じずに食べていられる。
でも不思議としょっぱめのものを食べると甘いものも食べたくなっちゃうから結局ポッチーも食べたくなるように出来てるのかな、とか思ってしまう。美味しい。
テレビではポッチーを使ったアレンジお菓子をやっている。
あのままでも充分美味しいのに、なんて思いながら見ているともぞもぞと体を起こした晋助。
「ごめん、テレビの音大きかった?」
「⋯⋯いや」
私のすぐ後ろにあるベッドの上で体を起こした晋助は、ぽりぽりと頭を搔くと私とベッドの間に腰を下ろし、その長い脚の間に私を挟むように座り込んできた。
まだ眠そうに⋯というか普段からパキッとした顔はしてないように思うけれど⋯私の手元を覗き込むなりプリッチを一本抜き取り口へ運んだ。
「ポッチーもあるよ?食べる?」
「これでいい」
「私もプリッチのが好き、美味しいよね」
二つのぽきぽき音を聞きながらテレビを見てた。
でもこんなに近くに晋助がいれば必然と晋助の事を考えてしまう。
久しぶりに見た晋助の制服姿はやっぱりカッコイイだとか、晋助が来た日は決まってはにわの抱き枕がほんのりと良い匂いになるだとか、あぁそれとプリッチをつまむ指先が綺麗だなとか。
この距離感に照れるほどの初々しさは何ヶ月も前にどこかへ消え去った。
慣れるにつれて恥じらいというものが少しずつ失われていき、何度も互いの裸を見合ってしまえばそれこそ恥じらいなんてもう残ってないと、そう思ってた。
だから、顔のすぐ横で晋助が短くなったプリッチを咥えながらそういう意味を込めた目で私を見つめてきた時、その慣れない行為に恥ずかしさを感じた。
「⋯⋯え?」
待って、これってそもそも欠けてない状態からお互いかじってくスタイルじゃないの?なんでもうこんな、こんな短くなってるの?
お腹に回された腕はそう簡単に解いてはくれなさそうだった。勿論ポッチーを咥えた晋助も私が応えるまでそのまま待ってるだろうこともわかってた。
だから、普段のキスとはまた違って、なんかこう、ソワソワする行為に熱が顔へと集まっていく。
ン、と軽く顔を揺らす晋助はどうやらこれを急かしてるようで。
覚悟を決めて、その妙に照れと甘さのある行為に応えてみた。
ポキッ、と唇が触れるぎりぎりの所でかじった事により二つに折れたプリッチ。
「⋯おい」
晋助は不服そうに眉を寄せ、私はそんな晋助の顔を見ながら口に含んだポッチーをぽりぽり噛んだ。
恥ずかしかったんだもん!仕方ないじゃん!
絶対口には出さないけどそういう気持ちだと無言で訴えながら、新しく手にしたプリッチをかじり摘んだ先を曲げてポキッと折ってみた。
すると、これまたさっき晋助が咥えてたプリッチとほぼ同じくらいの長さになった口元のプリッチ。
「⋯ん」
ちょっとした仕返しのつもりだった。
晋助だって少しは恥ずかしがってくれるだろうと、そういう気持ちで、同じように咥えたプリッチを軽く揺らしながら晋助を見上げてみた。
でもその瞬間ちょびっとだけお腹に回した腕に力が籠ったのがわかって、その次にはもう晋助の口元がにやっと吊りあがったのが見えた。
晋助がよく私へ向ける顔。狡くてかっこよくて、いけない顔。
自分で蒔いた種なのに、互いの唇が触れる頃にはもう二度とポッチーゲームなんてやらないしやってあげないと心の中に硬い決まり事が出来ていた。
22.11.12
「晋助も宿題しない?」
「しねえ」
停学が解け、それはもう超珍しく学校に来ていた晋助は放課後私と一緒に私の家に来ていた。
親や兄弟がいる訳でもなくこれといって広い家でもない。部屋にはテレビと机とベッドと僅かな本が詰まっている本棚、大きなぬいぐるみがちらほらあるだけの普通の部屋。
クッションに座りながら机に宿題を広げている私とは違い、晋助は上着を脱ぎ適当に布団の上へ放ると、もはや定位置になりつつあるベッドに寝転がりながら大きなはにわの抱き枕を使っている。
「また停学になっちゃうよ」
「⋯⋯」
もう彼には答える気すらないらしい。
今までも休みの日とか確実に私が家にいるだろう日に限って『家にいろ』とだけ打たれたメールが送られてきては、部屋に来るなりベッドを占領してる晋助。
他に寛げるようなスペースもないから仕方ないと思いつつも、わざわざ来てまでベッドとはにわの抱き枕を占領しなくてもいいのに、なんて思ってるけど口に出したらきっとすごい顔をされるから言わずにいる。
スマホで好きな音楽を流しながら宿題をやり始めて、思っていたよりもうんと早く終わってしまった。
これといった趣味といっても本を読むかスマホでゲームをするくらい。
そこまで持続性があるゲームじゃない、どちらかというと時間ができた何かの合間にちょこっと触る程度のものだし、本といっても丁度読み終えたものばかりで新しいものも手元にない。
あれ、私普段何してるんだっけ?と思い返してみてもゲームか読書か、あとは進行形で占領されているベッドで横になるくらいで。
テレビをつけ、きっと寝てるだろう晋助が起きない程度の音量まで下げてからこの時間にやってるバラエティでも適当に見ようかとチャンネルを切り替えていると、今日は何の日?という特集をやってた。
〝11月11日はポッチー&プリッチの日〟
街頭インタビューでどっちが好きかと学生に聞いたり、双方の味のランキングをやっていたり。
確かに今日、学校で妙ちゃんやさっちゃんからポッチーやプリッチを貰った!と思い出し鞄から縦長の袋で個装されているそれらを取り出し、地味に空いてきたお腹を埋めるためカシャカシャと袋を開けた。
ぽきぽきと特有の軽い音を鳴らしならがかじった箇所で折れていくプリッチ。
プリッチ派の私からすれば、トマト味が口いっぱいに広がってすごく美味しい、チョコがメインのポッチーと比べてくどさを感じずに食べていられる。
でも不思議としょっぱめのものを食べると甘いものも食べたくなっちゃうから結局ポッチーも食べたくなるように出来てるのかな、とか思ってしまう。美味しい。
テレビではポッチーを使ったアレンジお菓子をやっている。
あのままでも充分美味しいのに、なんて思いながら見ているともぞもぞと体を起こした晋助。
「ごめん、テレビの音大きかった?」
「⋯⋯いや」
私のすぐ後ろにあるベッドの上で体を起こした晋助は、ぽりぽりと頭を搔くと私とベッドの間に腰を下ろし、その長い脚の間に私を挟むように座り込んできた。
まだ眠そうに⋯というか普段からパキッとした顔はしてないように思うけれど⋯私の手元を覗き込むなりプリッチを一本抜き取り口へ運んだ。
「ポッチーもあるよ?食べる?」
「これでいい」
「私もプリッチのが好き、美味しいよね」
二つのぽきぽき音を聞きながらテレビを見てた。
でもこんなに近くに晋助がいれば必然と晋助の事を考えてしまう。
久しぶりに見た晋助の制服姿はやっぱりカッコイイだとか、晋助が来た日は決まってはにわの抱き枕がほんのりと良い匂いになるだとか、あぁそれとプリッチをつまむ指先が綺麗だなとか。
この距離感に照れるほどの初々しさは何ヶ月も前にどこかへ消え去った。
慣れるにつれて恥じらいというものが少しずつ失われていき、何度も互いの裸を見合ってしまえばそれこそ恥じらいなんてもう残ってないと、そう思ってた。
だから、顔のすぐ横で晋助が短くなったプリッチを咥えながらそういう意味を込めた目で私を見つめてきた時、その慣れない行為に恥ずかしさを感じた。
「⋯⋯え?」
待って、これってそもそも欠けてない状態からお互いかじってくスタイルじゃないの?なんでもうこんな、こんな短くなってるの?
お腹に回された腕はそう簡単に解いてはくれなさそうだった。勿論ポッチーを咥えた晋助も私が応えるまでそのまま待ってるだろうこともわかってた。
だから、普段のキスとはまた違って、なんかこう、ソワソワする行為に熱が顔へと集まっていく。
ン、と軽く顔を揺らす晋助はどうやらこれを急かしてるようで。
覚悟を決めて、その妙に照れと甘さのある行為に応えてみた。
ポキッ、と唇が触れるぎりぎりの所でかじった事により二つに折れたプリッチ。
「⋯おい」
晋助は不服そうに眉を寄せ、私はそんな晋助の顔を見ながら口に含んだポッチーをぽりぽり噛んだ。
恥ずかしかったんだもん!仕方ないじゃん!
絶対口には出さないけどそういう気持ちだと無言で訴えながら、新しく手にしたプリッチをかじり摘んだ先を曲げてポキッと折ってみた。
すると、これまたさっき晋助が咥えてたプリッチとほぼ同じくらいの長さになった口元のプリッチ。
「⋯ん」
ちょっとした仕返しのつもりだった。
晋助だって少しは恥ずかしがってくれるだろうと、そういう気持ちで、同じように咥えたプリッチを軽く揺らしながら晋助を見上げてみた。
でもその瞬間ちょびっとだけお腹に回した腕に力が籠ったのがわかって、その次にはもう晋助の口元がにやっと吊りあがったのが見えた。
晋助がよく私へ向ける顔。狡くてかっこよくて、いけない顔。
自分で蒔いた種なのに、互いの唇が触れる頃にはもう二度とポッチーゲームなんてやらないしやってあげないと心の中に硬い決まり事が出来ていた。
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