もう一本
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沖田に憧れている隊員とのお話。
「隊長!隊長ー!」
「朝からうるせえな少しは静かにしやがれ」
「もうお昼過ぎてますって!それよりもこれ!これ見てくださいよ!」
沖田総悟率いる隊の一員である名前は、にこにこと満面の笑みを浮かべ勢いよく沖田の部屋を訪れた。
名前が言う通りもう昼過ぎだと言うのに、沖田といえば独特のアイマスクをしながら横になっていた。名前はそんな沖田などお構い無しに目の前まで近寄ると、ぺしぺしと沖田の肩を叩いた。
「だからうるせえって、なんでィ?事によっちゃおめぇ⋯」
アイマスクを親指でずり上げながら少し幼げの残るくりくりとした目で名前を見つめる沖田は、これですこれ!と名前が手にするクリーム色の棒へと視線を移した。
そこには少し濃い色で〝当たり!〟と書かれていた。
「すごくないですか!?当たったんですよ!」
「⋯⋯」
沖田よりもほんの少し幼い名前は女でありながらその剣技を評価され、沖田の直属の部下として活動をしていた。
自分の許せぬ悪へ対峙した時は悲痛に顔を歪める時もある名前でも、普段はこうして年相応の無邪気さを垣間見せる瞬間もあった。
「だからどうしたってんだ、太るぜぃ」
そんな名前の嬉しそうな顔を見て女子に刺さるような一言を言いアイマスクでまた目を覆ってしまう沖田。
「太っ⋯い、いいですよ!どうせ普段隊長の分も動いてるんですから!プラマイゼロ⋯むしろ痩せますよ!」
隠れてしまった目を見つめながら、頬を膨らませて眉を寄せた名前は少し寂しそうに肩を落とした。
「⋯隊長は、アイス食べないんですか?」
「いらねぇ」
「わたし当たったんですよ?もう一本ですよ?」
「さっさと見回りに戻りやがれ」
「誰の代わりに見回りしてると思ってるんですか!!」
もう!と怖くもない声を浴びせると、名前は微塵も動く気配のない沖田の部屋から勢いよく出ると音を立てて戸を閉めた。
「⋯一緒にアイス食べたかったのに」
廊下を歩きながらぽつりと呟いた名前は、手にある当たり付きのアイスの棒を見つめて小さくため息をついた。
ずっと目標にしていた沖田の隊へ配属された時は舞い上がるほど嬉しかった名前。いざ配属してみると、見回りはもちろん他の業務もサボりがちで副長である土方は常に頭を抱えていたのだ。
それでも行動を共にしていくうちに、まぁこれも個性なのかなと憧れという補正効果で名前は特に気にすることも無くなった。
それどころか以前よりも「隊長!隊長!」と何かある毎に沖田に対しての感情を表に出すようになっていた。
だから今日も沖田の代わりに見回りへ出た際にお年寄りの手助けをして、お礼にと貰ったアイスが当たりだったのが嬉しくて一緒に食べれたらなと沖田を訪れたのだ。
「名前ちゃーん!」
だが沖田には冷たくあしらわれてしまい、いっそ一人で食べてやるかとその棒をポケットへと入れようとした時後ろから声をかけられた。
「山崎さん!今お帰りですか?お疲れ様です」
「名前ちゃんもお疲れ!⋯それどうしたの?」
普段から交流のある山崎と偶然出会い、ポケットへ入れることなく中途半端に持ち上げていたアイスの棒について聞かれた名前は、一人で食べるくらいならと顔を上げ微笑んだ。
「当たったんです、山崎さん一緒に食べませんか?」
「すごいじゃん!って俺?!食べる食べる!」
「わたし今日はもう空いてるので!山崎さんは?」
「空いてる空いてる!空いてる!!」
必死に首を縦にグングン振って声を張る山崎を見て笑いながら、じゃあ行きましょ!と名前は山崎と共にアイスを買いに出た。
「よぉデブ」
「でっ⋯酷すぎません!?アイスたった一本多く食べたくらいで!ていうかわたし標準ですけど!」
次の日名前を見つけた沖田は皮肉を口にすると、反論しながらも腹に手を当て眉を下げる名前に短く息を吐いた。
「気にするくれぇなら食わなきゃいいだろ」
「べ、べつに気にしてません!それに二つくっついてるアイスを山崎さんと半分こで食べたので実質一本というか半分ですし!」
何について胸を張っているのか、名前が誇らしげに話す内容に見知った人物の名前を聞いた沖田の眉はぴくりと動いた。
「あ?ザキだ?」
「そうですよ、昨日隊長乗り気じゃなかったので、山崎さんとアイス買いに行ったんですよ」
何かありました?と顔を上げる名前を見ながら足を止めた沖田は小さく舌打ちを零した。
「⋯えっ!もしかして隊長も食べたかったんですか?!」
「うるせぇデブ、俺ァ用事思い出した先に行ってろ」
「は?!え、ちょ、隊長!?」
またですか!?という名前の声に沖田は振り返ることなく足を進めた。
少しして響き渡る山崎の悲痛な叫びは名前の耳に届くことは無かった。
2022.7.7
「隊長!隊長ー!」
「朝からうるせえな少しは静かにしやがれ」
「もうお昼過ぎてますって!それよりもこれ!これ見てくださいよ!」
沖田総悟率いる隊の一員である名前は、にこにこと満面の笑みを浮かべ勢いよく沖田の部屋を訪れた。
名前が言う通りもう昼過ぎだと言うのに、沖田といえば独特のアイマスクをしながら横になっていた。名前はそんな沖田などお構い無しに目の前まで近寄ると、ぺしぺしと沖田の肩を叩いた。
「だからうるせえって、なんでィ?事によっちゃおめぇ⋯」
アイマスクを親指でずり上げながら少し幼げの残るくりくりとした目で名前を見つめる沖田は、これですこれ!と名前が手にするクリーム色の棒へと視線を移した。
そこには少し濃い色で〝当たり!〟と書かれていた。
「すごくないですか!?当たったんですよ!」
「⋯⋯」
沖田よりもほんの少し幼い名前は女でありながらその剣技を評価され、沖田の直属の部下として活動をしていた。
自分の許せぬ悪へ対峙した時は悲痛に顔を歪める時もある名前でも、普段はこうして年相応の無邪気さを垣間見せる瞬間もあった。
「だからどうしたってんだ、太るぜぃ」
そんな名前の嬉しそうな顔を見て女子に刺さるような一言を言いアイマスクでまた目を覆ってしまう沖田。
「太っ⋯い、いいですよ!どうせ普段隊長の分も動いてるんですから!プラマイゼロ⋯むしろ痩せますよ!」
隠れてしまった目を見つめながら、頬を膨らませて眉を寄せた名前は少し寂しそうに肩を落とした。
「⋯隊長は、アイス食べないんですか?」
「いらねぇ」
「わたし当たったんですよ?もう一本ですよ?」
「さっさと見回りに戻りやがれ」
「誰の代わりに見回りしてると思ってるんですか!!」
もう!と怖くもない声を浴びせると、名前は微塵も動く気配のない沖田の部屋から勢いよく出ると音を立てて戸を閉めた。
「⋯一緒にアイス食べたかったのに」
廊下を歩きながらぽつりと呟いた名前は、手にある当たり付きのアイスの棒を見つめて小さくため息をついた。
ずっと目標にしていた沖田の隊へ配属された時は舞い上がるほど嬉しかった名前。いざ配属してみると、見回りはもちろん他の業務もサボりがちで副長である土方は常に頭を抱えていたのだ。
それでも行動を共にしていくうちに、まぁこれも個性なのかなと憧れという補正効果で名前は特に気にすることも無くなった。
それどころか以前よりも「隊長!隊長!」と何かある毎に沖田に対しての感情を表に出すようになっていた。
だから今日も沖田の代わりに見回りへ出た際にお年寄りの手助けをして、お礼にと貰ったアイスが当たりだったのが嬉しくて一緒に食べれたらなと沖田を訪れたのだ。
「名前ちゃーん!」
だが沖田には冷たくあしらわれてしまい、いっそ一人で食べてやるかとその棒をポケットへと入れようとした時後ろから声をかけられた。
「山崎さん!今お帰りですか?お疲れ様です」
「名前ちゃんもお疲れ!⋯それどうしたの?」
普段から交流のある山崎と偶然出会い、ポケットへ入れることなく中途半端に持ち上げていたアイスの棒について聞かれた名前は、一人で食べるくらいならと顔を上げ微笑んだ。
「当たったんです、山崎さん一緒に食べませんか?」
「すごいじゃん!って俺?!食べる食べる!」
「わたし今日はもう空いてるので!山崎さんは?」
「空いてる空いてる!空いてる!!」
必死に首を縦にグングン振って声を張る山崎を見て笑いながら、じゃあ行きましょ!と名前は山崎と共にアイスを買いに出た。
「よぉデブ」
「でっ⋯酷すぎません!?アイスたった一本多く食べたくらいで!ていうかわたし標準ですけど!」
次の日名前を見つけた沖田は皮肉を口にすると、反論しながらも腹に手を当て眉を下げる名前に短く息を吐いた。
「気にするくれぇなら食わなきゃいいだろ」
「べ、べつに気にしてません!それに二つくっついてるアイスを山崎さんと半分こで食べたので実質一本というか半分ですし!」
何について胸を張っているのか、名前が誇らしげに話す内容に見知った人物の名前を聞いた沖田の眉はぴくりと動いた。
「あ?ザキだ?」
「そうですよ、昨日隊長乗り気じゃなかったので、山崎さんとアイス買いに行ったんですよ」
何かありました?と顔を上げる名前を見ながら足を止めた沖田は小さく舌打ちを零した。
「⋯えっ!もしかして隊長も食べたかったんですか?!」
「うるせぇデブ、俺ァ用事思い出した先に行ってろ」
「は?!え、ちょ、隊長!?」
またですか!?という名前の声に沖田は振り返ることなく足を進めた。
少しして響き渡る山崎の悲痛な叫びは名前の耳に届くことは無かった。
2022.7.7
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