弟は沖田総悟
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就職のためかぶき町に越してきた沖田家次女
沖田総悟の二つ上にあたる名前は、あまり高価な品ではないが美味しいと評判の箱菓子を持ちながら、真選組屯所の門の前に来ていた。
「あの、総悟⋯沖田総悟いますか?」
「⋯失礼ですが名前は?」
警備のため門の前へ立つ隊員へ声をかけると身分の確認のためそう尋ねられた名前は「私は」と返事をしようと声を発した瞬間、目の前の隊員がいなくなった。
一瞬にして消えていた。その瞬間凄まじい風と土埃を感じつつ目を伏せた名前だったが、ほぼ同時に隊員は名前の目の前から消えていたのだ。
「何してんでさァ」
土埃が治まると同時に名前の前に現れたのは、名前が探していた相手。
「総悟!」
可愛い可愛い弟に抱きつこうと前のめりに腕を伸ばした名前だったが、僅かに高い位置から名前の額に手を置き一定の距離を保ちながらそれ以上近付かせようとはしない総悟。
至極面倒くさそうな顔をしながら「何してんでさァ」と再び声を発する総悟に対し、就職してこっちに住むことになったから挨拶がてら総悟の顔を見に来た、と伝えた名前に総悟は僅かに眉間を寄せた。
「ンな話聞いてねぇけど」
「え?⋯あっ連絡、してなかったかも」
「その年で連絡の一つも出来ねぇのかよ」
「そんな事いいから!久しぶりの弟に抱き」
「うぜー」
姉である名前へ辛辣な言葉をかけては声を遮り拒絶を表す総悟、一方でそんな態度を示されながらも抱きつこうと必死に腕を伸ばし続けている名前は嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
「これからはすぐに会えるね!」
「会う理由が無ェ」
「私にはあるの!」
「俺には無ェよ」
上司である土方に対峙する時のような荒さは無いが、それでももう一人いた姉であるミツバに対しての態度とは対局と言っていいほど冷めた態度と言葉を向ける総悟。
名前は姉であるミツバや弟である総悟に対し少し度が過ぎるほどの愛情を抱いていた。人一倍いや二倍と言っていいほど家族を愛していた名前だったが、人一倍体が脆かった。
例えば軽く転んだだけで骨を折ったり煎餅を食べて歯が欠けたり。軽くデコピンをしただけで指が酷く腫れた時もあった。
風邪など内面的には強かったもののとにかく外面的な衝撃には弱かった名前。
そんな名前だが、なにも体だけが脆い訳では無い。
段差のないところで転びかけたり鍵をかけ忘れたり連絡が事後報告になってみたりと、人よりも生活面での注意力が欠けていたのだ。
幼い頃、自分についてくる名前と一緒に遊んでいた総悟だったが、自身の不注意と体の脆さが相まって怪我ばかりしていた名前を次第に突き放すようになっていった。
自分についてまわりこれ以上怪我を増やさないように、外に出るよりも家という安心できる場にいた方が名前のためだと総悟なりの愛情を持ち接しているうちに、今のような関係性にまで陥っていた。
その思いは家族が二人になってしまっている今もなんら変わりはしない。無駄に外に出るようなことは控え体を大事にし普通な幸せを探して欲しいと思っている総悟と、自分の怪我などはただ運が悪いだけと思い込み深く考えず弟と同じ町に住むことに対し心が踊りまくっている名前。
「そもそも仕事ってなんでぃ」
「ここ!」
「は?」
「だから、ここ!」
そう言うと抱きつこうとしていた体を離し、総悟の後ろにある真選組屯所と書かれた看板を指さす名前。
「だから言ったじゃん!すぐ会えるねって!」
会う理由もあるし!と。状況が理解出来ていない総悟に笑いかける名前は、箱菓子の入った紙袋から封筒を取り出すと「近藤さんにこれ渡さないといけなくて」と門の中へ進もうとしていた。
「ちょっとタンマ」
そんな名前の腕を軽く引き足を停めさせた総悟は、何?と振り返る名前を真っ直ぐに見つめながら僅かに口の端を吊り上げた。
「それ俺が渡しといてやるよ」
「ホント!?ありがとう!」
その書類が渡らなきゃいい。そう考えた総悟の言葉を何の疑いもせず、封筒を渡そうとした名前達の前に現れたのは二人の上司。
「おぉ名前ちゃんじゃないか!久しぶりだなあ!」
「名前じゃねーか、珍しいな」
「近藤さん!土方さんも!こんにちは!」
屯所の中から現れた近藤と土方の姿を見て盛大に舌打ちをした総悟は今の隙にと名前の手元から封筒をくすねた。
二人へ挨拶をし頭を下げた名前へ笑いかけながら、疲れてないか?腹は減ってないか?と親のような言葉をかける近藤と、まだ吸い始めだった煙草を携帯灰皿へ潰し入れる土方。
「名前ちゃんはまだじゃなかったか?今日は何でまた⋯」
「あっ書類を!郵送しようかと思ったんですけど、どうせならと思って⋯⋯あれ?」
昔と変わらず親しげに話す近藤と名前。名前は先程の封筒が手元にないとわかりきょろきょろと辺りを見回してから、総悟の手元にある封筒を見つけ「それです!」と明るい声を上げた。
再び盛大に舌打ちをした総悟は静かに近藤へ封筒を手渡すと、それを受け取った近藤は名前を中へ案内しようと名前の背へ手を添えた。
「にしても名前ちゃん大きくなったなぁ!」
「身長伸びましたからね!」
「ん?まぁ、それもそうか!」
言葉を交わす二人を静かに見つめている別の二人。
「⋯おい総悟、なんで名前がここに来てんだ」
「ここで働くとか言ってやしたよ」
「は?」
「しかもあの感じじゃあ近藤さんは知ってますぜ」
「は?」
数分前の自分と同じ反応をする土方を横目に笑顔の姉を見つめる総悟。随分と楽しそうに笑顔を咲かせる名前を見つめながら、なんで今ごく当たり前に二人が会話してるのかが大きな謎で仕方がなかった総悟は「あの」と近藤へ声をかけた。
「近藤さんは知ってたんですかぃ?コイツがここに来るって」
「ん?あぁ、名前ちゃんに声をかけたのは俺だからな!」
その一言を聞きカチリと動きを止めた総悟と土方を見ながら「名前ちゃんはもう少ししたらここで働くことになった!」と笑顔を見せる近藤。
「⋯⋯名前、悪い事ァ言わねぇ今すぐ帰れ」
「珍しく意見が合いやすね土方さん、俺も同意見でさァ」
総悟と同じく名前の欠点を理解していた土方は優しさのつもりで名前へ言葉をかけるも「嫌です!」と言葉を返す名前。
「別にいいじゃないか!なに、名前ちゃんが外に出たりする事は無いし、最初は難しい仕事も無いだろうしな!」
何かわからないことがあれば俺かトシ、総悟に聞けば大抵の事は大丈夫だ!と名前へ笑顔を向ける近藤を見ながら、額に手を置き大きなため息をつく土方と黙って姉である名前を見つめる総悟。
名前はその光景を見ながら小さく笑い「よろしくお願いします!」と明るい笑顔を浮かべ頭を下げた。
22.10.27
沖田総悟の二つ上にあたる名前は、あまり高価な品ではないが美味しいと評判の箱菓子を持ちながら、真選組屯所の門の前に来ていた。
「あの、総悟⋯沖田総悟いますか?」
「⋯失礼ですが名前は?」
警備のため門の前へ立つ隊員へ声をかけると身分の確認のためそう尋ねられた名前は「私は」と返事をしようと声を発した瞬間、目の前の隊員がいなくなった。
一瞬にして消えていた。その瞬間凄まじい風と土埃を感じつつ目を伏せた名前だったが、ほぼ同時に隊員は名前の目の前から消えていたのだ。
「何してんでさァ」
土埃が治まると同時に名前の前に現れたのは、名前が探していた相手。
「総悟!」
可愛い可愛い弟に抱きつこうと前のめりに腕を伸ばした名前だったが、僅かに高い位置から名前の額に手を置き一定の距離を保ちながらそれ以上近付かせようとはしない総悟。
至極面倒くさそうな顔をしながら「何してんでさァ」と再び声を発する総悟に対し、就職してこっちに住むことになったから挨拶がてら総悟の顔を見に来た、と伝えた名前に総悟は僅かに眉間を寄せた。
「ンな話聞いてねぇけど」
「え?⋯あっ連絡、してなかったかも」
「その年で連絡の一つも出来ねぇのかよ」
「そんな事いいから!久しぶりの弟に抱き」
「うぜー」
姉である名前へ辛辣な言葉をかけては声を遮り拒絶を表す総悟、一方でそんな態度を示されながらも抱きつこうと必死に腕を伸ばし続けている名前は嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
「これからはすぐに会えるね!」
「会う理由が無ェ」
「私にはあるの!」
「俺には無ェよ」
上司である土方に対峙する時のような荒さは無いが、それでももう一人いた姉であるミツバに対しての態度とは対局と言っていいほど冷めた態度と言葉を向ける総悟。
名前は姉であるミツバや弟である総悟に対し少し度が過ぎるほどの愛情を抱いていた。人一倍いや二倍と言っていいほど家族を愛していた名前だったが、人一倍体が脆かった。
例えば軽く転んだだけで骨を折ったり煎餅を食べて歯が欠けたり。軽くデコピンをしただけで指が酷く腫れた時もあった。
風邪など内面的には強かったもののとにかく外面的な衝撃には弱かった名前。
そんな名前だが、なにも体だけが脆い訳では無い。
段差のないところで転びかけたり鍵をかけ忘れたり連絡が事後報告になってみたりと、人よりも生活面での注意力が欠けていたのだ。
幼い頃、自分についてくる名前と一緒に遊んでいた総悟だったが、自身の不注意と体の脆さが相まって怪我ばかりしていた名前を次第に突き放すようになっていった。
自分についてまわりこれ以上怪我を増やさないように、外に出るよりも家という安心できる場にいた方が名前のためだと総悟なりの愛情を持ち接しているうちに、今のような関係性にまで陥っていた。
その思いは家族が二人になってしまっている今もなんら変わりはしない。無駄に外に出るようなことは控え体を大事にし普通な幸せを探して欲しいと思っている総悟と、自分の怪我などはただ運が悪いだけと思い込み深く考えず弟と同じ町に住むことに対し心が踊りまくっている名前。
「そもそも仕事ってなんでぃ」
「ここ!」
「は?」
「だから、ここ!」
そう言うと抱きつこうとしていた体を離し、総悟の後ろにある真選組屯所と書かれた看板を指さす名前。
「だから言ったじゃん!すぐ会えるねって!」
会う理由もあるし!と。状況が理解出来ていない総悟に笑いかける名前は、箱菓子の入った紙袋から封筒を取り出すと「近藤さんにこれ渡さないといけなくて」と門の中へ進もうとしていた。
「ちょっとタンマ」
そんな名前の腕を軽く引き足を停めさせた総悟は、何?と振り返る名前を真っ直ぐに見つめながら僅かに口の端を吊り上げた。
「それ俺が渡しといてやるよ」
「ホント!?ありがとう!」
その書類が渡らなきゃいい。そう考えた総悟の言葉を何の疑いもせず、封筒を渡そうとした名前達の前に現れたのは二人の上司。
「おぉ名前ちゃんじゃないか!久しぶりだなあ!」
「名前じゃねーか、珍しいな」
「近藤さん!土方さんも!こんにちは!」
屯所の中から現れた近藤と土方の姿を見て盛大に舌打ちをした総悟は今の隙にと名前の手元から封筒をくすねた。
二人へ挨拶をし頭を下げた名前へ笑いかけながら、疲れてないか?腹は減ってないか?と親のような言葉をかける近藤と、まだ吸い始めだった煙草を携帯灰皿へ潰し入れる土方。
「名前ちゃんはまだじゃなかったか?今日は何でまた⋯」
「あっ書類を!郵送しようかと思ったんですけど、どうせならと思って⋯⋯あれ?」
昔と変わらず親しげに話す近藤と名前。名前は先程の封筒が手元にないとわかりきょろきょろと辺りを見回してから、総悟の手元にある封筒を見つけ「それです!」と明るい声を上げた。
再び盛大に舌打ちをした総悟は静かに近藤へ封筒を手渡すと、それを受け取った近藤は名前を中へ案内しようと名前の背へ手を添えた。
「にしても名前ちゃん大きくなったなぁ!」
「身長伸びましたからね!」
「ん?まぁ、それもそうか!」
言葉を交わす二人を静かに見つめている別の二人。
「⋯おい総悟、なんで名前がここに来てんだ」
「ここで働くとか言ってやしたよ」
「は?」
「しかもあの感じじゃあ近藤さんは知ってますぜ」
「は?」
数分前の自分と同じ反応をする土方を横目に笑顔の姉を見つめる総悟。随分と楽しそうに笑顔を咲かせる名前を見つめながら、なんで今ごく当たり前に二人が会話してるのかが大きな謎で仕方がなかった総悟は「あの」と近藤へ声をかけた。
「近藤さんは知ってたんですかぃ?コイツがここに来るって」
「ん?あぁ、名前ちゃんに声をかけたのは俺だからな!」
その一言を聞きカチリと動きを止めた総悟と土方を見ながら「名前ちゃんはもう少ししたらここで働くことになった!」と笑顔を見せる近藤。
「⋯⋯名前、悪い事ァ言わねぇ今すぐ帰れ」
「珍しく意見が合いやすね土方さん、俺も同意見でさァ」
総悟と同じく名前の欠点を理解していた土方は優しさのつもりで名前へ言葉をかけるも「嫌です!」と言葉を返す名前。
「別にいいじゃないか!なに、名前ちゃんが外に出たりする事は無いし、最初は難しい仕事も無いだろうしな!」
何かわからないことがあれば俺かトシ、総悟に聞けば大抵の事は大丈夫だ!と名前へ笑顔を向ける近藤を見ながら、額に手を置き大きなため息をつく土方と黙って姉である名前を見つめる総悟。
名前はその光景を見ながら小さく笑い「よろしくお願いします!」と明るい笑顔を浮かべ頭を下げた。
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