兄は志村新八
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志村家の妹
「ご、ごめんなさい!」
地面に落ちてぐしゃりと潰れたトマト、浅く亀裂が入り実が裂けてしまっているリンゴ、コロコロと転がる黄色やオレンジの柑橘類に数箱の酢昆布。
それらの野菜や果物を拾うことなく頭を地面に付ける勢いで深く深く頭を下げた女性、いや少女は目の前に佇む二人の男へ謝罪をしていた。
「いててててて、こりゃぁ腕折れちまったなぁ」
「どうしてくれるんだよ?ああ?」
「ごめんなさい!」
ひたすら謝る少女に対し随分と横柄な態度の男二人。
ほんの数分前。買い物を終えて袋を抱えながら家に帰ろうとしていた名前は向こうから横並びで堂々と歩いてくる男二人にぶつかった。
けして名前が悪かった訳ではなく、どこからどうみても男達が彼女に故意にぶつかっていた。
「本当、ごめんなさい!」
それでも名前は自分の荷物を広いもせずただ相手への謝罪を口にしている一方で、軽く腕と肩がぶつかっただけの男は随分と痛そうに腕を触りながらもう一人の男と共に声を荒らげていた。
「謝って済む事かあ?」
「やっぱこういうのは誠意見せてもらわねえと」
頭を下げたままの名前へ向かって言葉を続ける男達は行き交う人々の視線を集めていた。
そんな光景を周りの人に紛れて眺めていた人が二人。
「おい新八アレおめーの妹じゃねーの?」
「そうですよ名前ですよ僕の妹ですよ」
銀時は新八の後ろからそう声をかけるも、新八は当たり前だというように言葉を返すだけで助けようといった素振りは一切見せない。
「おいおい今こそ兄チャンの出番だろ」
「いや銀さんあれはなんと言うか、あの人達⋯」
新八が銀時へと顔を向けて何かを言いかけた時、情けない男の悲鳴が響き渡り銀時と新八は互いに声のした方へと視線を向けた。
「⋯ですから私謝りましたよね、三回も。三回もですよ?明らかにこちらが被害者なのにですよ?」
銀時と新八の目線の先、そこでは今にも泣きそうに情けない声をあげる男と、その手首を掴みあらぬ方向へと押し曲げている名前、それを見て口をあんぐりと開けているもう一人の男の姿があった。
「腕折れたって言ってましたけど折れてないですし、慰謝料は必要なさそうで良かったです」
「おまっ、お前!!」
口を開けていた男が名前に対し腕を伸ばしたが、その腕をさらりと避けた名前は男の勢いを利用していとも簡単そうに男の体を地面へ叩きつけていた。
「謝って済む問題、ですよね」
にこりと笑顔を向ける名前。その表情だけを見ればとても可愛らしく、新八と名前の姉である妙に似た雰囲気が漂っていた。
男二人はその笑顔を見て何かを察したのか逃げるようにその場から立ち去っていき、それを確認した名前は地面へ落ちていた果物などを拾い始めた。
「⋯あの人達、引っ掛ける相手間違えてますよ⋯⋯」
「お前んとこの女って全員ああなの?」
二人は怖いような残念なような、そういうものを見つめる目で離れたところから名前を見つめていた。
すると落としたものを拾い終えた名前は何も無かったかのように家へ帰ろうと歩き出し、丁度そこで自分を見つめていた二人と目が合った。
「新八と銀さん!」
「お兄ちゃんでしょうがあああ!」
「よお妹〜」
新八が気付いた頃には既にお兄ちゃんと呼ばれなくなっていた名前。
昔はどこへ行くにも周りをちょろちょろと可愛らしく付いてきていた名前も、いつしか空手を身につけ、いつしか新八と名前を呼ぶようになった。
新八としてはもちろん是が非にでもお兄ちゃんと呼んで欲しいと思っているが、名前本人にその意思は欠片もないらしい。
「銀さんこれ食べる?割れちゃった」
「イヤこれさっき落ちてたやつだよね?お前さ、銀さんならなんでも食べるとか思ってんの?」
「だって新八が、銀さんはなんでも屋だって言うし」
「確かにそうだけどちげーよ」
新八の一言など耳に届いていない二人はガヤガヤと会話を弾ませ、聞いてなどいないと気付いた新八は小さなため息をついた。
「ところでそれどうしたの?今日は僕がご飯作るはずじゃ⋯」
そういえばと名前へ話しかけた新八。
妙の料理は常人の域を超えているため、普段は新八と名前とで料理を担当していた。普段名前は自分の担当日しか買い物していなかったと記憶していた新八は不思議そうに尋ねた。
「今日神楽と一緒にそよちゃんとこ行くって言ってなかったっけ?」
「いや聞いてないよ!」
「じゃあ今言った!だから良いよね?」
「いや僕に言わ」
「ありがとお兄ちゃん!」
新八の事をお兄ちゃんと呼ばない名前だったが、こういう時、例えば何かをお願いする時などは進んでお兄ちゃんと呼んでいた名前は新八の事を理解していた。良い意味でも悪い意味でも。
「⋯僕達と一緒に来る?神楽ちゃんと行くんでしょ?」
「うん!どっちみち神楽迎えに行くつもりだったから!」
名前の笑顔を見る度に仕方がないなと眉を下げつつ名前が抱えていた荷物を自然と受け取った新八は「ほら行くよ」と空いた手を名前へ差し出すも、当の本人は新八の手など気にもせず銀時へ歩み寄ると今朝の結野アナについての話題で盛り上がっていた。
22.10.21
「ご、ごめんなさい!」
地面に落ちてぐしゃりと潰れたトマト、浅く亀裂が入り実が裂けてしまっているリンゴ、コロコロと転がる黄色やオレンジの柑橘類に数箱の酢昆布。
それらの野菜や果物を拾うことなく頭を地面に付ける勢いで深く深く頭を下げた女性、いや少女は目の前に佇む二人の男へ謝罪をしていた。
「いててててて、こりゃぁ腕折れちまったなぁ」
「どうしてくれるんだよ?ああ?」
「ごめんなさい!」
ひたすら謝る少女に対し随分と横柄な態度の男二人。
ほんの数分前。買い物を終えて袋を抱えながら家に帰ろうとしていた名前は向こうから横並びで堂々と歩いてくる男二人にぶつかった。
けして名前が悪かった訳ではなく、どこからどうみても男達が彼女に故意にぶつかっていた。
「本当、ごめんなさい!」
それでも名前は自分の荷物を広いもせずただ相手への謝罪を口にしている一方で、軽く腕と肩がぶつかっただけの男は随分と痛そうに腕を触りながらもう一人の男と共に声を荒らげていた。
「謝って済む事かあ?」
「やっぱこういうのは誠意見せてもらわねえと」
頭を下げたままの名前へ向かって言葉を続ける男達は行き交う人々の視線を集めていた。
そんな光景を周りの人に紛れて眺めていた人が二人。
「おい新八アレおめーの妹じゃねーの?」
「そうですよ名前ですよ僕の妹ですよ」
銀時は新八の後ろからそう声をかけるも、新八は当たり前だというように言葉を返すだけで助けようといった素振りは一切見せない。
「おいおい今こそ兄チャンの出番だろ」
「いや銀さんあれはなんと言うか、あの人達⋯」
新八が銀時へと顔を向けて何かを言いかけた時、情けない男の悲鳴が響き渡り銀時と新八は互いに声のした方へと視線を向けた。
「⋯ですから私謝りましたよね、三回も。三回もですよ?明らかにこちらが被害者なのにですよ?」
銀時と新八の目線の先、そこでは今にも泣きそうに情けない声をあげる男と、その手首を掴みあらぬ方向へと押し曲げている名前、それを見て口をあんぐりと開けているもう一人の男の姿があった。
「腕折れたって言ってましたけど折れてないですし、慰謝料は必要なさそうで良かったです」
「おまっ、お前!!」
口を開けていた男が名前に対し腕を伸ばしたが、その腕をさらりと避けた名前は男の勢いを利用していとも簡単そうに男の体を地面へ叩きつけていた。
「謝って済む問題、ですよね」
にこりと笑顔を向ける名前。その表情だけを見ればとても可愛らしく、新八と名前の姉である妙に似た雰囲気が漂っていた。
男二人はその笑顔を見て何かを察したのか逃げるようにその場から立ち去っていき、それを確認した名前は地面へ落ちていた果物などを拾い始めた。
「⋯あの人達、引っ掛ける相手間違えてますよ⋯⋯」
「お前んとこの女って全員ああなの?」
二人は怖いような残念なような、そういうものを見つめる目で離れたところから名前を見つめていた。
すると落としたものを拾い終えた名前は何も無かったかのように家へ帰ろうと歩き出し、丁度そこで自分を見つめていた二人と目が合った。
「新八と銀さん!」
「お兄ちゃんでしょうがあああ!」
「よお妹〜」
新八が気付いた頃には既にお兄ちゃんと呼ばれなくなっていた名前。
昔はどこへ行くにも周りをちょろちょろと可愛らしく付いてきていた名前も、いつしか空手を身につけ、いつしか新八と名前を呼ぶようになった。
新八としてはもちろん是が非にでもお兄ちゃんと呼んで欲しいと思っているが、名前本人にその意思は欠片もないらしい。
「銀さんこれ食べる?割れちゃった」
「イヤこれさっき落ちてたやつだよね?お前さ、銀さんならなんでも食べるとか思ってんの?」
「だって新八が、銀さんはなんでも屋だって言うし」
「確かにそうだけどちげーよ」
新八の一言など耳に届いていない二人はガヤガヤと会話を弾ませ、聞いてなどいないと気付いた新八は小さなため息をついた。
「ところでそれどうしたの?今日は僕がご飯作るはずじゃ⋯」
そういえばと名前へ話しかけた新八。
妙の料理は常人の域を超えているため、普段は新八と名前とで料理を担当していた。普段名前は自分の担当日しか買い物していなかったと記憶していた新八は不思議そうに尋ねた。
「今日神楽と一緒にそよちゃんとこ行くって言ってなかったっけ?」
「いや聞いてないよ!」
「じゃあ今言った!だから良いよね?」
「いや僕に言わ」
「ありがとお兄ちゃん!」
新八の事をお兄ちゃんと呼ばない名前だったが、こういう時、例えば何かをお願いする時などは進んでお兄ちゃんと呼んでいた名前は新八の事を理解していた。良い意味でも悪い意味でも。
「⋯僕達と一緒に来る?神楽ちゃんと行くんでしょ?」
「うん!どっちみち神楽迎えに行くつもりだったから!」
名前の笑顔を見る度に仕方がないなと眉を下げつつ名前が抱えていた荷物を自然と受け取った新八は「ほら行くよ」と空いた手を名前へ差し出すも、当の本人は新八の手など気にもせず銀時へ歩み寄ると今朝の結野アナについての話題で盛り上がっていた。
22.10.21
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