頼れる存在
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もう一本の続き。休みの日たまたま事件に遭遇。
映画面白かった〜!
名前は声に出さず満足のいく見応えを感じながら映画館を後にした。
刑事二人がコンビを組み難事件を解決していく映画。
悪は許されないという絶対的スタンスの本作品が大好きな名前は、この日珍しく休みを取り映画館へ足を運んでいた。
丸一日休みを取った名前は映画を見てからの遅めのランチはこの店で、と予め手帳に書き込んでいたパンケーキの美味しい喫茶店へ向かいながら見慣れた道を歩いていた。
平日の昼過ぎでも賑わう繁華街。
普段あまり買い物へ行くことがない名前にとって、どの店へも一度は目を配らせめぼしいものが無いかをのんびりと眺めがら縛られることの無い時間を有意義に過ごしていた。
「泥棒ですッ誰か!!」
そんな時、少し離れたところから聞こえた女性の声に振り向いた名前が目にしたのは、転んだのか地面に手を付きながら声を上げる女性と、名前の方へ向かって走ってくる女性物のカバンを持った帽子にサングラスと如何にも怪しげな男。
すぐに腰へ手をあてた名前だったが今は完全な休日、刀を携帯していないとすぐに気付き、傍へ置いてあった箒を咄嗟に手に取った名前。
もうすぐそこまで来ている男。穂先側の柄を握り柄の先端部分を地面と水平に真っ直ぐと男へ向けた名前は、まるでビリヤードでもするかのように、焦点をずらさぬため左手の指の背に柄を乗せ支えにしながら柄を持つ右手を僅かに引いた。
「どけ女ァ!!!」
声を荒らげ間近に迫る男は止まる気配もなく、そのまま名前へ向かいながらカバンを持つ手を振り上げた。
その瞬間、静かに息を吸い焦点を定めた名前はふっと短く息を吐くと同時に男の鳩尾目掛けて柄を突き出した。
男が腕を振り下ろすよりもうんと早く体を突いた名前の一撃により男は咳き込みながら前のめりに倒れ、振り上げたカバンは名前の僅かに後方へと放り出された。
「泥棒は犯罪ですよ!」
女性物のカバンを拾い土埃を綺麗に払いながら咳き込む男性へ叱責の言葉を投げた名前。少しして着物の膝を汚しながら必死に走ってくる女性が見え、近くまで歩み寄った名前はその女性が先程叫んだ女性だとわかると笑顔でカバンを手渡した。
「あっありがとうございます!」
「いえいえ!お怪我ありませんか?」
一応中身があるか確認してください、と女性に伝えて男を捕らえなければと振り返ると、先程までそこで咳き込んでいた男は居らず代わりに行き交う野次馬の人々が名前へ声をかけていた。
「嬢ちゃんすげーな!」
「箒一本でやっつけちまうなんてよ!」
「いやっあの⋯ここにいた人⋯⋯」
名前は咄嗟の判断でやるべき事を、自分が出来る最善の事をしたと思っていた。
それでも自分を称える人達に多少困惑しながらも先程の男はどこへ消えたのか気になったが、誰かが見ていれば逃げられていないだろう。
うまく隙を見て逃げた?追おうにも行き先に見当もつかない。
名前は再度女性へ向き直し怪我の有無や失くしたものがないかの確認を取り、箒を元の場所へ戻すと携帯を取り出し屯所へ電話をかけた。
「⋯あっお疲れ様です苗字です!今ひったくりがあって⋯はいっ⋯⋯場所は⋯」
大まかな犯人の見た目、場所、女性の現状を伝えた名前は近くで見回りをしている隊員が来てくれると聞き、安堵から小さく息を吐いた。
隊員が来るまで少しでもなにか手がかりがあれば、と繁華街の細道など人目につかなそうなところを重点的に見てまわっていた名前。
「⋯⋯あれって⋯」
何本目かの細道を見ていた名前が見つけたのは道の奥に捨てられたように落ちている帽子。先程の男が被っていた帽子によく似ていた。
この道を通ったなら逃げ場はある程度絞られるはず、そう思い帽子の元へ駆け寄り地面から拾い上げた名前は突如何か硬いもので勢いよく後頭部を殴られた。
「あ゙っ」
そのまま体勢を崩し前のめりに倒れた名前はガンガンと痛む頭を覆うと、ぬめりとした生暖かいものが手に触れた。
「⋯お前⋯さっきはやってくれたなァ⋯⋯!!」
名前は目線を声のした方へ向けると、ぐらりと揺れる視界の中で角材のようなものを手に持ちながら自身を見下ろしている男の姿が薄らと目に入った。
「⋯⋯ぁ、ッ⋯」
相当強く頭を殴りられたのか上手く言葉が出せずにいる名前へじりじりと近付く男が手に持つ角材は先の方が僅かに赤黒く汚れている。
立つどころか声すらまともに出すことの出来ない名前を見てにやりと口元を歪ませた男は、先程自分がされたように名前の胸を目掛けて思い切り蹴り上げた。
「女のくせにッ!調子乗りやがって⋯!」
抵抗する素振りすら見せず酷くむせる名前に対し、身勝手な罵声を浴びせながら蹴りを入れる男。
げぽっと口から血液混じりの唾液を吐きながら朦朧とする意識の中、途切れ途切れに消え入りそうな声を出した名前の耳に届いたのは毎日のように聞き慣れた声だった。
「もっと腹から声出さねーと聞こえねぇよ」
「あ?!」
男の後ろに僅かに見えた人影。霞む視界の中では鮮明に映らずとも、名前はその聞き慣れた声から直ぐに沖田だとわかっていた。
「おめーか?ひったくり犯ってぇのは」
近くを巡回していた土方と沖田は連絡を受けすぐに現場へと向かっていた。いざ着いてみれば連絡をした名前の姿は見えず、近くにいた女性から名前が近くを見回っていると聞いた沖田は名前を探しに出たところ、物音が聞こえた細道を奥へと進みここへ辿り着いていた。
「ガキが調子乗ってんじゃねえよ!」
沖田の方へ振り向き声を荒らげた男の持つ角材が赤黒く染まっているのを見た沖田は、躊躇なく刀を抜くと理解が追いつく前に男へと斬りかかった。
「俺の部下に手ェ出してんじゃねえよ、クソジジイ」
沖田の声を聞くより前に事切れていた男は地面に倒れると自ら流れ出る血液で地面を染めあげ、カランと乾いた音を立て転がった角材が男の血液を吸い上げていた。
「名前!おい名前!」
沖田が名前へ近寄る頃には既に名前の意識は途切れていて、沖田の呼び掛けに返事をすることは無かった。
普段より明らかに顔色が悪く頭や口から血を流している名前を抱えた沖田は立ち上がり元いた場所まで戻ると、土方へ声をかけ急いで病院へと向かった。
次の日、病室で目を覚ました名前が目にしたのは、机の上に置かれたテイクアウト用の箱に入れられたパンケーキだった。
22.10.18
リクエスト〝沖田短編もう一本の続き〟
何件か同様のリクエストを頂きましたので、一つにまとめさせて頂きました。リクエストありがとうございました!
映画面白かった〜!
名前は声に出さず満足のいく見応えを感じながら映画館を後にした。
刑事二人がコンビを組み難事件を解決していく映画。
悪は許されないという絶対的スタンスの本作品が大好きな名前は、この日珍しく休みを取り映画館へ足を運んでいた。
丸一日休みを取った名前は映画を見てからの遅めのランチはこの店で、と予め手帳に書き込んでいたパンケーキの美味しい喫茶店へ向かいながら見慣れた道を歩いていた。
平日の昼過ぎでも賑わう繁華街。
普段あまり買い物へ行くことがない名前にとって、どの店へも一度は目を配らせめぼしいものが無いかをのんびりと眺めがら縛られることの無い時間を有意義に過ごしていた。
「泥棒ですッ誰か!!」
そんな時、少し離れたところから聞こえた女性の声に振り向いた名前が目にしたのは、転んだのか地面に手を付きながら声を上げる女性と、名前の方へ向かって走ってくる女性物のカバンを持った帽子にサングラスと如何にも怪しげな男。
すぐに腰へ手をあてた名前だったが今は完全な休日、刀を携帯していないとすぐに気付き、傍へ置いてあった箒を咄嗟に手に取った名前。
もうすぐそこまで来ている男。穂先側の柄を握り柄の先端部分を地面と水平に真っ直ぐと男へ向けた名前は、まるでビリヤードでもするかのように、焦点をずらさぬため左手の指の背に柄を乗せ支えにしながら柄を持つ右手を僅かに引いた。
「どけ女ァ!!!」
声を荒らげ間近に迫る男は止まる気配もなく、そのまま名前へ向かいながらカバンを持つ手を振り上げた。
その瞬間、静かに息を吸い焦点を定めた名前はふっと短く息を吐くと同時に男の鳩尾目掛けて柄を突き出した。
男が腕を振り下ろすよりもうんと早く体を突いた名前の一撃により男は咳き込みながら前のめりに倒れ、振り上げたカバンは名前の僅かに後方へと放り出された。
「泥棒は犯罪ですよ!」
女性物のカバンを拾い土埃を綺麗に払いながら咳き込む男性へ叱責の言葉を投げた名前。少しして着物の膝を汚しながら必死に走ってくる女性が見え、近くまで歩み寄った名前はその女性が先程叫んだ女性だとわかると笑顔でカバンを手渡した。
「あっありがとうございます!」
「いえいえ!お怪我ありませんか?」
一応中身があるか確認してください、と女性に伝えて男を捕らえなければと振り返ると、先程までそこで咳き込んでいた男は居らず代わりに行き交う野次馬の人々が名前へ声をかけていた。
「嬢ちゃんすげーな!」
「箒一本でやっつけちまうなんてよ!」
「いやっあの⋯ここにいた人⋯⋯」
名前は咄嗟の判断でやるべき事を、自分が出来る最善の事をしたと思っていた。
それでも自分を称える人達に多少困惑しながらも先程の男はどこへ消えたのか気になったが、誰かが見ていれば逃げられていないだろう。
うまく隙を見て逃げた?追おうにも行き先に見当もつかない。
名前は再度女性へ向き直し怪我の有無や失くしたものがないかの確認を取り、箒を元の場所へ戻すと携帯を取り出し屯所へ電話をかけた。
「⋯あっお疲れ様です苗字です!今ひったくりがあって⋯はいっ⋯⋯場所は⋯」
大まかな犯人の見た目、場所、女性の現状を伝えた名前は近くで見回りをしている隊員が来てくれると聞き、安堵から小さく息を吐いた。
隊員が来るまで少しでもなにか手がかりがあれば、と繁華街の細道など人目につかなそうなところを重点的に見てまわっていた名前。
「⋯⋯あれって⋯」
何本目かの細道を見ていた名前が見つけたのは道の奥に捨てられたように落ちている帽子。先程の男が被っていた帽子によく似ていた。
この道を通ったなら逃げ場はある程度絞られるはず、そう思い帽子の元へ駆け寄り地面から拾い上げた名前は突如何か硬いもので勢いよく後頭部を殴られた。
「あ゙っ」
そのまま体勢を崩し前のめりに倒れた名前はガンガンと痛む頭を覆うと、ぬめりとした生暖かいものが手に触れた。
「⋯お前⋯さっきはやってくれたなァ⋯⋯!!」
名前は目線を声のした方へ向けると、ぐらりと揺れる視界の中で角材のようなものを手に持ちながら自身を見下ろしている男の姿が薄らと目に入った。
「⋯⋯ぁ、ッ⋯」
相当強く頭を殴りられたのか上手く言葉が出せずにいる名前へじりじりと近付く男が手に持つ角材は先の方が僅かに赤黒く汚れている。
立つどころか声すらまともに出すことの出来ない名前を見てにやりと口元を歪ませた男は、先程自分がされたように名前の胸を目掛けて思い切り蹴り上げた。
「女のくせにッ!調子乗りやがって⋯!」
抵抗する素振りすら見せず酷くむせる名前に対し、身勝手な罵声を浴びせながら蹴りを入れる男。
げぽっと口から血液混じりの唾液を吐きながら朦朧とする意識の中、途切れ途切れに消え入りそうな声を出した名前の耳に届いたのは毎日のように聞き慣れた声だった。
「もっと腹から声出さねーと聞こえねぇよ」
「あ?!」
男の後ろに僅かに見えた人影。霞む視界の中では鮮明に映らずとも、名前はその聞き慣れた声から直ぐに沖田だとわかっていた。
「おめーか?ひったくり犯ってぇのは」
近くを巡回していた土方と沖田は連絡を受けすぐに現場へと向かっていた。いざ着いてみれば連絡をした名前の姿は見えず、近くにいた女性から名前が近くを見回っていると聞いた沖田は名前を探しに出たところ、物音が聞こえた細道を奥へと進みここへ辿り着いていた。
「ガキが調子乗ってんじゃねえよ!」
沖田の方へ振り向き声を荒らげた男の持つ角材が赤黒く染まっているのを見た沖田は、躊躇なく刀を抜くと理解が追いつく前に男へと斬りかかった。
「俺の部下に手ェ出してんじゃねえよ、クソジジイ」
沖田の声を聞くより前に事切れていた男は地面に倒れると自ら流れ出る血液で地面を染めあげ、カランと乾いた音を立て転がった角材が男の血液を吸い上げていた。
「名前!おい名前!」
沖田が名前へ近寄る頃には既に名前の意識は途切れていて、沖田の呼び掛けに返事をすることは無かった。
普段より明らかに顔色が悪く頭や口から血を流している名前を抱えた沖田は立ち上がり元いた場所まで戻ると、土方へ声をかけ急いで病院へと向かった。
次の日、病室で目を覚ました名前が目にしたのは、机の上に置かれたテイクアウト用の箱に入れられたパンケーキだった。
22.10.18
リクエスト〝沖田短編もう一本の続き〟
何件か同様のリクエストを頂きましたので、一つにまとめさせて頂きました。リクエストありがとうございました!
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